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2006年8月13日 (日)

ゲド戦記・手嶌葵の「ローズ」が聴きたい!

「ゲド戦記」を今日見ました。天下のジブリ作品という期待値からすると欲求不満なところは多々ありました。
ですが、この映画最大の功績は手嶌葵という存在を世に放ち、その19歳の今の輝きをフィルムに永遠に焼き付けたことでしょう。
CMでおなじみの「いのちを大切にしない奴なんか大嫌いだ!」。この高潔でそれゆえ傲慢になりやすいセリフを、観客の心にすとんと共感持って届けることがでるのは彼女の声だからこそ。
もはや純粋無垢のエンジェルではいられず、清濁あわせて包み込む母性のマリアにもまだなれず、高潔なゆえ許せないものもあるという、大人の女性になりきる前の
19歳の輝き。天と生身の人間の間のような輝き・・・。
手嶌葵の硬質な、水晶のような光が、ヒロイン<テルー>を通して矢のように放たれていました。

CMで聴いていた「テルーの唄」も、この場面も観るためにもう一度映画館に行こうかしらと思う素晴らしさ。まっすぐだけどどこか無防備な声が美しい草原に響きわたりました。

ただ、ストーリーなどには不満があります。あまりにもストレートすぎました。同時多発的にいろんなことが起こり、それが一つに絡み合ってクライマックスへと向かう、ということはなく、ただひたすら直線的に話は展開します。「前のあのシーンやエピソードにもう戻らないのですかー」と時折り言いたくなるくらい、一本線だったような。
そして、「命」「光と闇」などのメッセージも素晴らしいのですが、観念的で、伝え方が直接的でした。命について、登場人物が誰かにとうとうと語るのではなくて、もっと映画全体から香るものになっていたら、と。たとえば、宮崎駿監督の『となりのトトロ』。「自然を大切に」と登場人物が語るシーンはなかったと思うのですが、それでも映画全体から<森っていいな><命は尊いな>という思いが伝わってきました。

『もののけ姫』のこだまとか、『千と千尋の神隠し』の坊のように本筋とは違うけどキャラクターグッズとして一人歩きするような「遊びキャラ」が不在だったのも残念。
ジブリ名物の<空を飛ぶ快感>もあまり感じられませんでした。

一方、前出の手嶌葵さん以外でよかったところは、まず風景。特に、葡萄色(マントとか風景)、茜色(マントや空、風景)、建物のくすんだレンガ色などの暖色が印象的でした。この暖色系と空の淡い水色、草原の緑色のコントラストはこの絵の中に身を投じたくなる美しさでした。

そして、声のキャスト。誰がやっていてるのか知っていてもその役者の顔が前面に浮かんでしまうような「我」は感じられませんでした。

実は一番ぐっときたセリフは、ハイタカのセリフです。(ネタバレにはならないと思うのですが、気になる方は読み飛ばしてください。)

「わしらが持っているものは、いずれ失わなければならないものばかりだ」と語ります。このあと続くセリフも難しいものでしたが、私自身は、「苦しいこと」も天からの贈り物であり、一方、大切なものを失った苦しさを忘れてゆくことも天の慈悲であるという意味だと受け取りました。

このセリフの時だけ、私は菅原文太の顔を浮かべました。どんな思いで口にしたのだろうと。たしか菅原文太は息子さんを、どうしてそんな形で命を落とさなければいけないのかという状況で失っているですよね。菅原文太さんはどんな思いだったのだろう。このセリフが自分自身へのメッセージともなって、少しは苦しみを減らすことができたら、なんて僭越ながら思いました。

『ゲド戦記』の特集番組を見ていなかったので、パンフレットを見て知ったことが2つ。
一つは宮崎吾朗さんが初監督をされたいきさつ。吾郎さんの立場だからこそ、アレンにだぶらせて語れる叫びがあったわけですから、そこに切り込んだエネルギーで、これからもがんばってほしいです。

もう一つ知ったのは、手島葵起用の発端が鈴木敏夫プロデューサーが、彼女が歌う「ローズ(The Rose)」のデモテープを聴いたということ。「ローズ」といえば多くのアーティストがカバーしていて、ベット・ミドラーでもおなじみのあの「ローズ」です! 頭の中で瞬時に、「ローズ」のドラマティックなメロディーと、それを手嶌葵が透明感ある歌声で歌い上げずに抑えてトツトツと歌う様子が浮かびました。そして、鳥肌がたちまくりました~。人間の想像力ってほんとーにすごいし、便利! まるで、梅干を想像するだけでごはんが食べられる、というように頭の中で即座に手嶌葵版「ローズ」を実現させ、感動できるんですもの。
実は、彼女はテレビで2度ぐらいローズを歌ったそうですね。しかもアカペラで。見逃しました。やっぱり想像だけじゃなくてリアルに聴いてみたいものです。


追記/パンフレットを読み返したせいか、日が経つにつれ、この映画に対するふつふつとした思いが強まっています。パンフには映画で使われたと思われるセリフがいくつも掲載されていますが、ほとんどが活字で読んでも一度じゃ頭に入らないものばかり。これらを映画館で、活字のない耳だけの情報で観客が受け止めなきゃいけないなんてムリ!また、テルーの「自分はテナーに生かされた」のセリフ。映画の中でエピソードとしてきめこまかく[テルーがテナーに生かされた]ことを示さなければ、この言葉も絵空事でしかありません。
難解で分からないセリフ、きちんと描写できずに言葉だけで済ませているから実感できないセリフetc.もったいないとしか言いようがありません。
ちょっと偉そうですが、誰かが産みの苦しみの末、創った[作品」、試行錯誤、挫折の繰り返してつかんだ「オリジナリティ」「スタイル」「実績」を安易に「借りて」形にしてはいけない、と痛感しました。
でも、パンフであらためてホートタウンの建造物の薔薇色の美しさにみとれました。

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コメント

ゲド戦記、前評判が悪いのでみるのやめようと思ってたけど、先入観でばかりじゃいけないなぁ、自分で見もしないで…と反省。
星日和さんの感想は新鮮でした。

ポポ手さん。でも、私もおすすめできるかというと微妙ですよ。素材もテイストもいいのですが、もう少し作り方を工夫できなかったのかな、と。どうしてもジブリということで期待値を高く持ってしまうので、手嶌葵の歌を聴けたらいい、ぐらいの感覚でいかれるとニュートラルに評価できるかも。ちなみに「ローズ」は映画の中では使われていません。

手嶌さんのローズ、偶然テレビで聞きました。
夜中の番組で映画の番宣か何かの特集の時に
彼女がゲストで出ていて、その時にインタビュアーが
リクエストしてのことでした。最初は抵抗したものの
静かにアカペラで歌い始めました。
鳥肌が立ったのを覚えています。
今回ココにお邪魔したのも、彼女の歌うローズを
調べてのことでした。なので経緯を初めてココで
知りました。どうして歌ったのか分からず、
サウンドトラックに入ってるものだと思っていたんです。
いつか彼女の歌うローズが世に出ることを
望んでいます。

赤井さん。はじめまして。興味深いコメントありがとうございます。
夜中の番組でアカペラで歌われたのですね。「静かにアカペラで」「鳥肌が立ったのを覚えています」という赤井さんのお言葉を拝見しただけで今、その様子が想像できて私も鳥肌が立ちました。
先日の4chの24時間テレビに手嶌葵さんが出演した時、ローズは歌ってはくれなかったのですが、その歌声を聴いて、彼女の声は「オカリナ」のようだわと感じました。素朴さ温かさ、息がふわっと抜けるところ。
私も彼女の歌うローズが世に出ることを望みます。

改めましてごんばんは。
ローズを歌った番組動画が見つかりました。
全部ではありませんが、ローズ聞けます。
http://www.youtube.com/results?search_query=%E6%89%8B%E5%B6%8C%E8%91%B5
ここ↑の葵さん動画の中の上から9番目。
ゲド戦記舞台裏(2-2)というところです。
ミュージックステーションでの紹介VTRのところでも
ローズのさわりの部分が流れていますし、
テルーも良いですが、ローズやはり良いです。
発音が良いのは彼女、帰国子女なんでしょうか。
ぜひ聞いてみてください!

赤井さん。貴重な情報ありがとうございます!
早速動画みてみました。手嶌葵のローズ、やっぱりいいですね。さわりだけでもぞくぞくしました。そして発音、自然でいいですね。
映像にうつっていたデモ盤をみると3曲収録していたのですね。1曲目のムーンリバー、2曲目のラビアンローズも気になります。そして3曲目のローズ。ぜひ早くこの3曲のカバーを含めたアルバムを彼女には出してほしいですね。教えてくださりありがとうございました。

手嶌葵の洋楽曲CD出ますね。
3/5AL The Rose~I Love Cinemas~
映画音楽の良い曲満載です。楽しみ
http://www.yodobashi.com/enjoy/more/i/cat_1107_8081496_40229076/82753626.html

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emi (秋田恵美)

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。
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