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2006年11月12日 (日)

プラネタリウムでの声の力

プラネタリウムでのヒーリング番組を担当させていただいてきた中で、
一番感じたことのひとつが「声の力」です。
私のシナリオをナビゲーターの方が、
プラネタリウムのドーム後方のコンソールという小さな空間で語ってくださるわけです。
上映館でスタイルは違っていましたが、
週に一度、ナビゲーターの生語りに触れていられた時、
「人を一番癒せるのは人の声」と強く感じました。

考えてみたら、私たちは生まれる前から、
「声」を通じてこの世界に触れていたのですよね。
お母さんの胎内で、自分に語りかけ、
誕生を心待ちしてくれている家族の声を聞きながら育ってきたのですよね。
この世に生を受けてからも、泣いたりぐずったりした時にあやしてくれるのは
お母さんをはじめとするまわりの人の声。

だからこそ。
胎内ようなほのぐらさに包まれた丸みのあるプラネタウムの空間で、
人間の声が心に一番届くのは自然の摂理なのかもしれません。

プラネタリウムでお客様が開演間際に集中していらっしゃって、
ドーム内がまだ落ち着かない雰囲気の時でも、
ナビゲーターが「こんばんは~」と語りはじめると、
すーと静かな気配に場内が包まれてゆくのを何度も目の当たりにしました。

ナビゲーターご自身がくつろいでいらっしゃることを感じさせる「ようこそ~」の声。
ご自身がやすらぎを体感してくださっているからこそ「やすらぎの境地」へご来場者を声で導いてゆけるのでしょう。
きちんと起きて座っていらした来場者の方々が、
少し腰を前に移動させて背もたれに深く身をもたれるように体制を変えられたり。
心を開き、身をゆだねてくださってゆくのを感じてきました。

ところで、シナリオを目の前でナビゲーターの方に読んでいただくのは、
冥利に尽きることばかりなんです。
「こんな風に思いを込めてくださる言い方があるのか」とか
「この一文ってこんな深い意味を想わせる文章だったのか」とか
自分で書きながらも気づき切れなかったことをナビゲーターの方から教わることがいっぱいありました。

一例を挙げますと、「星と一緒にゆっくりしましょう」という言葉を番組の最後に必ず入れていたのですが、
ナビゲーターのお一人岡田静さんはこの言葉を「星と一緒にゆっくりしましょ」と語られました。
「しましょ」は語尾が少しあがり、「しょ」は伸ばすのではなく、8分音符ぐらいの軽やかさで終わります。
岡田さんの声に私が感じるのは、「最上質なコットン」。

シルクでもベルベットでもなく、コットン。
なめらかで最上質。
フェミニンではなくボーイッシュなところもあるけれど、
きめこまやかな声質。
だからこそ、しっとりと「星と一緒にゆっくりしましょう」と語るのではなく、
「ゆっくりしましょ」がぴったり。
フレンドリーに誘っている雰囲気がいっぱいに伝わってきて、素敵でした。
ベルベットの声質の方だと「しましょ」は合いません。
「しましょう」とゆっくりと語尾を落としてしっとりとおさめるのがぴったり。

ひとつの楽譜が演奏家の解釈で命を吹き込まれ、輝きだすように、
いろんなナビゲーターの方が、いろんなフレーズに命を吹き込んでくださいました。
文字で書かれた文章に命を吹き込んでくださるのが「声」ですし、
その「声」を生かす文章や言葉遣いをしなければいけないのは書き手。
双方の活かし合いが大事なのでしょう。

明るい部屋で感じる「くつろげる語りのスピード」とプラネタリウムの空間で感じる間合い、呼吸は違います。
明るい室内でゆったりとした気持ちで原稿を読みながら1分と尺を決めたMCが、
プラネタリウムの中だと1分30秒かけるべきものだったということも多々ありました。
それだけ、プラネタリウムの空間でくつろいだ時の呼吸が深いのだと思います。

プラネタリウムでの語りの間合い、それは、現場で様々なナビゲーター、
語りをつとめてくださった星の解説員の方々から私が回をこなしていく中で学ばせてもらったものです。
彼女たちが語ってくださるのと同じスピードで私自身が口の中で声に出さずに一緒に語ってみることで、
お一人お一人のリズムの違い、音楽が終わったあとに一声が入るそのタイミングを覚えました。
字の練習で、お手本のグレーで書かれた文字を上からなぞって字の形を覚えるように、
お一人お一人の語りをいっしょになぞっていくことでいろんなこともつかみました。
そして、大切なことは、最初は間合い、ゆったり感、呼吸のリズムをなぞることからスタートしても、
自分自身のリズムで内側から作りだすこと。

たとえば、「漆黒の闇に青い地球が浮かんでいます」という言葉も、
ただ語るのと想像して語るのでは違います。
《宇宙の漆黒の闇を想像する。すると頭の中にいろんな星々が浮かんでいる深い闇がみえてくる。
そしてその中に青い惑星を思い浮かべてみる》
を行ないながら速くなんて難しいですよね。
間をとらなきゃ、でなくて、心がきちんと情景を感じるスピードで語ろうとすれば、自然に間が生まれてくるのですね。
こうして、おのずと私自身が自分の「間・呼吸」が体得できたかなと思っています。

そんな風に声が「場」を動かす力を感じてきましたが、
私自身が表立って皆様の前で話す機会というのはめったにありません。
でも、声の力を自分自身でも体験してみたい、
そう思って参加してみたのが、堤江実さんによるポエトリーリーディングでした。 

以下11月13日の「堤江実さんによるポエトリーリーディングのよろこび」に続きます。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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