こせのりこ 水に沈む夕陽
5月27日のブログで取り上げたこせのりこさんについてもう少しご紹介します。
彼女もプラネタリウムの番組で多くの楽曲を提供してくださったアーティストの一人。
ピアニストでありコンポーザーです。
「空を飛ぶ夢」のような浮遊するような曲も魅力的。
軽やかな曲もけっしてメロディーがスカートのすそをフリフリひらひらさせて華美に踊るようなサロンミュージックにはならず、基本は骨太系です。
その音楽から一番感じられるのは「ノスタルジー」。
ファーストアルバム『とき』からすでに「流転」などの楽曲をはじめ、ずしりと心の深いところに響く独自の世界が広がっています。
アンセルム・キーファーというドイツのアーティストに夕暮れの海を描いたシリーズがあります。
水彩絵の具を大胆なくらいたっぷりと水で薄めて藍色や紫やオレンジのにじみで、夕暮れから宵にかけての海や空を描いた作品。
こせさんの音楽を聴くと、この絵のシリーズを思い出します。
そのピアノの調べは、人恋しくなったり懐かしい気持になったりする夕暮れの空気。
オレンジ色の夕陽や藍色の空や昼間の喧騒が交じり合って揺れる水面。いろんなものを溶かし込んで流れる深い河のよう・・・。
そんな時、こせさんご自身が18歳まで〔夕陽は水に沈むもの〕という環境で過ごされていたことを知りました。
そして、その後、住む場所が変わり、夕陽が水に沈まないことに驚いたというエピソードをうかがってびっくりしました。
夕陽といえば、西の空と家々の屋根を染めて沈むもの、という中で私は育ってきました。
夕陽が海や河や湖の水面をオレンジ色に染めて沈んでゆく風景は旅先などで感動する特別の風景だったのです。
私や多くの人にとって特別な風景〔水に沈む夕陽〕が、
こせさんの中であたりまえのように存在していたのですね。
あらためてお尋ねした時
「今でも、夕暮れの波がこってりと金色というかタール色というかそういう色になったときの海の美しさと恐ろしさと底知れない包容力が好き」
ということをうかがいました。
この環境とその美しさを感じ取る感受性がこせさんの音楽のみなもとになっているのではないでしょうか。
最新アルバム『ララバイ』の中の「ララバイ」もぜひ。
この曲は聴いただけで短調とか長調とか明暗がわかる曲ではありません。
音の色が見えるような見えないような。それが混沌としながらうっとりと溶け合っているような楽曲。
ブラジルのイヴァン・リンスの名曲「アイランド」がお好きな方は必聴です。
巨勢典子(こせのりこ)さんのオフィシャルサイトkosenoriのHPはこちら。
6月23日(金)にはインディアンフルートの真砂秀朗らをゲストに迎えたコンサートもあるようです。
ところで、おおげさですが、夕陽が西の町に沈むのか、水面に沈むのかは、
その人の根本にものすごく影響力あるはず。
日本では地形的に水に沈む夕陽が見られる人の方が希少なのでは。
幸運にも水に沈む夕陽をご覧になれる方は、どうぞその環境を満喫してくださいマセ。
星と楽しむ音楽INDEXはこちら
« ガガーリン44 ガガーリン・ブルーの庭 | トップページ | 目がスター と はまぐりの潮汁 »
「 星と楽しむ音楽」カテゴリの記事
- 幻の名曲の名前がわかりました。一風堂の「NEVER MIND」(2017.08.16)
- きらきら星 と なんて素敵な世界なんでしょう!!(その2)(2016.04.24)
- きらきら星 と なんて素敵な世界なんでしょう!!(その1)(2016.04.24)
- 春の雨や曇りの日に聴きたくなる音楽(2016.03.14)
- 可憐で力強い名曲 西村由紀江の「野ばら」(2016.02.07)
コメント