NHK杯---コストナーが表現するもの
NHK杯ではカロリーナ・コストナーがショートでもフリーでも力を発揮できたのがうれしかったでした。
<武田奈也>
初めてのグランプリシリーズ参戦の年に、母国開催で3位は見事。
母国での大会。みんなの応援が励みにもなれば、プレッシャーにもなりえる中で、
彼女はプレッシャーを力にできたのでしょう。
観客に心を開いて滑ることで、自分自身が滑るリンクの空気を居心地よくする魔法が備わっている、そんな魅力を感じます。
<サラ・マイヤー>
雰囲気は華やかでやわらかいけれど、鍛えぬいた身体をしていますね。
毎年、着実に上達し、真摯に練習を積み重ねているんだなと感じる一人。
スケートを滑ることがたのしくて、上達することがうれしくてしょうがない。
そんなよろこびが広げる手から伝わってくる気がします。
<カロリーナ・コストナー>
ショートでいい位置につけてもフリーで落としてしまうのがコストナーのパターンでしたが、NHK杯では見事。
今期、ショート、フリー、EXととことん、ポピュラーな曲ではないのがすごいですね。
プログラムに使用される音楽はわかりやすい曲と難しい曲ってありますよね。
わかりやすい曲とは。
・誰もが知っている曲
・アップテンポとスローなところ、曲のめりはりがあり、構成が想像しやすい曲。
・手拍子をできるところとかがすぐわかるのりやすい曲
・特定の人物やドラマを演じるなど、スケーターが滑ろうとする世界が想像しやすい曲。
(たとえば、安藤美姫の「カルメン」のように)
難しい曲とは。
・なじみのないメロディー。
・のりにくい。手拍子しにくい。
・特定のドラマなどが想像しにくく、抽象的な音楽。
スケーターにとってはわかりやすい曲で滑る方が簡単かしらと思うのです。
難しい曲だと、観客が乗れない分、ミスが続くと会場中に緊張が続いたままになります。
観客が手拍子で選手を盛り立ててあげることもできず、さらに選手は重い空気の中で滑るという悪循環になりやすい。
実際に中国大会のコストナーのフリーはジャンプのミスなどがあり、
重苦しい空気が流れたままの気がしました。
けれど、NHK杯は演技がよかったから難しい曲が功を奏していました。
みんなのなじみのないメロディーで滑る最大のメリットは、
他のスケーターの「色」がついていないことでしょう。
誰のイメージも引きづらない。他の女性を演じるわけではない。
だからこそ、コストナー自身の魅力が際立ちました。
長い手足が演技を大きくみせて、スケールを感じさせながら、
イタリア人らしからぬ繊細さとはかなさを感じさせるのが素敵。
雰囲気はエミリー・ヒューズの「小柄でガッツ」と対極。
ショートのストレートラインステップ。
小刻みにくるくるっとターンするステップ。音楽とあってて好きです。
フリーのステップもEXの振り付けもすべてがセンスいいですね。
フィギュアスケートではマイケルジャクソンの曲で滑ることが革命的とかヒップホップは革新的とか言われますが、
わかりやすくない世界を踊るコストナーも充分前衛的だと思うのです。
太田由希奈もそうですが、この二人はクラシカルな曲で端整に滑ることできる。
けれど、一方で抽象的な音楽で「音」そのものを踊りで表すようなスケートをすることがありますね。
コスチュームがパンツルックとかさまざまなアバンギャルドなものではなく、
綺麗な色のドレスでスカートひらひら、なので余計に前衛的にみられませんが、彼女が形にしている世界は充分革新的。
<安藤美姫>
ジャンプが直前になって不安定になったり、フリーの6分間練習で腿をエッジで切ってしまったそうですね。
ジャンプが誰よりも安定していて、表現力もあるからどうなっても2位以上だと思っていたのですが残念でした。
かつて、ジェフリー・バトルが競技中にジャンプに失敗し、コスチュームの内腿あたりが裂けたことがあったのを思い出しました。そ
れでも気力を失わず演技続行。
そして滑り終わったあとはたしかこんな様子だったと思います。
「不本意」という顔をみせるのではなくて、破けているコスチュームに目をやり、
「わあ。なんてこと」みたいな顔を観客にみせて、痛々しい雰囲気にせずに、キスアンドクライに向かった気が。
「あの時のバトルもコスチュームが裂けたなら当然脚も負傷していたはず。
なのに、まったく痛々しさをみせずにいたな」とあらためて、バトルの秘めた強さやショーアップ精神を感じました。
<高橋大輔>
今期はEXが一番好き。ショートの白鳥の湖のステップも見事ですが、
高橋大輔は、自分の肉体の気持ちよさや表現したいエネルギー、と音楽とが一致しているのを感じさせます。
フィギュアスケートで何かを演じるために無理に自分を型にはめてると見えないのがいいです。
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