ガガーリン21 15日の演説
1961年4月15日、モスクワの「学者会館」でガガーリンは大々的な記者会見をおこないます。
ソ連科学アカデミーとソ連邦外務省共催によるこの記者会見には、
ソ連国内だけでなく海外の新聞社や科学者も集まったようです。
ここでのガガーリンの演説、記者との一問一答、同席した科学者の演説などは
イズベスチヤ、プラウダ両紙とも4/16に掲載しています。
まず、ガガーリンの演説から抜粋してご紹介します。
【公爵の家系に関して】
印象的なのが、ガガーリンが演説の開口一番自分の家系について語るところです。
以下、『ソ連人間宇宙船』(18)から引用。
「私の経歴に興味をよせている人がたくさんおります。
新聞で読んだところでは、
アメリカ合衆国にはガガーリン公爵家の遠い親類だといういいかげんな人たちがいて、
私のことをかれらの子孫だと言っているそうです。
私は、かれらをがっかりさせなければなりません。
私は普通のソビエト人です。(中略)
私の家系には公爵などはいません。
両親は、革命前には貧農でした。もう一代まえの先祖も---、おじいさんやおばあさんも、貧農でした。
私の家系に公爵なんかいたことはありません。(拍手)
こういうわけで私はアメリカにいる自称の親戚たちをがっかりさせないわけにはいきません(笑声、拍手)」
ガガーリンに関する文献を読んでいくとその人柄について、
率直で気さく、ユーモアでたくみに機転が利くというコメントをよく目にしますが、
この演説の出だしからも、彼の気取りのなさを察することができます。
【無重力状態に関して】
4/13の合同インタビューでは無重力状態は適応できたと語っていたガガーリンですが、
この演説の中では
「やはりはじめはいくらかいやな気持ちでした。
だが、じきにこの状態になれ、それに適応して、計画をひきつづき実施しました」
と、最初から違和感なく適応したわけではないことを語っています。
【宇宙からの眺めに関して】
交信記録、合同インタビューで語ってきたことと内容に変わりはありませんが、
一番正式な記者会見での言葉なので、抜粋&私の訳で紹介します。
175から300キロメートルの高さから、地球はとてもよく見えます。
地球の表面は、高々度からジェット機で飛行した時とほぼ同じように見えます。
大きな山々、大河、大森林、海岸線、島々をはっきりと識別できます。
地表を覆っている雲や地表の上の雲の影が大変よく見えます。
空の色は完全なる黒でした。この色を背景に、宇宙では星はより明るくはっきりと見えます。
Цвет неба совершенно черный.
Звезды на этом фоне выглядят несколько ярче и четче.
地球は独特の青い光の輪につつまれています。
Земля окружена характерным голубым ореолом.
(プラウダではこのくだりは
Земля имеет очень характерный очень красивый голубой ореол.)
青い光の輪は地平線を眺めた時に、それがとてもよくわかります。
やわらかな薄青色から、空はとてもなめらかに美しく、青(ガルボイ)色へ、濃い青(シーニー)へ、
すみれ色にそして最後には完全なる黒へと移りかわってゆきます。
Он хорошо просматривается, когда наблюдаешь горизонт.
От нежного светло- голубого цвета небо очень плавно и красиво переходит в голубой,
синий, фиолетовый, и наконец, в совершенно черный цвет.
地球の陰から出る時、太陽の光が地球の大気を通してさしこみます。
ここでは光の輪は別の色合いとなります。
地表に接した地平線の間際は明るいオレンジ色に見えました。
この色はしだいに虹の全色に移り変わっていきます。
青(ガルボイ)へ、濃い青(シーニー)へ、すみれ色へ、黒へと。
Здесь этот ореол принял немного другой цвет.
У самого горизонта земной поверхности можно было наблюдать ярко-оранжевый цвет,
который затем переходил всеми цветами радуги далее к голубому, синему, фиолетовому и черному.
地球の陰へ入ることはとても急速におこなわれました。一気に暗闇が襲い、何も見えなくなりました。宇宙船はこの時、大洋の上を通過していたようです。もし大都市の上を通過していたのなら、灯りが見えたことでしょう。星は大変よくみえました。地球の陰から出ることも大変急速に急激におこなわれました。
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美しい光景を伝えるガガーリンの言葉。
読むだけで頭の中にとても美しい色合いが広がって、しあわせな気持ちになれます。
こんなに多くのことをガガーリンが語って、
しかも、それが新聞にも発表されていたのに、
「地球は青かった」の一言でわかった気になっていたなんてつくづくもったいないことをしていたと思います。
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