朝崎郁恵と高橋全による島唄---幼子になってあやされる
春めいてきたけれど、海に行くと風が冷たい。
だからこそ風がやんだときの陽射しの暖かさが感じられてくる季節。
書きたいと思いながら、のびのびになってしまったアルバムをご紹介します。
それは『海美(あまみ)』。
奄美大島の島唄を歌う朝崎郁恵とピアニスト高橋全(あきら)によるアルバム。
いいんですよ。
縁側のひだまりで、おじいちゃんやおばあちゃんに髪を櫛で解いてもらっているような、
なつかしいやさしさにくるまれるような、じーんと暖かいものに体も魂も包まれるかんじ。
朝崎さんはもう60~70代なので「おばあ」という感じですね。声もどちらかというとダミ声。
そして全さんのピアノはひたすら透明でやわらかい。
一見ミスマッチなのに、天の配剤かと思えるほど鳥肌が立つ最高の組み合わせ。
人生の甘さもほろ苦さもすべて溶かしこんだような朝崎さんの歌声。
その声を寄せては返す波のようによりそって、包み込む全さんのピアノ。
「おぼくり~ええうみ」「よいすら節」「千鳥浜」
3曲すべて素晴らしいけれど、特に1曲目の「おぼくり~ええうみ」は必聴。
特に特に「おぼくり」から「ええうみ」に変わる部分のピアノの間奏が、
慈愛そのものの、どうしてこんなにやさしい音が存在するんだろうって思います。
心のどこかが乾いてガサガサの時、この曲に触れると
暖かい血潮が自分に流れていることが再発見できて、
自然に溢れる涙がガサガサを潤してくれることを感じます。
今、ふんばっているものがありますか。
ちょっと気を緩めると倒れてしまいそうだから。
他の人には弱音を吐けないから。平然としていなくちゃいけないから。
でもでも、本当は、ふっと自分自身の張り詰めた糸をゆるめてあげたい。
幼子に戻って、おばあに甘えてみたい・・・
そんな心境の時は、ぜひぜひこのアルバムを手にとってみてください。
そして、無防備な自分に戻ってたっぷりと慈愛に包まれてみてください。
CDでの販売はなくなってしまったようですが、楽曲が増えたデジタルバージョンが今でも入手できます。
海美〜AMAMI
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