ガガーリン20 モスクワへ14日
ガガーリンは4月13日、着陸地点でプラウダやイズベスチヤらの記者のインタビューに答えました。
(ガガーリン14合同インタビュー参照)。
明けて14日はガガーリンがモスクワでフルシチョフ首相と初めて会い、
赤の広場でソビエト連邦の人々に向かって挨拶をする日。
ガガーリンはモスクワへIL18型機で向かいました。
イズベスチヤのオストロウーモフ記者はこの機に同乗し、
その中でガガーリンから聞き出したことを15日の紙面で書いています。
これによると、ガガーリンは記者に対して、
飛行機の窓からの光景を示しながら、再び宇宙からの眺めについて語っています。
「ほら、今と同じように、地平線に淡い薄青色の帯があったんだ。
その色は青色になってゆき、さらに濃い青色になってゆく。
けれど、宇宙では、すべてが、もっと鮮やかでコントラストがはっきりしていた。
そしてこの色の連なりは濃い黒によっておわるんだ。
(На горизонте бледно-голубая полоска, так же переходит она в синий,
в густо-синиий цвет. Но там все это ярче,
контрастнее, и заканчивается эта гамма красок густо-черными цветом.)」
地球の地平線の上に見える美しい色合いを交信記録、インタビューで語ってきましたが、
それぞれ色味の表現が違っていて、今回はガルボイ、シーニーが使われています。
微妙に表現が変わるから、より立体的に色のイメージをとらえることができる気がします。
さて、このあとガガーリンは星に関して新たなことを語っています。
「飛行士たちのように僕も星座のことはよく知っている。
けれど、見分けることはできなかった。あまりにも早く空を通り過ぎていくから。
私の速さといったら、時速2万8000キロメートルだ。
その上、夜の時間を体験したのは短かった。
私が地球の闇の面を飛行していたのは40分ぐらいだった」
この他に興味深いのが、記者が「自分自身の持ち物で宇宙に持っていったものはありますか?」と尋ねた時の記述です。
「ほら、この時計だ(Вот часы.)」とガガーリンは腕を挙げた。
〔ボストーク ガガーリン〕で検索すると、
時計の情報がたくさんヒットしたのはこのことだったのですね。
ガガーリンが宇宙で身につけていた時計についてはあらためて別の機会に触れる予定です。
さて、14日12時37分、ガガーリンを乗せた飛行機は7機の戦闘機に護衛されてモスクワのブヌコボ空港に着陸します。
その様子をイズベスチヤ(4/15)と
『ソ連人間宇宙船の成功』-祖国は英雄を祝う-から引用。
ガガーリン少佐が足ばやにタラップをおりてくる。
「ウラー(私メモ:バンザイの掛け声)」の歓呼と拍手のあらしがかれを迎える。
赤いじゅうたんの上を100歩ばかりすすんで、
ガガーリン少佐はニキータ・セルゲービッチ・フルシチョフの前に立つ。
かれは、挙手の礼をして、報告する。
さて、このときのガガーリンの言葉がイズベスチヤにも掲載されていますが、
宇宙飛行が見事に成功しましたという簡単な挨拶で特筆すべきことはありません。
この後、フルシチョフ首相とガガーリンとその妻は、
空港からモスクワの赤の広場まで、大勢の熱狂的な市民の歓迎を受けながら、
赤い薔薇で飾られた空色(голубой)のオープンカーでパレードをします。
赤の広場に到着すると、
設けられた特別席でガガーリンは集まっている人々に向かって挨拶
(『ソ連人間宇宙船の成功』の10)をします。
ですが、この挨拶は、フルシチョフへの敬意や祖国の同志への感謝の言葉ばかりで、
私が目当てにしているようなものはありません。
このあとのフルシチョフの長い演説(『ソ連人間宇宙船の成功』の11)は
政治家らしい鼓舞する力のみなぎった演説。
記事では、演説の合間に(さかんな拍手)(さかんな拍手、「ウラー」のさけび)
(ながい拍手)(さかんな、長い拍手)という言葉がもりだくさん記載されています。
赤の広場での人々の熱狂ぶりが伝わってきて面白いです。
フルシチョフの演説の中でちょっと詩的だなと思った表現はこれです。
宇宙船ボストークの飛行は、いわば宇宙へのソビエトの最初のつばめである。
Полет космического корабля 《Восток》--- это так сказать, первая советская ласточка в космос.
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