ガガーリン24 翻訳ということ
前から気になっていたのです。
このブログの中で〔голубой/ガルボイ〕を〔青〕や〔薄青〕と訳してきたこと。
〔ориол/アリオール〕を〔光の輪〕と訳してきたこと。
感覚的にぴったりきていなかったのですが、
辞書で、ガルボイの他の訳の空色、スカイブルーは当たり前すぎて使いたくなかったし。
アリオールは、露英ではオーラ、ハレーションと出てくるけれど、
露和だと円光、後光、光の輪。円光は響きが気に入らないし、と。
そんな時、江川卓氏が夜明けの空のグラデーションを、
〔かぎろい〕という言葉を添えて訳していることを知ったのです(ガガーリン23)。
小さなことだけど感銘を受けました。翻訳ってこういうものなのかと。
映画や小説では意訳は当たり前。名訳が原作の世界を広げます。
ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンの映画『カサブランカ』
の名台詞「君の瞳に乾杯」も原文は「Here's looking at you, kid」。
けれど、科学的な文章などは原文に忠実じゃなければ、と思っていました。
でも、文字面をそのまま訳すだけが翻訳ではない、
露和辞典に載っている単語に訳すことが翻訳じゃないんですね。
『ダローガ・フ・コスモス』は日本で何社からも出版されていますが、
「やがて地球の大気をとおして太陽の光線がもれてきた。
地平線上が明るいオレンジ色に輝きはじめた。
空色、青色、すみれ色、黒と移りかわる七色の虹のかぎろい。
とても言葉にはつくせない色の諧調!
まるでニコライ・レーリヒの絵を見るようだ」
(江川卓訳『宇宙への道』/新潮社)
このくだりは江川卓氏の文章が一番感動しました。
〔かぎろい〕という言葉のおかげで。
素晴らしいのは、江川氏が原文を無視して、意訳してこの言葉を使ったというわけではなくて、
原文の意味を突き詰め、忠実を目指したからこそ〔かぎろい〕という言葉を持ってきたこと。
ガガーリンが言葉を尽くして語ろうとしたことを一番表現できる言葉はこの「かぎろい」以外にありえないのです。
露和辞典に出ている出ていない関わらず、
原文が表現していると思うことを自分が一番適切と思う日本語で表現していいんだ。
そんな風に感じました。25へ続く。
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