ガガーリン74/宇宙から見た地球の青(フランス語)
46年前、初めて宇宙に行った人類、
ガガーリンはその様子を「地球は青かった(正確なニュアンスは青みがかっていた)」と語りました。
そして、さらにこまやかに宇宙からの地球の眺めについて描写していました。
総飛行時間108分。地球の軌道をまわっていた時間89分。
108分=1時間48分。二時間ドラマの尺ぐらい。
89分といえばサッカーの試合の前半+後半の時間ぐらい。
長いといえば長いですし、短いといえば短い。
けれど、このわずかな時間がすべての有人宇宙飛行のはじまりとなったのですね。
そして、映像や写真という形に残せない。
だからこそ、ガガーリンは全身全霊でこの108分を体験し、その様子を「言葉」にしたのでしょう。
みんなに伝えるために。自分自身がずっと記憶していられるように。
ガガーリンの語った言葉を追うにつれ、その的確な描写力に驚かされます。
それは今、あたりまえに宇宙からの地球の映像を眺められる現代の私たちだからこその特権。
映像をみながら、ガガーリンの表現したかったはこれね、と思えるのです。
たとえば、青い地球とその背景の漆黒の宇宙空間。
その境にある美しい大気の青い帯。
ガガーリンがその美しさを表現している言葉に触れられるのはとてもうれしいことです。
「地球は青かった」だけ語った人として、済ませないでよかったって思うのです。
さて、71、72とフランスの新聞「ユマニテ」シリーズを続けましたが、今回の74もユマニテから。
ガガーリンが遺した美しい描写のフランス語訳を。
1961年4月17日のユマニテ。
フランス語をきちんと勉強したことはないのですが、辞書で調べた単語の意味を併記してみました。
単語の対応からも、大見出しからも4月15日にモスクワの学者会館でのガガーリンの演説のフランス語訳であることがわかります。地球の眺めについては
La Terre est entouree d’une aureole bleue.
(地球) 取り巻かれる 光輪 青
「地球は青い光輪につつまれている」という小見出しで紹介されています。
以下その本文からの抜粋です。
Le ciel est d’un noir absolu.
(空) (黒)(絶対、完全)
Les etoiles sont tres claires et plus lumineuses.
(星々) (明るく、澄んだ)(より多く)(輝く)
La Terre est entouree d’une tres belle aureole bleue.
(美しい)
Quand on observe l’horison,
(~の時)(眺める)(地平線、水平線)
on destingue une ligne d’un bleu tres pur, puis un degrade
(線) (薄らいでゆく、グラデーションとなってゆく)
de violets et de mauves qui se fondent ensuite dans le noir du ciel.
(バイオレット)(モーブ、薄紫色)
C’etait vraiment tres, tres beau.
(本当に)
Quand je suis sorti de la region qui est a l’ombre de la Terre,
(地域) (地球の影)
l’aureole deu globe a pris d’autres couleurs.
(球) (別の色)
A l’horizon apparaissait une bande de couleur orange clair.
(見える、現れる)(帯)
フランス語がおわかりになる方が「こんな言葉で彼の言葉が訳されて、1961年4月当時、フランスの新聞に紹介されていたんだ」と楽しんでいただれば幸いです。
若干フランス語訳の方が省略されているようですが、ソ連大使館発行の『人類最初の宇宙飛行 ソ連人間宇宙船の成功』(ガガーリン11参照)から上記のフランス語文にあたるところを抜粋してみます。
空の色はまっ黒です。この空を背景にして、星はなおさら輝かしく、くっきりと浮かびあがってみえます。
地球は、独特の青い光輪につつまれています。
地平線のほうに目をやると、この光輪がよくみえます。
空は、やわらかい淡青色から、きわめてなだらかに、美しく、青に、藍に、すみれ色に、そしておしまいに、まっ黒な色にうつりかわっていきます。
地球のかげから出ますと、太陽が地球の大気をとおしてさしこみ、明るく照らしました。ここでは、この光輪はいくらかちがった色にみえました。
地表に接した地平線のまぎわは、明るいオレンジ色にみえました。
ユマニテの続きはガガーリン75に。
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ベンゼン祭、挿し絵も綺麗でしたね。
理系と文系、頭の仕組みはどう違って
いるのでしょうか。 でも努力をしていれば?
ふっとひらめいたり、ヒントになる夢を見たり
するのは、同じですよね。
原子や分子をきっとお友達のように感じている
から、踊りだす情景が浮かんでくるのかな?
フランス語の「青い光輪」も、綺麗ですね。
色彩感覚がお国によって、違ってくるのが
面白いです♪
投稿: おんぽたんぽ | 2008年1月11日 (金) 21:05
おんぽたんぽさん。
私も最近思うのです。
科学者や化学者とアーティストって一番かけ離れている存在のようでいて実は一番近いのかしらって。ひらめきや独創性がないと新たな法則や真理の発見ってできないでしょうし。
面白いですよね。
フランス語の表現綺麗ですよね。日本語ですと直訳は青い光輪。ですけど、アクアブルーのオーラのような光と訳したいです。
投稿: emi | 2008年1月11日 (金) 22:21