« フランネルフラワーが満開 | トップページ | 中田悟さんの音の世界(その2) »

2008年5月 8日 (木)

中田悟さんの音の世界(その1)

中田悟さんの公式HP他でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ナチュラルサウンドアーティストの中田悟さんが昨年自然界に還られました。
仕事仲間であり、「いいよねー」と盛り上がれる人がなかなかいないマニアックな音楽でも中田さんなら分かち合えることが多いという貴重な音楽友達の一人でした。

自然音を録音し、その音を場に再現して独自の音空間を作り出す。その分野においての第一人者。
石川賢治さんの月光浴写真展でのサウンドデザインも手がけてこられました。海の月光浴の写真のコーナーでは足元に置かれたスピーカーからの波の音が、本当に足元に波が寄せているような臨場感を作り出していたり、<京都月光浴>の写真のコーナーでは竹筒や大きな瓶のようなところから水琴窟の音が聞えて、禅的な静けさを空間に広げていたり。

プラネタリウムでも中田悟さんの音は欠かせませんでした。
プラネタリウムの満天の星。それはもちろん本物ではなくて人工の明りです。それを本物の星に見せるのはプラネタリウムのハードの会社の方たちが駆使している「技術」ですが、一番大切なのは来場者一人一人の「想像力」。家のベランダや大自然の中で満天の星空を眺めた時の記憶などが引き出された時、小さな明かりが「本物の星」になる体感を増すのだと思います。

その想像力や記憶を呼び起こす「鍵」となるのが自然音。
ヒグラシを聴くと、晩夏の夕暮れの物悲しさ。虫の音には秋の夜長のゆったりさ。鳥のさえずりには高原で早起きをした朝のすがすがしさ・・・。自然の音って、記憶や空気感と深く結びついていますよね。
プラネタリウムで高原や沖縄、ハワイの星空などを投影しながらその場所で星を眺めている「心地」を楽しんでいただくために、中田さん収録の自然音が「鍵」となったのは、ご自身が魂から心地よいと感じた音だったからこそ。

というように、中田さんは自然音の第一人者として多くのファンを持つ方ですが、ご本人は幅広いジャンルの音楽がお好きでした。
ピコピコ電子音系、モワモワ(女性幻想系ボーカル)、トランス、アンビエントなど。たとえば、イギリスのコクトーツインズ。エンヤとケイト・ブッシュを足して2で割ったような感じ。女性の声がひゅるんひゅるんと霧のように飛翔する幻想&耽美的なグループです。
それから、宇宙人やUFOが出てくる80年代のカルトムービー『リキッドスカイ』の音楽。「エイリアンのテーマ」という曲がアートオブノイズ系でキテレツながらも耳の奥でリフレインを続けて虜にする曲なのですが、中田さんもこの音楽がツボだったようで、サントラもお持ちでした。

「ナチュラル」というと、つい、穏やかな世界を想像しませんか。音でいうと自然の音とアコースティックな楽器。色彩でいうと生成りや草木染の若草色というように。
シンセピコピコ音や、サイケデリックな毒々しい色彩を思い浮かべることは少ないはず。
けれど、実は「自然」って「穏やか」ではなくて「ダイナミック」。南国だったら極彩色の花々や魚たちが「自然の色」。私たちの日常だって顕微鏡で見たら、シュールでサイケ(学生時代、葉の気孔を顕微鏡で覗いた時、シュールな世界に驚きましたよね)。もっと突きつめたら、陽子や電子の世界ってきっとスペイシー。
空にさやかに瞬く星だって、本当はとてつもなくドデカクて超高温。

けっして、「ありのままの自然」はナチュラルな色のラッピングペーパーでくるむのがぴったりな穏やかさだけではないのですね。

中田さんからせせらぎを録音する時のお話をうかがっている時、中田さんの目には、水の粒子が龍のようにダイナミックに躍動して連なる様子が見えているのではと感じる瞬間がありました。real one playerの「cosmic belt」というビジュアライゼーションのような。水の音を採録したのではなくて、『水』という「光」と「動き」と「エネルギー」を収めようとされている、そう感じました。

だからこそ、自然の音とシンセやカルト的な音楽、一見とてもかけ離れていますが、中田さんの中では同質だったのだと思います。
鳥のさえずり、波の音、虫の音など、自然の音に、「なごみ」ではなく、スパークするエネルギーを感じていらした。だからこそ、この2年ぐらい「着うた」として精力的に取り組まれていた<自然の音とアンビエントなメロディーやリズムとの融合>が新たに確立しようとしていたネクストステージだったのではと思うのです。

中田悟さんの音の世界(その2)はこちら
中田悟さんの音の世界(その3)はこちら

中田悟による自然音---森羅への同化から生まれた音(2007.10.17)はこちら

|

« フランネルフラワーが満開 | トップページ | 中田悟さんの音の世界(その2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« フランネルフラワーが満開 | トップページ | 中田悟さんの音の世界(その2) »