中田悟による自然音---森羅への同化から生まれた音
金木犀の香りをかぐと、高校時代の通学の坂道を思い出します。
香りって一気にその香りを嗅いだ思い出の場所へ連れていく力がありますよね。
音もきっと同じ。ジリジリ鳴く蝉には「灼熱の陽射し」。ヒグラシには「晩夏のものがなしさ」。
虫の音をきくと、ああ季節は秋と実感。
そんな風にかつて体験した場所へ、その時間へ連れていってくれます。
だからこそプラネタリウムで私が担当させていただいたヒーリングプログラムに自然の音は欠かすことのできない大切なものでした。
プラネタリウムに広がる満天の星はただの灯り。
それを満天の星に見たてて、浜辺で、高原で満天の星空を仰いでいる気持ちを楽しんでいただくためには、
ご来場者お一人お一人の実体験をいかに引き出すことができるかがポイント。
せせらぎ、さえずり、波の音、虫の音が皆様が大自然の中に身を置かれた時の「体感」を呼び起こす役目となるのです。
その大切な自然音に、ナチュラルサウンドアーティストの中田悟さんの音作品がかけがえのないものでした。
中田悟さんは月光浴写真で多くのファンを持つ写真家石川賢治氏の撮影に同行されたり、
石川氏の月光浴写真展では場内のサウンド環境をプロデュースされたり、
屋久島、小笠原etc,さまざまな場所に録音にでかけ、
その貴重な音をCDにまとめあげていらっしゃいます。
着うたで、お手元の携帯に中田さんによる自然音を入れていらっしゃる方も多いのでは。
いろんな自然音のアルバムがCDショップに並んでいますが、私が中田さんの音が好きなのは。
たとえば、せせらぎ。
いろんな方が録音されたアルバムがありますが、
せせらぎを聴いた時に、臨場感が薄く遠い風景の一部としてせせらぎが流れていると感じる作品もあります。
また、まるで耳のすぐそばを水が流れているんじゃないかしら。耳に水が入って中耳炎になりそう。
心地よさよりも迫力がありすぎ、というくらい近くに水の音が聴こえるCDもあります。
そんな中で、中田悟さんによるせせらぎはちょうどいいのです。
せせらぎの中に膝下ぐらいまで浸ってその流れを楽しんでいる。
せせらぎのすぐ脇にしゃがんでその流れと水面のキラキラと音を楽しんでいる。
しぶきがちょっと顔にかかるぐらいの位置でせせらぎを楽しんでいる。
ように絶妙なんです。
中田さんの録られた音は、本当に中田さんが心地いいと思える場所に身を置いてそこで録音されているから心地いいのではないかと思うのです。
中田さんの魂がよろこびを感じる音、というセンサーできっと捉えられた音だからこそ、
私達もその音からエネルギーをもらって五感で響いて癒されるのだと思うのです。
たった一つの音に出会うために、誰もいない岩場、草原、山の中、渓谷、
どこまでもずんずん入ってしまい、
気付いたら8時間ぐらい同じ場所で構えていたというお話をうかがったことがあります。
「そのうち、自分が何者であるかがわからなくなってしまうんですよね」と。
まるでガラスの仮面の北島マヤのように、風が渡る草原の草の一本。
渓谷の岩の一つになる。
自然に中に中田さんが溶け込んで、そんな中で録られた音だから、
CDの中に何かみなぎるパワーがあって、それがCDをかけた時に空間に広がるのではないかと思います。
お部屋にそんな自然の粒子が広がるような作品を流すこと、とてもおすすめ。
まず、私達の心と身体がうれしがります。
そして、空気が淀まず清浄になる気がします。
人と人の距離が近いところで、緊迫感が生まれがちなところで、
せせらぎの音を流すと、「硬い」空気がやわらぐ、
人と人の「気」がやわらかく溶けあうように感じます。
いい香りといい音を流すことは、部屋の中の植物もペットももちろんのこと、
部屋自体もうれしがる気がします。
建材ももともと自然の素材。きっと共鳴するものがあるのでは。
私がお気に入りの中田さんの音の作品から、
今回は、水の音の昼のイメージ、夜のイメージでお薦めの作品2つをご紹介します。
【せせらぎ&さえずり。DAY】
アルバム「stream」。
今年の4月に開催した星愛で茶会(ほしめでちゃかい)でも使わせていただきました。
キラキラした水、マイナスイオン、木漏れ日のシャワー。
PCのスピーカーからせせらぎの音とともに清水がほんとうに部屋の中に流れるような感覚でした。
【深い水の音。NIGHT】
アルバム「月光浴音楽京都編」。
夜の深い水の音が流れています。水琴窟の音も。
たっぷりとした音でゆるやかに流れる水の音。
深い空間にポトッポトッと響く雫の音。
心をおへその下ぐらいに落ち着かせて頭をクリアにするスペイシーさが心地いいです。
中田悟さんの音の世界(その1)(2008.5.8)はこちら
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