「ゆかし」という素敵な言葉
古語って素敵。現代語でうまく表現できない自分の何かが、
古語だと、あ、このことなのよって言い当てはめられる言葉がみつかります。
そのひとつが「ゆかし」。
私がこの言葉を知ったのは中学時代。同級生の男子に「ゆかし」君がいたのです。
「ひろし」「まさし」というように「00し」というのは男性の名前でポピュラーですが、
おなじ00しでも「ゆかし」には不思議な響きを感じました。
そして、古語に「ゆかし」という言葉があって、
そこから名付けらたことを知ったのは古文の時間のこと。
「ゆかし」とは。心が対象物に惹かれてゆくさまを表す言葉です。
見たい、知りたい、触れたい、いろんな「~したい」があると思うんですが、
対象物に惹かれてゆくなら、その心の様は全部「ゆかし」で表現されるのです。
この言葉をきいて、「奥ゆかしい」という言葉が浮かんだ方もいらっしゃることでしょう。
奥ゆかしいというと、おとなしい、しとやか。というイメージですが、「ゆかし」から生まれた言葉。
奥ゆかしい人という場合、おとなしい人という意味ではなく、
本来は、「もっと奥が知りたい」とか内面に心惹かれていくものを感じさせる人のことなのですね。
でも、自己主張しないからかえって、その人の内面を知りたくなるわけで、
私達があの人は「奥ゆかしいね」と語る時、無自覚だけど、
「ゆかし」という言葉が持つ本来の意味を案外感じていると言えるのかもしれません。
恋愛でも仕事でもなんでも自分の感情を分析してしまうことはありませんか。
この感情はなに?「好きなのか」「好きでも友達としてか。
いや、恋愛感情なのか」とか仕事へでも人間関係ででも「私のこの思いを愛しているといっていいのか」とか。
「好き」「愛している」こういう単語で自分の感情を表現しようとすると、分析や定義づけにおちいってしまう気がするんです。
でも、「ゆかし」という単語にあてはめると、すんなり納得できるのが不思議。
たとえば恋愛だと。
好きか恋愛感情かなんでまず、どうでもいいわ。
メールしたいんだもの。会いたいんだもの。声ききたいんだもの。一緒にいたいんだもの。
もっといろんなこと知りたいんだもの。って。
あの人に感じる気持ちは「ゆかし」。それだけでいいじゃない、って。
私は古語に決して詳しいわけではないし、古語がおしなべて現代の言葉より右脳的とは言い切れないと思うのですが、
古語には分析を要求せず、ありのままに自分の心の動きをそのままあらわしたような言葉をみつけられたりします。
その代表がこの「ゆかし」なのでした。
つい、あらゆることにわたって自分の心理分析をしがち&あてはまる言葉を捜したくなる私にとっては、
こういう言葉があることがとてもうれしいのです。
そうそう。同級生のゆかし君。ユ、カ、シ、それぞれに良い意味の漢字が当てられていたんです
(お兄さんも「00し」さんでしたが、こちらはわりとあたりまえの名前でした)。
私自身が人生で出会ったさまざまなお名前のネーミング大賞のトップ5にずっと君臨しています。
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さて、こちらの画像はなんでしょう。
「ゆかし」と思われたらぜひ 左画像(こちら)、右画像(こちら)をご覧いただけましたら。
素敵な言葉INDEXはこちら。
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「ゆかし」本当に素敵な言葉ですね。「奥ゆかしい」というのがそういう意味だとは知りませんでした。高校時代に古典の先生が苦手だったために真面目に授業を受けなかったことを今になって後悔しています。この頃ようやく書の勉強のために古典を読むようになりましたが、日本語は…というよりも日本人の感覚は本当に繊細ですね。emiさんの素敵な言葉探し、これからも楽しみにしています。
投稿: さる子 | 2007年3月 4日 (日) 01:12
さる子さん。ありがとうございます。
ゆかしって響きもやわらかくて素敵ですよね。
さる子さんが書やお着物や骨董や茶道から日本人の美学を語っていらっしゃることにとても心惹かれています。
古典も読まれるようになったのですね。
私ももっともっと「和の美」に触れたいなって思います。
投稿: emi | 2007年3月 4日 (日) 13:21
ゆかし君。
どんな男の子だったのだろう?
どんな思いで付けられた、名前だったのだろう?
私だったら、思いつかない名前です。
-古語には分析を要求せず、ありのままに自分の心の動きをそのままあらわしたような言葉をみつけられたりします。-
emiさん、さすが視点が鋭いですね。
私も、ぴったりと表現する言葉が
見つからない時、あります。
かと言って、自分で新しい言葉が、
すぐぽっとは浮かんでこない。
でももしかしたら、古語にはあるのかも
知れませんね。
投稿: おんぽたんぽ | 2007年3月 4日 (日) 18:31
おんぽたんぽさん。こんばんは。
お父様が名付けたとうかがったことがあったのですが、どんなお父様だったのかしらなんてあらためて思います。もうずっと会っていない同級生なんですけど。
おんぽたんぽさんも、ぴったりと表現する言葉がみつからない時とみつかったあの快感を感じていらっしゃるのですね。
今ふと、ネットで検索をしてみました。同級生と同じ当て字の「ゆかし」さんが何人かヒットしました。同じような発想で「ゆかし」という言葉を息子さんに託されるご両親がいらっしゃるんだわって思いました。
投稿: emi | 2007年3月 4日 (日) 19:10
こんばんは。
旦那の会社の近くに「ゆかし」という名前の喫茶店?カフェ?があり、
「うむ、奥ゆかしい、のユカシ、って??」と「ゆかし」の意味を検索していたらこちらへ。
そうですね。古語は便利かも。
「この気持ち、うむ。“ゆかし”だもん!」って。
このブログを読んで、書き主に「ゆかし」! なんちゃって!
「何、この気持ちは、ゆかし…!」って昔のヒトをかわいらしく思ったり。
投稿: うーさん | 2010年8月 8日 (日) 22:01
うーさん。こんばんは。
「ゆかし」という名前のお店があるのですね。
ゆかしを調べられて、私の3年以上前のブログに出会ってくださったことうれしいです。
そして書き主に「ゆかし」って思ってくださったことも!!
私は最近も、この気持ちは何・・・と分析してしまうこともあるのですが、人の気持ちはシンプルで、①「惹かれる・引かれる」つまり「ゆかし」と②特に心が動かないの2つで分かれてしまうのかなあなんてあらためて思ったりします。
投稿: emi | 2010年8月 8日 (日) 22:36
私の母校の高校は、古き良き名門校で、旧制第一高等女学校ですが、校歌の三番に、
「その名もゆかし◯◯◯(校名)」と出てきます。
公立の古い麗しいお嬢様学校で、ずっと人気がある理由がわかりました。
投稿: 嬉しい | 2018年8月30日 (木) 05:31
嬉しいさん。このブログの記事をみつけてくださりありがとうございます。
母校が旧制第一高女でいらっしゃるということは伝統校でいらっしゃるのですね。
校歌の3番に「ゆかし」が使われていらっしゃるとのこと。
意味も響きも素晴らしい「ゆかし」を母校の校歌とともに自然に覚えて巣立っていかれる高校生の皆様がうらやましくなりました♪
投稿: emi | 2018年8月30日 (木) 12:50