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2008年12月20日 (土)

浅田真央のショートのドビュッシーの「月の光」の戯れ

フィギュアスケートの浅田真央のプログラム「月の光」をみていたら、
ドビュッシーはどんな月をイメージしてこの曲を作ったのか気になりました。
満月それとも三日月? 
夏の月、それとも冬の月? 
空に浮かぶ月、それとも水面にゆらゆら揺れる月の光?

早速調べてみると・・・

クロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy)の「月の光」 (clair de lune)は1
890年に作曲された『ベルガマスク組曲』の中の1曲。

生まれた背景には2説あるようですね。
一つは、当時、イタリア留学をしていたドビュッシーがベルガモ地方を訪ねたところから生まれたというもの。
ベルガマスクとはフランス語で「ベルガモ風の」という意味なのだとか。
もう1説は、ヴェルレーヌの詩「月の光」に着想を得たというもの。
この詩の中に「ベルガマスク(bergamasques)」という単語も出てきます。

ドビュッシーはヴェルレーヌの詩が好きだったようで、
実際にこの詩「月の光」に曲をつけて、歌曲も作っています(メロディーはまったく別物)。
また、「月の光」の一篇が納められている詩集『艶なる宴』の9篇を歌曲に仕上げているところから、
「月の光」の詩に着想を得て、というのも充分納得でいます。

ヴェルレーヌの「月の光」。こんな詩です。野村喜和夫訳で。


あなたの魂は選びぬかれたひとつの風景、
とりどりの仮面や舞踏に眩惑はつのるけれど、
リュートを弾きながら踊りながら、
その夢幻的な仮装の下は、ほのぼのと悲しい。

短調の調べに乗せて、
恋の勝利とわが世の春を歌いながらも、
自分たちの幸福を信じてはいないようだ、
その歌は月の光に溶けてゆく、

悲しくて美しい静謐な月の光に、
するとその月の光は、木々の鳥たちを夢見させ、
噴水をうっとりとすすり泣かせる、
大理石に囲まれてすらりと吹き上がる噴水を。


この詩だけだと、満月か三日月かどんな月かはわかりませんね。

『作曲家 人と作品 ドビュッシー』松島麻利著(音楽之友社)では《ベルガマスク組曲》についてこんな記述が。


1900年から01年にかけて出版されたドビュッシーの管弦楽曲《夜想曲》に掲載の広告では、
曲の内容が<前奏曲><メヌエット><感傷的な散歩><パヴァーヌ>となっていた。(中略)
つまり最初に掲載された第三曲<感傷的な散歩>が<月の光>に、
第四曲<パヴァーヌ>が<パスピエ>となった。(中略)
イタリアの町ベルガモの形容詞「ベルガマスク」は、そこの舞曲を指すといわれる。
そして前述の通り、ヴェルレーヌの詩「月の光」に出てくる言葉でもあり、
ワトーの雅宴画とヴェルレーヌの詩の世界-
--とりどりの衣装をつけた男女とイタリアのコンメディア・デラルテの登場人物たちが織りなす雅な宴---
が曲想の根底にあるのだが(以下略)


「月の光」はもとは「感傷的な散歩」というタイトルだったようですね。
そして、ヴェルレーヌの詩「月の光」が生まれた着想にワトーの絵があるのだとすると。

こちらが、アントワーヌ・ヴァトーの「イタリア喜劇の恋」というタイトルの絵。

Jeanantoine_watteau_love_in_the_ita

ヴェルレーヌが着想を得たのがヴァトーのこの絵だとすると、
月は半月と満月の間、月齢10~12ぐらいにみえます
(もしくは雲が少しかかった満月)。

ドビュッシーはオディロン・ルドンとも面識があったそうですし、
具体的に何に着想を得たということを抜きに、月の光誘う夢想的な世界は好きだったのかなと。

ただ、私がいくつか見たドビュッシーに関する本では、
ドビュッシー自身が、月に対して、楽曲「月の光」の言われに関して具体的に語っているものはみつけられませんでした。

ところで、『音楽のためにドビュッシー評論集』杉本秀太郎訳(白水社)の中に面白いものをみつけました。
ドビュッシーが「ジル・プラス」に1903年3月23日に寄稿した原稿の中で、サン=サーンスの「死の舞踏」に触れているのです。


このコンサートではサン=サーンスの『死の舞踏』も演奏された。
私はこの交響詩については、旧友クローシュ氏と同意見である。
一種の感動なしにこの曲を聴いたことはない、と彼はいう。
しかもその感動は、回顧の情を誘うからといって、その値打ちが下がることもない感動なのだ、といっていた。
リズムと太鼓のおもしろさがあればこそ、この曲は不思議な生彩を失わないのだ。



あの世でドビュッシーとサン=サーンスも、
二人の天才少女による「月の光」vs[死の舞踏]をびっくりしながら、楽しんでいるかもしれませんね。

さて、私の一押しの♪「月の光」をご紹介しましょう。

①ウォン・ウィンツァンによるピアノ。浅田真央のプログラムの「月の光」よりゆっくり。
繊細なピアノの調べが月の光のようにおごそかで叙情的です。アマゾンではこちら。

CLASSIC PIANO(1


試聴は、ウォンさんの「SATOWA music」のサイト内(ttp://www.satowa-music.com/cd/cd-debussy.html)で。
購入もできます。

②ハーブ・オオタ(OHTA-SAN)によるウクレレ。ぽろんぽろんとした音色が夢見心地。
澄んだ月の光のようで素敵です。
南国の月

 

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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