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2008年6月19日 (木)

宇宙へ行った人気キャラクター(その3)---カロリーヌ(後編)

前編の続きです。

後編では、「小学館世界の童話シリーズ19」の『カロリーヌのつきりょこう』と、
BL出版による復刻版『カロリーヌつきへいく』の違いをみていきます。
以下、小学館~は小と、BL出版はBLと略します。
Carolinesurlalune
↑原作「Caroline sur la lune」。1960年代当時のもの。

違うところ
1)小は右から開く縦書き。BLは左から開く横書き。
2)絵の有無。小にあってBLにない絵。BLにあって小にない絵があります。
3)絵のリメイク。同じに見えるカットでも七つの間違い探しができるくらいの
 微妙なリメイクがあります。
4)文が違う。全般的にBLの方が量が多いです。小の方が詩的。         
                                             

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『カロリーヌのつきりょこう』と『カロリーヌつきへいく』を見比べて、気になる一番の違いは
「フラスカトール」の扱い。

『カロリーヌのつきりょこう』で、カロリーヌたちがロケットで月に着陸する時、こんな会話があるのです。
「ろけっとをはれのうみにつけよう」「それよりも、フラスカトールのあなぼこがいいよ」。

BL出版の『カロリーヌつきへいく』ではこのくだりは、
「ロケットを、きりのいりえにおろします」
「ゆめのあさせにしないの?」
という会話に変更されていて
「フラスカトール」はでてきません。

この絵本には月へ行くロケットをつくった博士が描いた月面図が出てくるのですが、
小学館版では「フラスカトール」、
BLではFRASCATOR(フラスカストロ)と表記されています。

さて、「フラスカトール」で検索してもわかりづらいこの言葉。
なんでしょう。察しがつく方は月マニア。
この言葉の正体は、神酒(みき)の海の南側に描かれていることからして、
「フラカストリウス(Fracastorius)」というクレーターのことだと思います。
月のクレーターは、主に過去の天文学者、科学者の名前がつけられているのでフラカストリウスも人物名。
フラカストロという人のラテン名なんです。
(絵本で「スカ」となっているのはおそらく「カス」の間違い)

ジローラモ・フラカストロ(Girolamo Fracastoro )は、16世紀のイタリアの医学者であり科学者。
医学の分野で功績を残していますが、天文分野では彗星の尾は太陽の反対側に伸びることを著書の中で
記しました。それで、クレータの一つに名が記されたのでしょう。
とはいえ、クレーターでは、ティコやコペルニクスの方が有名なはず。
子供向けの絵本で「フラカストリウス」が取り上げられているところが面白いです。

フラカストリウス。その場所を確かめてみたくなりませんか。

「2008年版藤井旭の天文年鑑」に掲載されている月面図にもフラカストリウスの名があります。

ネットですと、まず英語サイトですが
Gazetteer of Planetary Nomenclature(直訳すると惑星命名法辞典)
(ttp://planetarynames.wr.usgs.gov/) 
→moonの絵をクリック→「crater,craters」をクリック。
アルファベットのFの欄を辿っていくとFracastoriusがみつかるはず。

日本語のサイトでは
The moon age calender(ttp://www.moonsystem.to/)
というサイトのMain→details→moon mapが
いいですね。

ムーンマップに右下を拡大したページが
(ttp://www.moonsystem.to/moonmap/index4.html)。
神酒の海の下(この地図では下が南側になっているので)にフラカストリウスが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この他『カロリーヌのつきりょこう』と『カロリーヌつきへいく』の主な違いを追ってみましょう。
●小ではロケットの名前は「こぐまざごう」。BLでは名前なし。
●ロケットで月に連れていくヤギ。小では名前なし。BLでは「エグランチーヌ」という名が。
●ロケットの打ち上げに驚く博士のポーズが違います。
●小にあってBLにない絵。月から帰還したカロリーヌたちと博士の凱旋パレード場面。
●小にはなくてBLにある絵。カロリーヌたちが月で流れ星をテニスラケットで打つという場面。
●文の違い。地球に戻るロケットの中の場面で小では、おつきさまにおわかれのうたを、
 となっているところが、BLでは「つきのひかりに」という曲名も記されています。

最近のBL版のカロリーヌシリーズは昔のカロリーヌの絵本とは大分絵のタッチが違いますが、
幸い、この月旅行のお話の絵はほとんど同じテイストです。
小学館版を持っている方はBL版も買って照らし合わせると一層楽しめるでしょうし、
小学館版が恋しいけれど入手できないという方はBL版でも充分満足できるはずです。

 

 

Caroline en Russie Caroline en Russie
Pierre Probst

Hachette 1993-01-01


←こちらはカロリーヌがロシアに行く話。
入手したいのですが本国フランスですでに絶版だとか。

See details at Amazon by G-Tools

 


(2009.3.29追記)このカロリーヌがロシアに行く絵本、ゲットしました。詳しくは2009.3.29の記事に
カロリーヌ前編ほか【宇宙へ行った人気キャラクターシリーズINDEX】はこちら

(2014.9.17追記)
月をデジカメで撮りましたのでフラカストリウスの写真をアップします。

この満月画像の黄色い丸のところがフラカストリウスです。
Moon20140909_1854ese_148th_short_05

アップで。
Moon20140913_0416ssw_2_182_short_fr
少し色が濃くて、丸くつるんとしてみえるところが
「神酒の海」です。

その下にくっついたようにみえる小さな丸い部分が
「フラカストリウス」。


ペイントで記してみます。
Moon20140913_0416ssw_2_182_short__2

マニアックなクレーターの名前を、子供の絵本で取り上げるのが面白いです。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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