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2007年1月14日 (日)

ガガーリン60 「地球は青かった」に透けてみえるもの

ガガーリンは「地球は青かった」とは語らなかったのですか。
本当は「地球は青いベールをかぶった花嫁のようだった」なんですか? 
「地球は青かった」のあとに「神はどこにもいなかった」という言葉が続いていたんですか。
というご質問をたびたびいただきます。

あらためて、現在の段階で私自身が把握していることを書いてみます。

私の情報源は図書館に所蔵されている新聞&書籍、
日本ロシア語情報図書館などでのロシア語の資料、ネットで閲覧できるロシアのサイトが中心。
ですので、ガガーリンが当時のソ連や日本のテレビやラジオで語った言葉や、
ニュースでの報道のされ方に関しては確認しきれていません。
また、図書館やサイトで入手できた資料もまだ、すべてを読み終えているわけではありません。

という今日現在の段階で言わせていただくと。
「地球は青いベールをかぶった花嫁のようだった」「神はどこにもいなかった」という言葉に関しては、原文はみつかっていません。
いつ、どこで語られたということもわかりません。
すべての情報を把握しているわけではないので、こんな風に語ってはいない、
とは断言できないけれど、こんな風に語ったということもできません。

一方、「地球は青かった」に関しては、確かにガガーリンは語っていると言えます。(ガガーリン10ご参照を)
原文は「ゼムリャー・ガルバヴァータヤ」。
ゼムリャーは地球。ガルバヴァータヤは薄青がかっている。青みがかっている。
構文としては現在形。ですので、厳密に訳すと「地球は薄青がかっている。青みがかっている」という意味になります。

いつ語られた言葉かというと、宇宙から帰還したガガーリンが1961年4月12日にソ連の新聞、イズペスチヤとプラウダの記者のインタビューを受けた時の言葉です。
「空は暗かった。一方、地球は薄青がかっていた」と語りました。
(構文としては現在形なのですが、宇宙からみた様子を聞かれての言葉なので、過去形っぽく、薄青がかっていたと訳すほうがしっくりくるでしょう)

この言葉は、日本では4月13日の新聞各紙にすぐに登場します。海外の新聞も今調べている最中なのですが、やはり4月13日ごろに紹介されています。

私がガガーリンを調べることになったきっかけは「地球は青かった」の原文を知りたかったことでした。
ですので、これで一件落着するはずだったのに、なぜ今なお、いろんなガガーリンの資料を追っているかといいますと、
まだまだ知りたくなる「なぜ?」があることと
「原文探しの旅」がガガーリンに関することだけではなくいろんなことに気づかせてくれるからです。

具体的に挙げますと

その1)
なぜ、私自身が〔ガガーリン=地球は青かった。以上〕で済ませてしまい、
彼が他にどんなことを語ったかに思い巡らさなかったのかという不思議さ。
宇宙から眺めた地球のビジュアルを見て、「ガガーリンの言うように地球は青いなあ」ってつぶやきながら。
彼の言葉を知ったつもりになっていたことの怖さに気づかされました。

その2)
なぜ、ガガーリン=地球は青かった。になってしまったのかという疑問。
ガガーリンは、地球は青いということ以外もいっぱい語っています。
しかも、「地球は青かった」はガガーリンが宇宙に行って語った第一声でもないし、
ラジオでガガーリンの肉声が伝えられた時の第一声でもない。
それなのに、私達って、ガガーリンが宇宙を見て最初に語った言葉が「地球は青かった」
もしくは、宇宙から地球に降りて、みんなの前に現われて語った最初のセリフだった、
ぐらいにイメージしてませんでしたか。なぜ、そんな印象が定着してしまったのかがとても気になるのです。

その3)
ガガーリンについて調べれば調べるほど、他にいろいろ語っていたことがわかるということ。
その2でも触れましたが、ガガーリンは以下のようなことも語っているのです。
地球は丸い。空は黒い。無重力状態とは。宇宙での太陽や星の見え方etc.
とりわけ、地球の眺めに関しては、地球を取り巻く青い大気が光の輪のようだったことや、
夜明け時に太陽の光の影響で、地球の際から漆黒の宇宙へと向かってオレンジ色~藍の虹色が見えることも語っています。

そんな情景の美しさに触れられということが〔調べもの冥利〕に尽きるのです。
そしてなおさら、こんなにいろいろ語っているのに、なぜ「地球は青かった」の言葉しかクローズアップされなかったの?
と不思議がますます湧いてきてしまうのです。
・・・・・・・
と、調べを続けているうちに、ガガーリンについての当時の報道のされ方が国によってかなり違うことがわかってきました。
海外の新聞は7ケ国ぐらいしか見ていないので、
私の推測もなにも、まだ〔勘レベル〕でありますが、
ガガーリンが語ったことの中で、「地球は青い」に一番反応した国の一つが日本ではないかと思います。

「地球は青かった」を調べていくうちに、透けてみえてくるものは、
ガガーリンが語った原文やその他の言葉だけではなく、各国の受け止め方。そこに見える国民性。
大げさですが、それぞれの国でこの45年間育まれてきた宇宙観にまで辿りつくような気がします。

チベットなどの高地では澄んだ空が濃くて、青さを通り越して黒っぽく見えるといいますよね。
青空の奥に宇宙の黒さが透けてみえるかのように。

そんな風に「地球は青かった」の言葉一つから透けてみえてくるいろんなこと。
それこそが、〔調べもの魂〕を駆り立てるのかもしれません。

というわけで、
その4)
「地球は青かった」を当時の人は五感でどう捉えたのかも感じ取ってみたい一つです。
平成生まれ~40代半ばぐらいまでの世代は、あたりまえに地球は青い、宇宙は漆黒。
地球は丸いって感じていると思うんです。
物心ついた頃から、宇宙から眺めた地球のビジュアルなどを目にしていて。
けれど、そのビジュアルを持たない当時の人たちはガガーリンの言葉からどんなことを想像したのでしょう。
「青い地球」ときいてどんな青を思い浮かべたのでしょうか。「
地球は本当に丸い」と聞いてどんな実感を感じたのか。
「空は黒い」ということはどのくらい驚きだったのか、それともストンと不思議なほど素直に受け止められたのか。
当時の新聞などで、「報道のされ方」からうかがえるものがある気がします。

その5)
ガガーリンによる人類初の宇宙有人飛行(その後のアポロ計画なども含めて)が世界各国でどんな風に報道されたのか、知りたいです。
それによって、その国の人々に独自の「宇宙観」が今日まで育まれてきたはずですから。

その6)
スプートニクやガガーリン。アポロの月面着陸など。1957年ぐらいから人類の宇宙観ってどう変わったのか知りたいです。
それ以前とどう違ったのか。各国の報道の仕方が、それ以降の宇宙観を育んできていると思うのですが、
当時の報道の仕方そのものにさえ、大げさですがその国古来の宇宙観も反映されているかもしれません。
そんなお国ぶりも透けてみえてきたら面白いなあと思うのです。

来日シリーズはまだまだ続きますが、1961年4月当時の外国の新聞も見はじめたら、それも面白くて。
これからはあっちこっち行ったりきたりするかもしれません。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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