ガガーリン61 ガガーリンの人柄
ガガーリンは科学者ではありません。
科学者が宇宙飛行士の訓練のために心身のトレーニングを積んだ、というのではなくて、
高度な飛行技術とあらゆる危険を乗り越えてきた飛行士が宇宙飛行士のための訓練を積み、
天文学他の知識も同時に学ぶことになった。わけです。
(cf ガガーリン32 飛行野郎)
鋳物工になるために技術学校に通っていた10代のガガーリンは、航空クラブに入って操縦に目覚めます。
天文のことや宇宙開発を目指して大学に入学、研究者の道を進んだというような経歴ではないのです。
1962年に来日した時、多くの人はその気さくさ、快活で気のいい青年ぶりに驚いたようですね。
当時、ソ連の人というと、しかめっつらでむっつり。
秘密主義で笑いもしない、みたいなイメージだったのかもしれません。
ガガーリンの気さくぶりが意外だと思われていた様子は、来日当時の新聞記事からもうかがえます。
微笑をたやさない。いかめしい軍服を着てはいるが、いかにも親しみやすい小柄な青年である。
これが人類最初の宇宙飛行をやった”英雄”にはとても思えない(毎日1962.5.22)
皇居前広場を奥さんバレンティナさんと一緒に歩いて、アメリカ人観光客に囲まれた時のエピソードとして
時ならぬ米ソ交歓。「ヘイ、ナイスボーイ」とアメリカ娘がカナキリ声をあげてウインクすると、
少佐が手を振るというほほえましいひとこまもみられた(毎日1962.5.22夕刊)
来日時にガガーリンは、糸川英夫教授をはじめ、宇宙開発に携わっている研究者と何回も座談会をしています。
ちょっと気の毒になりました。
ガガーリンが科学者あがりではないこと、公にできない情報があること、
まだ20代の若者であること、言葉のネックがあること、などを考えると、
日本側の期待に必ずしも添える座談会にはならなかったであろうから。
ガガーリンそのものと、周りが受け取る印象のギャップがあったのだろうなと思います。
だからこそ、筒井康隆って鋭い、と思う記事が1961年4月13日の産業経済新聞(大阪)にあります。
筒井康隆は言うまでもなく日本を代表するSF作家ですが、一家そろって有名だったみたいです。
13日の朝刊ということは、日本でガガーリンの4月12日の宇宙飛行が大々的に紙面を躍った初日。
その日に各界の著名人のコメントと並ぶように、筒井康隆一家の記事がでているのです。写真入りで。
見出しは”つぎは月めぐりだ 案外、実現が早い?・・・”空想科学一家の筒井さん
大阪市立自然科学博物館館長の筒井嘉隆氏一家は、人も知る空想科学一家。
として家族6人の写真入りでそれぞれの人のコメントが紹介されています。
その中で当時26才だった康隆氏の言葉。
「ガガーリン少佐はたくまし型の男性らしいが、
どうもあまり賢い型ではないのじゃないかという気がしますね。
神経質な男なら宇宙旅行にはたえられないでしょう」(1961.4.13サンケイ大阪)
ガガーリンの人となりが詳しく紹介される前に、筒井康隆はこんなふうに言ってのけているんですよね。
さて、ガガーリンを軸に綴っているこのカテゴリー。
ガガーリンに興味を持って読んでくださる方がいらっしゃることが続けていく上での支えにもなっております。
ブログを通じていろんな出会いをさせていただいています。
私のガガーリンの記事を追ってくださっていて、ご自身もロシアとガガーリン、
宇宙開発に興味をもっていらっしゃるお一人から、
ガガーリンの肉声が聴けるサイトを教えていただきました。
「モスクワの声(ゴーラス・ラッシー/The voice of Russia)」というラジオ放送局が過去のガガーリンの肉声を聴けるようにしています。
(残念ながら現在はリンク切れなのでURLの記載は削除しました。
ですが、今はいろんな動画サイトでガガーリン映像をみていただくことができます)
Голос Ю.Гагарина が、ユーリィ・ガガーリンの声、という意味になります。
4月12日の有人飛行に出発する直前の有名な声明や、着陸後のコメント他。
ロシア語で語っている内容がわかりづらくでも、もったいぶらないよどみないリズミカルな話し方に、
人柄が察せられる方も多いことでしょう。
Tさん。貴重な情報ありがとうございました。
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