雪の結晶を観察した人たち(その8)---スコレスビー
雪の結晶観察の歴史。やっとスコレスビーまできました。
(スコレスビーの名前はスコアズビーと表記されている文献もあります。このブログではスコレスビーとします)
私が雪の結晶スケッチの三大巨匠の一人(あとの2人はグレイシャー、土井利位)と思う人物です。
9)1820 ウイリアム・スコレスビー(William Scoresby)、
『An acount of the Arteic Regions』で96種の精密な結晶図をスケッチ。
人物/イギリスの捕鯨家(探検家)
掲載文献/『An acount of the Arteic Regions: with a history and description of the northern whale-fishery』
詳細/北海の捕鯨の歴史を書いた著書『An acount of the Arteic Regions』の中で雪の結晶スケッチを掲載。
この本、図書館に現物(1969年のリプリント物か)があって、閲覧しました。感激(^o^)丿。
少しラブリーなくじらの絵のスケッチもあります。
私見ですが、スコレスビーのスケッチは土井利位に比べて、工芸っぽいです。
北欧の藁でできた雪の結晶オーナメントやスワロフスキーのクリスタルの雪の結晶オーナメントみたい。
立体的に描かれているものも多いからでしょうか。
雪の結晶の写真集とスコレスビー、利位のスケッチを比べると、
スコレスビーよりも利位の方が写実的、「線」で結晶の特徴を捉えている印象を受けます。
スコレスビーで特筆すべきは、ミシンのボビンケースみたいなものをはじめ、
不思議な形状の結晶も描かれていること(右上の図版にある形他)。
実際、これらの形の結晶は存在し、鼓型、砲弾etc.名前も付けられています。
雪華を六花と先入観持たず、へんてこな形のものも、
ありのままを描いたところが素晴らしいなと思いました。
利位はボビンケースのような雪の結晶を描いていませんが、
雪の結晶の形は温度や水蒸気の量に影響を受けます。
利位が雪を観察した古河や京都、大阪ではボビンケースが降ることはなかったのでしょう
(スコレスビーも母国イギリスでは見られない雪の結晶が北極圏で見られたことを綴っています)。
原書を自分の目で見て感激したのは、2点。
1つは、スコレスビーのスケッチ全種がみられたこと。
もう1つは、スコレスビーがスケッチだけではなくて、
雪の結晶についていろいろ記述していたのがわかったこと。
ボリュームは9ページ。かなり科学書的な内容となっています。
96の結晶に番号をつけ、その形を5つのカテゴリーに分類して解説しています。どのくらいの温度の時に現われるかも記述。
また、マルテンスの本も読んでいたらしいこともわかります。
雪の結晶についての表現は、美しい形、大気中を漂い、日光に輝く、エレガントなどの表現が見られます。
翻訳本/ないようです。
紹介されている文献/『scheekrystalle』(ヘルマン)、
『雪華図説新考』(小林禎作)他。1873年に出版された洋書『Atmosphere』は結晶図96種全図掲載。
最近出版された『スノーフレーク』(ケネス・リブレクト)では25種掲載。名前はスコアズビーと訳されています。
ネットで閲覧/原著を閲覧できるサイトはみつけられていませんが、
NOAA PHOTO LIBRARYでは結晶96種が見られます。上の画像4点もここから。
(2015.2.8追記)
ありがたいことにグーグルブックスで閲覧できます。
結晶図のページはp560以降に4ページ掲載されています。
オープンライブラリーでの4点の画像はこちら
ttps://archive.org/stream/accountofarcticr02scor#page/n593/mode/2up
ttps://archive.org/stream/accountofarcticr02scor#page/n595/mode/2up
ttps://archive.org/stream/accountofarcticr02scor#page/n597/mode/2up
ttps://archive.org/stream/accountofarcticr02scor#page/n599/mode/2up
【雪の結晶を観察した人たちシリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら
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