村主章枝---「イパネマの娘」引き出しの多さに魅了
遅ればせながら、フィギュアスケートのNHK杯を見ました。
村主章枝はやはりすごいですね。
優勝することはなかったけれど、EXの「イパネマの娘」を見て、村主の引き出しの多さに感動しました。
村主がプロに転向することなく、今シーズンも現役続投なことがなによりもうれしいです。
今年も新たな境地を切り開こうとしていますね。
彼女のアスリート魂ってすごいなと思います。
この試合で一位にならないと次に控えている大きな大会の出場資格がない、
という土壇場でミスなく必ず決めることができる精神力の強さ。
竹久夢二の絵に出てくるようなきゃしゃな雰囲気を持ちながら、どうしてどうして、芯が強いですね。
外野の声や視線に一喜一憂しなさそうな、「自分は自分」という達観の仕方も感じます。
まだ若いのにうらやましいくらいです。
村主は「表現力」といわれるけれどむしろ「なりきり力」を感じます。
肉体で表現することが一番できるスケーターかというとそうではないような。
身体の柔らかさを生かしたアクロバティックで難易度の高い技が人一倍できるというわけではないので。
ビールマンスピンしかり。
彼女の肉体ができるポーズには限界があります。
スパイラル、スピンのポーズなどすべてが誰よりも美しいフォルム、というわけではないと思います。
つなぎのすべてが魅力的な振付というわけでもない。
けれど何が他のスケーターと違うかというと、スパイラルの時もどんな時も、村主が何かを表現しようとしていることが明確に伝わってくること。
どんな心情を表現しようとしているのか、とか、その主人公になりきっている、とか。
「ジャッジや観客の目の中で滑るのがどきどき。
意識してしまう」とかではなく、村主が描いている世界に観客が誘い込まれていく感じ。
観客に「きてくれてありがとう」「応援ありがとう」と何度も語るように、
村主は観客に見られることがプレッシャーなのではなく、全部よろこびに置き換えられる人なんですね。
そこが、難易度がいくつとかそういうこととは違う村主のアピール力。表現力になるのかなと思います。
今後、技の難易度から考えるとベストを尽くしても世界の大会で優勝は難しいのかもしれません。
けれど村主のようなスケーターがプロに転向せず、競技に出続ける。
そこに意味がある気がするのです。
きっと多くの若いスケーターにとって、観客の前で滑るというのはどういうことか、
そんなことを村主は言葉ではなく自分の滑りで伝えていく役割があるのかなと思います。
ぜひ若いスケーターは村主からいろんな感化を受けてほしいものです。
村主章枝の今シーズンのプログラムで一番気に入ったのはEXの「イパネマの娘」。
おへそを出したパンツ姿で滑る彼女のコケティッシュでキュートなこと。
そのウエストの細さにもびっくり。
競技でのコスチュームよりもパンツ姿の方がいかにスタイルがいいかがわかります。
振付のすべてがこの曲の雰囲気にぴったり。新鮮なものでした。
シューベルトのアヴェマリアやパッフェッベルのカノンで滑るような正統派の清らかな美しいプログララム。
悲歌ような赤と黒の情念系。そして艶やかでコケティッシュなエビータやイパネマの娘。
プロになりショーで活躍する前の現役時代にこれだけの引き出しを持っていて、
何よりも本人が観客に何かを伝えるのが好き、
観客と気持ちが通い合うのが好き。となれば、
これから現役を続けるにしてもプロに転向するにしても息の長いスケーターとして
いろんな世界を私たちに魅せてくれるんだわと楽しみです。
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コメント
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emiさん、こんばんは。以前ブログを紹介させて頂いた紫乃と申します。
村主選手の記事が書かれてる!と思い、トラックバックさせて頂きました。一言一句同感でした。「村主が描いている世界に観客が誘い込まれていく感じ。」って、正にその通りだと思います。
私はフィギュアスケートを観るのは好きなんですが全く詳しくないので、emiさんの記事を興味深く読ませて頂いてます。
それでは失礼いたします。
投稿: 紫乃 | 2006年12月10日 (日) 21:37
紫乃さん。私も紫乃さんがご自身のブログ「小さな星」で村主選手についての書かれているのを拝見して同感!ってうれしくなりました。
一目見て村主ワールドに惹きこまれ、別格に感じた紫乃さん。
「表現力の村主」という評判をきかずともそう感じた紫乃さんの感覚もいいなと思いますし、見る者をそんな風にすぐひきつけられる村主さんのパワーをあらためて感じました。
これからもフィギュアスケート楽しみましょ。
投稿: emi | 2006年12月10日 (日) 21:55