星のささやきシリーズ(その1)ロシア語編
まだ先のお話ですが、
来冬(2009年11月終わり)にプラネタリウムでコンサート+星の話イベントをおこないます。
昨年、プラネタリウムで「星のいのち 星のゆりかご」を一緒させていただいた
ピアニストのササマユウコさんと再び。
そして、南シベリアのトゥバ民族音楽演奏家の等々力政彦さんとコラボさせていただきます。
今から楽しみです。
さて、シベリアというと真っ先に浮かぶ言葉があります。それは「星のささやき」。
最初に知ったのは、10年ほど前、『地球の歩き方99~00 ロシア編』の中でした。
シベリアの紹介コーナーで
夜になると、さらに気温が下がる。
深夜、戸外に出ると、ササ、ササ、というかすかな音が聞こえる。
大気の中の、目に見えないほどの氷の結晶がくっつきあって、地上に降りてくるのだ。
地元の人たちは優雅にもこれを「星の囁き」と名付けている。
と書かれていたのです。
ロマンティックな表現!
原文マニアとしてはこの原語を知りたくなったのですが、
とっかかりがないままほったらかしていました。
PCを持ち始め、ロシア語の勉強も進んでから、
少しずつ、思い出したように「星のささやき」追跡をはじめました。
そこで、まだ、途中ですが第一弾としてブログでアップします。
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日本で「星のささやき」をポピュラーな言葉にした本といえば『宙の名前』林完次著(光琳堂出版/1995)でしょう。
「星のささやき」について
東シベリアのヤクートでは、厳冬期、氷点下50度に下がることがあります。
大気中の水分は結晶となって霧氷が発生しますが、人の吐く息さえも凍ってしまいます。
そのときかすかな音がするそうです。これを星のささやきといっています。
と書かれています。
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ヤクート(якут)の公用語はロシア語とサハ語(ヤクート語)。
そこでロシア語を調べてみました。
「星のささやき」はロシア語でшёпот звёздであることがわかりました。
шёпотがささやき。звёздが星たちの、という意味。
発音はショーパト・ズビョースト。
「ト」と書いてますが、ト(ゥ)に近いですね。
英語でcatのtと同じように、オの母音は付けません。
ロシアの検索エンジンで「шёпот звёзд якут」で検索すると658 件ヒットします。
(2009.1.29現在)。
その多くのサイトが、ヤクートでマイナス50度ぐらいになると息もすぐに凍る。
その時のかすかな音をヤクートの人たちは「星のささやき」と呼んでいると紹介しているものの、
「サハ語(ヤクート語)では~と言います」とは紹介していません。
私自身、サハ(ヤクート)の知人がいるわけではないので、
・サハ語の原語があるのか
・サハの人たちは本当に「星のささやき」と呼んでいるのか
・いつの時代から言われてきたのか
・どのくらいポピュラーな表現なのか
などは確かめきれていません。これらに関してはもっと情報を得てから改めて。
ですので、サハの人たちが「星のささやき」と呼んでいるかは保留にして
(2013.4.1追記 サハ語の「星のささやき」がわかりました。その16をご覧ください)、
ロシアでいつぐらいから「星のささやき」が知られるようになったのかを追ってみました。
<ロシアでは>
たとえば、気象を扱うサイトMeteoweb.ruでは、
一部の地域の特異な気象現象の紹介ページ(http://meteoweb.ru/phen022.php)で
星のささやきについて、
Якутиии других местах с очень холодной зимой,
где температура воздуха понижается до 45o и ниже, воздух, выдыхаемый человеком,
мгновенно замерзает с особым характерным звуком,
несколько напоминающим шорох пересыпаемого зерна.
Этот треск якуты называют ”шепотом звезд”.
という記述が。訳してみますと
ヤクートなどの、冬に気温がマイナス45度を下回るような極寒の地域では、
人の息もさらさらという音を立てて、瞬時に凍る。
この音をヤクートの人たちは「星のささやき」と呼んでいる
というような内容です。
最近では、метео гидという気象専門サイトでは、2008年12月 14日の
「ヤクートではマイナス50度のマロース(ロシア語で極寒のこと)」
というタイトルの記事の中に「星のささやき」についての記述が。
ヤクートは次週マイナス50度ぐらいのマロースになることが予測される。
このくらいの低温だと「星のささやき」が聞こえるだろう。
気温がマイナス45度を下回る時、人が吐く息は瞬時に凍る。
この時にさらさらと立つ音をヤクートの人たちは「星のささやき」と呼んでいる。
ということが書かれています。
<ロシアでいつぐらいから?>
ロシアでいつぐらいから「星のささやき」という言葉が伝えられはじめたのでしょうか。
ロシアのサイトで興味深い一文をみつけました。
「星のささやき」を最初に文献として記述したのはニコライ・レスコフ(Николай Семенович Лесков)で、
その著書は「На краю света(ナ・クラーユ・スヴィエタ)」と紹介されていました。
ニコライ・レスコフ(1831-1895)はロシアの作家。
「ナ・クラーユ・スヴィエタ」は1875年の作品でタイトルは「世界の果てで」という意味。
ロシアのサイトで、ありがたくもこの本の原文が閲覧公開されていたので見てみました。
シベリアが舞台の物語。
私が目を通したところ、「шёпот звёзд」の言葉は発見 できていません。
ネットで公開されているのが全文ではなかったのか、もう少し丹念にみてみようと思います。
(2013.3.3追記。星のささやき現象について書かれていました。詳細はその12をご覧ください)。
でも、別の文献を見つけました。
それは遠洋航海の船長で作家のコンスタンチン・バディギンКонстантин Сергеевич Бадигин(1910-1984)が
1956年に発表した著書「Путь на Грумант(プーチ・ナ・グルマント)」。
グルマントへの道という意味。
グルマントというのは北極圏にあるスピッツベルゲンのロシアでの呼び名です。
この本の第八章「ПОЛЯРНАЯ НОЧЬ(ポーリャルナヤ・ノーチ/極地の夜の意味)」 に
「星のささやき」が出てくるのです。
ざっくり訳してみますと、
厳しいマロースの夜、オーロラを見 た時に、
カチカチと鉄砲を鳴らすような(словно из ружей щелкает)音がした(Трещат)という会話のあとに。
ヤクートの人たちは昔から晴れたマロースの夜に聞こえるこれらのざわめき(шумы)に気づき、
「星のささやき」と呼んでいた。
ざわめきは厳しいマロースの時に起こり、オーロラや星によって生じる音とみなされていた。
まもなく、すべては人間自身の息によって生じるものであることがわかった。
吐く息の中の蒸気が凍る時、静けさの中では
時々はっきりと、さらさら、カサカサ、ぱちぱちと弾ける(шуршит, потрескивает)音が聞こえるのだ。
辞書でみると、音はさらさら、カサカサよりもぱちぱちなのかなっと思います。
Трещатも暖炉の火が燃えたり、氷が割れてきしむ音などを表現する言葉のようです。
これを読むと、サハの人たちは吐く息が凍った時の音には古くから気づいていたけれど、
その音源は星やオーロラにあると思っていたのでしょうか。
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星のささやきについて近日第二弾をお送りします。
あくまでも私自身が文献をネットや図書館で調べ、私自身による訳でご紹介しています。
今後、加筆修正もありますので、無断転載はご遠慮ください。
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