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2007年2月13日 (火)

荒川静香---勝者の美学

トリノ五輪の熱狂からもう一年。月日がたつのは早いですね。
荒川静香のトゥーランドットの舞の輝きがいまなお心に焼き付いています。
そして、この1年の彼女の姿からは勝者の美学を感じます。

昨年、荒川静香がインタビューを受けた時に、自分の長所は他人の意見に流されないこと。
短所は他人の意見を聞かないこと、というようなことを語っていたと記憶しています。

若いのに、余計なものに惑わされない。
確固たる自己があって、軸がぶれないんだろうな、とうらやましくなりました。

魔物が棲むといわれる五輪。
金メダル確実の前評判とおりにメダルを手にいれるアスリートも入れば、
たなぼたラッキーでメダルが転がりこんでしまう選手もいます。
荒川静香の場合、金メダルは確実でもたなぼたでもない。
荒川自身、スルツカヤやコーエン他の出来次第。だったのではないでしょうか。

金メダルを手にいれた後の選手。道は様々です。現役続行、プロに転向。
コーチなどでスケートに携わる。まったくスケートから遠ざかってしまうなど。

荒川はプロに転向したわけですけれど、プロに転向した選手のショーをみた時って、
えって思うことが少なくありません。
それはまず体型がかわっている。
ジャンプの切れがなくなっている。
しょうがないのかなと思うのです。
多くの選手が、腰、膝etc.故障を抱えて、外科的手術を経験しながら競技人生を送ってきたのだと思うのです。

3回転ジャンプを1回飛ぶごとに体のどこかに負担が蓄積しても、
たぶん体の限界をかけて、選手生命を燃焼してきたはず。
なので、プロに転向の時には、今までのように身体を酷使できない、
ジャンプを飛ぶわけにはいかない。
プロとして長く滑ろうと覚悟するなら、
なおさら、体がもちこたえる方法で「魅せる」ことに意識をシフトする必要がでてくるわけです。

プロに転向して、すべりが荒くなったな。
体が絞れていないなと思う選手もいますが、
それは目にみえない体のハンデがあればしょうがないこと。だからこそ、
プロに転向しても、一層磨かれている選手をみるとすごいなと思うのです。
たとえば、佐藤由香。幕張で優勝した時に、
それを不当にみるごく一部の声があり悔しい思いもしたはず。
彼女はそれをばねにしようとしたのか、
ただただスケートが好きという思いのためかわかりませんが、
プロになって最も輝いてる選手の一人でしょう。
競技時代と遜色のないジャンプにさらに磨かれたやわらかいスケート。素敵です。

さて、荒川静香はどうなるのだろう。
と思っていたのですが、彼女もプロになってさらに輝きを増しましたよね。
年末年始のフィギュアスケートの番組でも感動しました。

まず、その体つき。
一層絞れていて、五輪を目指していた時以上に鍛錬を続けていると察せられます。
トゥーランドットのプロバージョンのプログラム、トリノのプログラム以上に好きです。

トリノの時みたいにジャンプを入れ込んでいないのですが、
その分、どうやって「魅せる」かに凄みを感じました。
少ないジャンプだからこそ丁寧に取り組んでいます。
ジャンプの飛距離、そのあとの流れ。パーフェクト。
採点競技ではジャンプのミスにもちろん神経を使うわけですが、
競技の時以上にジャンプを成功させることを意識している。
そんな気迫を感じました。
少ないジャンプでミスしたら、お客様を感動させれらない、というような。

そして、レイバック・イナバウアーもさらに深く長く。

人は感動に慣れてしまうから、同じプログラムで次にもっと満足させるって難しいと思うのに、
荒川のトゥーランドットはさらにプラッシュアップされて名プログラム。ジャンプが少ない構成だからこそ、
荒川はこのプログラムを息長く演じられるでしょうし、私達も楽しめる。本人にもファンにとっても財産のプログラムでしょう。

トリノで日本人唯一のメダル獲得で日本全体を活気づけただけでなく、
プロとして演技をする以外にも後輩を指導したり、
閉鎖に追い込まれた地元リンクを救う一端をになったり、
荒川静香の金メダル勝者としてのこの一年の功績は大きいですよね。

五輪の女神が自分に微笑んでくれた。
だからこそ、金メダルに値する人にならなければならないという「勝者の美学」を彼女から感じます。

1年前、決してまぐれではないけれど、
スルツカヤやコーエンが金メダルの可能性もあった中でいろんな選手のコンディションや荒川自身の演技の良さもあり、正当に得た勝者の座。
勝者がそれに値する活動をすることが、敗者への最大のリスペクトにもなるのだな、って感じます。

様々な競技で金メダルを取った選手の中でさらに輝き、
そのスポーツに功労した選手にプラチナメダルを授与するとしたら、
荒川静香は間違いなくプラチナメダルを首にかけられるでしょう。

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コメント

emiさん、こんにちは。
荒川選手は選手でいたときもプロに転向してからも本当に美しいですね。真にストイックな人なのだろうと思います。他人に左右されない確固たるものを持つ人はどんな世界の人でも魅力的です。emiさんもそういう人なのだろうと、ブログを読みながら推測しています。

さる子さん。荒川さんは本当に美しいですね。体型だけでもストイックさがわかりますよね。いろんな欲を律しているんだろうなというあのシャープさ。
私は精神も体型もストイックさが足りなくて・・・。それでもさる子さんにおほめいただき光栄です。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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