森の中の学園で安野光雅展
日本を代表する絵本作家安野光雅氏の絵本に「かぞえてみよう」という作品があります(1975年初版)。
これは、はじめて数に出会う小さな子供たち向けの絵本となっていますが、
充分大人が楽しめる、大人だからこそこのシンプルな奥深さを味わえる名作です。
言葉は一切ありません。13枚の絵で完結する絵本です。
白い雪におおわれ、一筋の川があるという田園風景の絵からはじまります。
この絵の脇には0と描かれています。
ページをめくると、脇の数字は1に。同じ田園風景の中に、
もみの木1本、雪だるま1つ、家も1軒、というようにいくつかのアイテムが1つずつ描かれています。
次のページをめくると今度は2。もみの木は2本になりました。野山を遊ぶ子供たちも2人。
3ではもみの木が3本。野原に咲く花が3本。こうして同じ風景の中で、4のページではすべてのものが4つ。
5のページでは5つ。繊細な線で輪郭を取り、淡い水彩でしあげられた絵で描かれているのです。
人々の服装も建物もどこかヨーロッパの田舎のようななつかしい風景です。
7の数のページでいろんなものが7つあるのかを数えていくのも楽しいですし、
6と7のページを比べながら、もみの木はどこに1本増えたのかチェックするのも面白いです。
絵本の最後は12で終わります。すべてのものが12、揃っています。
ニクイなと思うのが、物が1から12増えていくだけではなくて、
1は1月の景色、2は2月の景色・・・12は12月のクリスマスの景色になっているところです。
0で何もなかった田園風景にいろんなものが増えていく中でいつのまにか電車が通ったり、
町が発展していく様子も描かれているところです。
ページをめくると少しずつもの数が増えていくという軸に、
〔12ケ月の季節の進行〕、〔町が発展していく様子〕を重ねた構成が、
ページを何度も見比べたくなったりさせるのでしょう。
言葉のない絵本なのに絵だけで何度も何度も楽しませてしまう。
海外でも高く評価されている絵本というのも納得です。
さて、今、森の中の学園で安野光雅さんの原画展がおこなわれています。
部外者も入場できます。
早速この安野さんの原画展も見てきました。
他の作品も美しかったですが、「かぞえてみよう」の原画が見られたこと、その美しさに感激しました。
絵本では3月4月のページの野原が「黄緑」という印象でしたが、原画だと「萌黄色」と言いたくなります。
すべての色に奥深いニュアンスがありました。
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