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2008年3月18日 (火)

幻の幸せ---三軒茶屋ヒサモトのいちじくのタルト

東京、世田谷の三軒茶屋にヒサモトというおいしいケーキ屋さんがありました。
西友の並びです。

卵、牛乳・・・すべての素材にこだわっているのでしょう。
奇をてらわないシンプルなケーキでしたが、
どれもどれもおいしい、私の大好きなケーキ屋でした。

ヒサモトというのはおそらくご主人の苗字。
そのご主人がケーキをつくり、奥様を中心とする女性スタッフが販売されていました。
その奥様もとても素敵なマダムだったのです。
雰囲気は映画『魔女の宅急便』でキキに温かく接するに老婦人(加藤治子)。

ケーキを買う時って、
何かうれしいことがあった時、
もしくは、ちょっとへこむことがあって元気づけに、
という場合が多くありませんか。

私が何も言わなくても、
マダムは私の雰囲気でいろんなことを察していらっしゃったのでしょうか。
いいことがあった時はまるで「よかったわね」って一緒に喜んでくださるような、
そしてへこんで買いにきた時は、元気でますようにと温かく包んでくださるような雰囲気がありました。

もちろん、私が「今日は自分へのごほうびで」なんて言葉にすると、
「がんばられたのね。おめでとう」というように一緒によろこんでくださいました。

そんなところも、魔女の宅急便の老婦人に似ているな、
私も60代になったらこんなマダムになりたい!
と理想にしている女性でした。

ヒサモトのケーキで一番好きなのは生のフルーツのタルト。
特に、いちじくのタルト。ラズベリーのタルト。ブルーベリーのタルト。
バターのこくがあるタルト生地が香ばしくてとにかくおいしいです。
フォークを入れるとさく、ほろっと割れる少し厚めのタルト生地。
その上にのっているのがカスタードクリーム。
カスタードクリームも、素材の卵と牛乳が絶対違うというのがわかります。
なめらかでほどよいゆるやかさ。そしてとにかくおいしい。
そして、その上にフルーツ。
ラズベリーやブルーベリーのタルトって、
生のベリーが盛られているタルトもあれば、
煮詰めたものを乗せているものや、
生を盛っているけれどその上を煮詰めたジャムで覆ってしまうという手法もありますよね。
私は生オンリー派、余計な甘さは好きではないのです。

ヒサモトのタルトは、生オンリー派。
生のラズベリーやブルーベリーがカスタードクリームの上にぎっしり盛られ、
その上は薄く透明なゼリーのようなもの(これも極力甘味はないです)が覆うだけ。

タルト生地+カスタードクリーム+フルーツ。
この3つの味のシンプルさ。
ごまかしのきかない素材のおいしさが引き出されて逸品でした。
そして夏場のイチジクのタルトも、タルト生地+カスタードクリーム+いちじくが絶妙。

生フルーツ系ではないマロンタルトもおいしくて人気でした。
こちらはカスタードクリームはなく、完全な焼き菓子系タルト。
ごろんごろんとしたマロンの甘さとタルト生地の香ばしさが絶妙。
・・・・・・・・・・
デパートなどへの出店はありません。
地元の人みんなに愛され、遠くからも評判をきいて訪ねてくる人が絶えないヒサモトでしたが、
ある時ご主人が病気で亡くなられ、息子さんが跡を継がれました。
そして、マダムに面立ちがとてもよく似ていらっしゃる息子さんが、
先代と変わらないおいしいケーキを提供しつづけて、
未亡人となられたマダムもご主人を亡くされた哀しみを秘めて、
変わらず穏やかな温かさでお店に立ち続けていらっしゃいました。

けれど、ある時、ヒサモトは閉店しました。
三軒茶屋の商店街の女性(私が姉のように慕っている)から、
パティシエとして後を継いだ息子さんも30代の若さで病に倒れ、
闘病生活となってしまい、店を引き払ったらしいということを教えていただきました。

残念でなりません。
あんな素敵な家族がなぜそんなつらい思いを・・・と。

息子さんがその後どうなられたのか、
マダムは今どうしていらっしゃるのか私には消息がわかりません。
メインブログの「今日も星日和」で以前、
カリスマコンビニ店員のことを書きました。
何も会話をしなくても温かさは伝わることを教えられたのですが、
ヒサモトの女主人も接客で温かさが大切であることを身を持って教えてくださった方でした。

ヒサモトのあのタルトが恋しいです。
もし、ヒサモトで修業をしていた等、
ヒサモト系のタルトを創っているケーキ屋さんをご存知の方がいらっしゃったら、
ぜひぜひ教えてください!

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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