素敵な言葉その2---すずろ
私の世代ぐらいだと資生堂の香水やオーデコロンがお好きな方が結構いらっしゃるのではと思うのです。
それは集英社の雑誌non-noに資生堂のフレグランスコレクションという広告シリーズがあったから。
ちょうど、コピーライターという職業が注目されてきた頃です。
non-noの一番真ん中の4ページを使ったこのフレグランスコレクションシリーズ。
コピーや、写真の美しさを友達といつも話題にしていました。
そして、次々と紹介される香りを買って愛用していったのです。
リバージュ、禅、スーリール・・・。
この広告シリーズで知った言葉が「すずろ」。香水の商品名でした。
すずろ。響きだけでも素敵だと思いませんか。
鈴、涼やか、甘露、いろんなイメージが広がる語感。
古語辞典をでみると「すずろ」っていろんな意味があるようです。
手元にある旺文社の古語辞典ですと、
すずろ(漫ろ) 〔語感〕思いもよらず、自然にある状態に進んでいく感じ。とまず記され、
①自然に心ひかれるさま。②むやみ、やたら。③思いがけないさまと書かれています。
「すずろ心」だとそわそわ浮き立つ心。
他の資料をみると、心のおもむくままに物事をするさま。
これといったあてもないさま、あたりがやはり、メインかしら。
そぞろ歩きのそぞろは、このすずろから派生しているのですね。
心のおもむくまま、といっても、ぴかっと未来を照らす目標をかかげ、
そこに意志の力でがしがし進むというよりも、ゆるゆると風に吹かれるように、みたいなニュアンスを感じます。
「すずろ」の言葉に触れると八木重吉の「心」という詩を思い出します。
こころよ
では いっておいで
しかし またもどっておいでね
やっぱりここがいいのだに
こころよ では行っておいで
自分を律することができる確信を持った上で、自分の心をつなぎとめている糸からそっと手を離してみる。
風船の糸から手を離すように。
飼い犬のリードを離すように自分に課しているリードを離してあげる。
でも、飼い犬のリードも離していいシチュエーションでだけ許されるように、
誰かに危害を加えてはいけないように、心のリードも許される範囲をもちろんわきまえながら。
そして、心がこっちにぷらぷらこっちにぷらぷら惹かれるままにまかせる。
ダウジングの棒が動いていくのをみつめるように、心が自然に動いていく方向はどこなのかみつめてみる。
そんなことがきちんとできるのが真の「大人」なのかな、なんて。
さて、「すずろ」。香りの記憶がないんです。なぜだろうと検索をしてみたら驚きました。
今でも香りが販売されていることに。そして、高価だったことに。
だから当時、香りを嗅いだことがなく、「すずろ」の響きだけが印象に残っていたのかもしれません。
「すずろ」。私の中で長年抱いてきた言葉のイメージどおりか、その香りをかいでみたくなりました。
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資生堂の香りの広告シリーズは出版物になっています(詳細はこちら)
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emiさん こんばんは。
私、「すずろ」を持っています!
その頃、鬱々とするものを抱えていて、
そこから抜け出すために思い切って買ったのですが、
確かに高価で清水の舞台を飛び降りる思いでした。
でも、私はあまり香水をつけることがなくて
ほとんど使わないまま手元に置いていたのです。
すっかり忘れていました。
今久しぶりに瓶の蓋を開けてみたら、甘い大人の香り。
シャネルの5番に似ているかな。
投稿: さる子 | 2007年3月 6日 (火) 23:47
さる子さん!すずろをお持ちだったのですね。すごくうれしくなりました。
シャネルの5番に似た甘い大人の香り。
イメージが広がります。
さる子さんが当時も高価であったこの香りを選ばれたのは、香りを気に入られてのことと思いますが、まず、たくさんある香水の中でこの香りのボトルに手を惹かれて伸ばされたからですよね。
すずろというお名前に、パッケージにさる子さんの心が動かれた、あの「すずろ」を持っていらした。さる子さんが惹かれるものとたくさん重なることがすごくうれしいです。
投稿: emi | 2007年3月 7日 (水) 05:53