プラネタリウムの夕暮れと夜明け
プラネタリウムでは様々な番組が上映されています。
なかには、場内の明かりが消えた途端真っ暗になって、
「今、私達は夜中の2時の星空を見ています」と始まる番組もあるかもしれません。
けれど、一般的なスタイルとしては、夕暮れ~夜・満天の星空~夜明け~朝を迎えて終わり、
という流れ(生解説をされているところは、その日の夕方から翌朝までの星空をゆっくりと動かしながら披露)が多いかなと思います。
プラネタリウムでは「満天の星」が醍醐味ですが、
同じくらいこの「夕暮れ」や「夜明け」のひとときが楽しみという方もいらっしゃることでしょう。
少しずつ暮れてゆく空。視界に入る隣の席の友達の横顔もだんだん見えなくなって、
日常を離れて、自分自身の世界に没頭してゆく時間・・・。
ドームの西の空にはオレンジ色の夕焼け。
ドーム全体の青い色は徐々に濃く暗くなってゆき、オレンジ色も消えかかる頃、
ここに一つ、あそこに一つと星が現われはじめて。
やがて自分の指先も見えないくらい闇と満天の星に包まれる。
という夕暮れから満天の星へのシーン。
夜明けはというと。満天の星空が広がる中、東側の空の下の方がほのかに白んでいる。
ドーム全体の星空が少しずつ明るくなり、星の数も減ってゆく。
蒼さが増してゆく空に溶けこむように一つ二つと消えてゆく星。
最後の星がゆっくりフェイドアウトするように消えて、朝になる。
星空の下で一晩を過ごしたような夢からゆっくり日常へ戻る。そんなひととき。
そんな夕方や夜明けの演出ってどんなふうにおこなわれるのでしょう。
施設によってもいろいろあると思うのですが、基本は下のアイテムを組み合わせておこないます。
(といっても私はプラネタリウムの施設を使わせていただいた側なので正確な表現ができていないことをご了承ください)。
恒星/ドームに出る星の数を0%(0個)から100%(満天の星)まで調整
昼光/ドーム内の明るさを0(明るい)から100%(真っ暗)まで調整
ブルーライト(青い照明)/0%(off)から100%(全開)まで
グリーンライト(緑の照明)/0%(off)から100%(全開)まで
夕焼け&朝焼け/ドームの空の下の方がオレンジ色に染まる
薄明/ドームの空の下の方が白っぽくみえる
これらを使って夕暮れから満天の星空をどう組み立てるかというと、
概略はこんな感じだったりします。
夕暮れ →満天の星空
昼光 ある程度の暗さ →真っ暗へ
恒星 0個 →100%(満天の星)へ
ブルーライト 80%(たそがれの空の色を再現) →0%
グリーンライト 40%(たそがれの空の色を再現) →0%
夕焼け (西側の空にだして曲の中頃でオフ)
けれど、実際には、
夕焼けは曲のどの部分で消えた方がいいのか。
空の青さがなくなってゆく加減は?
星が0%から100%まで増えてゆく加減は?
1番のさびのところで最初の星が現われたとして、そのあとは徐々に星が増えるのがいいのか。
最初はゆっくりで曲の最後に一気に満天の星になった方がいいのか。
などなど、緻密に各アイテムの配合といいますかレシピを組み立てていかなければなりません。
「夕暮れ」はお客様を日常から、
「星空の下」という別世界へ誘うための大事な導入であることが多いですし、
「夜明け」は、再び日常に戻っていただくための最後の余韻の部分。
それぞれの番組制作の方達が、何度も何度も試行錯誤繰り返しながら、
腕によりをかけ、一番ベストの演出を組み込んでいるはず。
どうぞ、手塩にかけた演出を楽しみにいらしてください。
また、オートではなく、手動で解説員が夕暮れや夜明けを演出する場合もあります。
解説員の操作を拝見していますと、
数多い上映経験の中で、夕暮れはこんなふうな配合で暮れていき、星が出るのが一番美しい。
夜明けはこんな風に星が消えていき東の空が明るくなる薄明があらわれて、
朝を迎えるのが美しい。というレシピが指先と身体に内蔵されている気がします。
プロの料理人が、しょうゆが小さじ何杯で酒が小さじ何杯かって数字でメモるのではなく、
身体で覚えてしまっているように、
この段階で「昼光は4でブルーライトが6で何々が」とメモがあるのではなく、身体で体得されている気がします。
お一人お一人の匙加減の個性がかいまみれたり、職人の「技」の域が感じられて興味深いです。
日常では満天の星を体験する機会より、一つ二つかすかに見えている星に目を凝らすという状況の方が多いはず。
だからこそ、一つ一つ星が現われる夕暮れや、一つ一つ星が消えてゆく夜明けは、
私達の身体が経験している感覚がよみがえらされ、臨場感持って楽しめるひとときなのかもしれません。
そんな夜明けのひとときにお薦めの音楽はウォン・ウィンツァン&真砂秀朗の「モーニング・ソング」。
「星と楽しむ音楽」のカテゴリーの こちらで。
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