夜明け/MORNING SONG-ウォン・ウィンツァン&真砂秀朗
星が一つ、一つと消えてゆく。空が少しずつ蒼さを増してくる。あそこに星がまだあるのかな、それとも見えていると感じているのはもう瞳の中の残像にすぎないのかなあなんて眺めているうちに、最後の一つも空の青さに溶けて消える。
そんな夜明けのシチュエーションで楽しみたい音楽のイチオシといえば、
ウォン・ウィンツァンと真砂秀朗による「MORNING SONG」。
アルバム『Amazing Blue』に収められている楽曲です。
ネイティブアメリカンのズニ族のトラディショナルのようですが、ウォン氏の編曲によって、非常にやわらかくしっとりとした、そしてさわやかな楽曲になっています。
ウォン氏のピアノの音色の柔らかさ・透明さは世界一だと思うのですが、出だしはそのピアノから。
夜明けのそっと動きだした空気のようにウォン氏のピアノがポロロン、と奏でます。
そのゆったり感がすごくいいんです。
プラネタリウムのリラクゼーション番組「スターライトヒーリング」の夜明け~朝の場面で幾度となくこの「モーニングソング」を使わせていただきました。
星を仰ぎながら、膝に置いていた手も力が入らないくらいまどろんでいただいたあと、最後の曲で、我にかえって「きちんと椅子に座りなおさなきゃ」という気持ちになる曲を流してはモッタイナイ。〔ゆるんだまま。だけど少しずつ何かが目覚めていく〕〔余韻を残しながら日常に戻っていただく〕のに、この「モーニングソング」はぴったりなんです。
ウォン氏のピアノも真砂氏のネイティブアメリカンフルートもまったく尖ったところがありません。ウォン氏の奏でるメロディーは夜明けの動きだした風や、少しずつつぼみが開いていく花の目覚めのよう。
そこに真砂氏のネイティブ・アメリカン・フルートが加わります。インディアンフルートともいわれるこの笛は杉などの木でできた縦笛で、尺八にも似た音を発します。
太くてまろやかなふぁーとした音色です。そして、「ふー」と一息で吹かれた音が最後にひゅるって音が上がるんです。例えるならケーキ作りでデコレーション用の生クリームを絞る感覚に似ています。生クリームを絞る時、「ふーー」とクリームを出した最後に、ひゅるって切りますよね。あの感じ。ネイティブアメリカンフルートの「ふーーひゅるっ」がとても心地いいんです。長いブレスの「ふーーひゅるっ」を聴いてきると、いつしか、つられるように自分の呼吸も深いリズムになってゆきます。
そして息をトゥトゥトゥトゥと区切って出す笛の音は、鳥がさえずり渡る音みたい。
エコーが効いた笛の響きやピアノが空間に拡がって、ひろーい大地での夜明けの大気を感じさせます。
寝苦しくなってくる季節。朝、目が覚めたけれどなんとなくすっきりしない。という時は、ベッドの中でこの「MORNING SONG」を聴いてみてはいかがでしょうか。
軽く目を閉じたまま、朝日が大地を照らす前の夜明けの空。星の世界でもなく、太陽の世界でもなく、ただ、蒼が果てしなく拡がっている世界を思いうかべて。
朝の風や霧が身体を撫でてゆき、そのさわやかな大気を吸い込むイメージでゆっくり身体を伸ばし深呼吸もしてみましょう。
曲の終わりとともに、さわやかな朝に着地できるはず。
この曲の雰囲気を感じていただきたくて言葉を尽くしてみましたが、本当は「百文は一聴にしかず」ですよね。ただ、今、ネットでこの曲を試聴できるところはなさそうです。
でもなにかピンと来た方は、ぜひこのアルバムを。「ユメノクニ」をはじめどれも名曲ばかり。ピアノとネイティブアメリカンフルートという、組み合わせがこんなにいいものかと発見させられます。
ウォン・ウィンツァンさんのHP「SATOWA MUSIC」は こちら
『Amazing Blue』の詳細・試聴は こちら
真砂秀朗さんのHP「AWA MUSE」は こちら 『Amazing Blue』の詳細・試聴は こちら
星と楽しむ音楽INDEXはこちら
« プラネタリウムの夕暮れと夜明け | トップページ | 白夜とプラネタリウム »
「 星と楽しむ音楽」カテゴリの記事
- 幻の名曲の名前がわかりました。一風堂の「NEVER MIND」(2017.08.16)
- きらきら星 と なんて素敵な世界なんでしょう!!(その2)(2016.04.24)
- きらきら星 と なんて素敵な世界なんでしょう!!(その1)(2016.04.24)
- 春の雨や曇りの日に聴きたくなる音楽(2016.03.14)
- 可憐で力強い名曲 西村由紀江の「野ばら」(2016.02.07)
コメント