星のささやき---その4.ロシア語編第三弾ザハールの物語
「星のささやき」が頭の中でずっとループしています。
バレンタインチョコ売り場でメリーチョコレートのキャンディインチョコレートを試食しました。
ホワイトチョコの中のキャンディが弾けます。
ドンパッチみたいに、口の中でパチパチ!
思わず「星のささやき」ってこんな音だったのかなあ、なんて思いました。
さて、ロシアのサイトで「星のささやき」を追っていたら、
Захар Загадкин(ザハール・ザガトキン)という名前を目にしました。
作家ミハイル・イリーン(Ильин Михаил)の作品に出てくる主人公の見習い水夫であることがわかりました。
その作品名は
『Воспоминания и необыкновенные путешествия Захара Загадкина(
ザハール・ザガトキンの回想記と不思議な旅行記)』
ソ連で1976年に出版された児童文学のようです。
ザハールが世界の大陸や海を回った回想記と旧ソ連邦を巡る旅行記の構成。
90章を超えるザハールの体験記のそれぞれに学者の卵であるФома Отгадкинによる注釈が添えられています。
この物語の章の一つで星のささやきについて述べられています。とても面白いです!
この本の解説は次回にして、
今日は本文を抜粋(私による訳はオリーブ色。要所要所、対応する原文を青文字で)してご紹介します。
【О чем шепчут звезды? (何を星はささやいているのか?)】
僕は星のことは前から知っている。
まだ4年生だった時、地理の先生から特に明るくて目立つ星たちがなんと呼ばれているのか聞き出したのだ。
晴れた夜には、空を覗きたくて、望遠鏡にまっしぐら。
僕が遠くの天体に興味があることに気づき、
先生は僕が天文学者になろうとしていると思い、星図を貸してくれた。
空はにぎやかな動物園であることがわかって、ものすごく驚いた。
星図には、きりん、獅子、へび、一角獣、くじらにいるか、うさぎにとかげ、鷲、さそり、その他いろんな動物が並んでいた。
なぜ、星座に動物の名前が使われているのだろうか。
獣にしても鳥や魚にしてもちっともその形に似ていないのに。
この名付けははるか昔におこなわれたことを知った。
古代の天文学者たちは自分たちの思いのまま、
星が作るいろんな形をグループ化して、
それぞれにファンタジックな名前をあてはめたのだ。
そして、それが僕たちの時代まで受け継がれているのだ。
古代の人が思い思いの輪郭を星座にあてはめたように、
僕は大熊座のしっぽの代わりに掘削機、白鳥座の代わりにジェット機、おおいぬ座の代わりにトラクターなどなどをあてはめてみた。
これらの機械やメカニックなものは、古代の天文学者が星座に名前をつけた頃にはまだ発明されていない。
改名させるには遅すぎるし、その必要もないのが残念だ。
僕は天文学者にはならなかった。
でも、星々を海上での船の位置や進路を確定するために活用している。(中略)
4年ほど前、驚くべきことを知った。
星たちはひそひそおしゃべりをしているというのだ。
しかも、望遠鏡無しで肉眼で星を見るように、どんな人も特別な聴覚器を使わずにそのささやきを聴けるという。
僕たちの国のいくつかの場所で、特に注意を払うこともなく星のささやきを聴くことができるのだ。
最初、僕はこれはフィクションだと決めつけた。
星たちは地球から100兆kmあまりも離れたところにある。
ほどなく、僕は星のささやきについて書かれた1冊の本を読んだ。
そして2冊目、3冊目を。
そして僕は星のささやきを聴いたという人を探し始めた。長い間、捜索は収穫なしだった。
①だが、ついに幸運にも僕は若い地理学者に出会った。
彼は「そうだよ。私は星のささやきを聞いたよ! 興味深い自然現象だ」と語った。
②「星たちは何語でささやいているのですか?ロシア語?」
「私は外国語には精通していないのだが、知人のフランス人が星のささやきについて話してくれた。
彼はロシア語はほとんどわからない。
ということはどの国の人もその母国語で星のささやきを聞いているのだろう」と地理学者は答えた。
「星たちはどんなことをささやいているんですか?」
地理学者は僕に教えてくれた。数年前、彼の探検隊が遠いヤクート共和国の北方の上流で調査していた時のことを。
「そこでは、冬は気温は氷点下70度まで下がり、それ以外の季節も決して暑くはならない」
「知ってます。知ってます。あなたは寒極にいたんですね」と僕は叫んだ。
「まさにその通り。君は寒極をどんな風に知っているのかね」
「あなたの言葉は不思議です。
③北半球でマイナス70度まで下がったのは寒極だけ。そこはインディギルカ川上流にあったのですね」
④「そうだよ。まさに私はそこで星のささやきを聞いたんだよ」 (以下略)
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【Фома Отгадкинによる注釈】
例によって、ザハールは肝心な説明を忘れている。
「星のささやき」とはいったい何か?
私は意図あってこの2つの言葉を「」付きで取り上げる。
⑤「星のささやき」は空の天体とはまったく関係がない。
星々---真っ赤に自然発光する巨大なガス状の球体は、もちろんささやくことができない。
⑥「星のささやき」は北東シベリヤやヤクート共和国での音響的な現象に名付けられたものだ。
晴れたマロース(氷点下の厳しい寒さ)の夜、
気温がマイナス40度~50度に下がる時、人の呼気による蒸気は凍り、ごくこまかな氷晶となる。
⑦氷晶が霜となって下降する時、互いに触れ合って砕けて、かすかにたえまなく、さらさらという音を立てる。
人間がかすかに聞けるほどのさらさらカサカサという音だ。
ザハールが会った地質学者は北半球の寒極であるオイミャコンで「星のささやき」を聞いた。
そのインディギルカ川上流は高価な鉱物の産地だ。
(以下、この厳寒で肥沃ではない大地で生きるソ連の若者について書かれていますが略)
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この本で「星のささやき」はかなり詳しく述べられていますね。
ザハールが会ったインディギルカ川上流で星のささやきを聞いたという若い地理学者。
シチュエーションからセルゲイ・オブルチェフの1926年~の遠征が重なります。
当時35歳。彼がモデルなのかも、と推測。
①Наконец мне посчастливилось встретить молодого геолога, и тот сказал:
-- Да, слышал! Любопытнейшее явление природы...
②О чем же они шепчут? Геолог сообщил мне,
что несколько лет назад его отряд работал далеко на севере Якутии,
в верховьях горной реки. В зимние дни температура падала там до 70 градусов ниже нуля,
в остальное время года тоже было нежарко.
③До семидесяти градусов температура падает в северном полушарии только на полюсе холода.
А он как раз находится у верховий горной реки Индигирки.
④ -- Правильно, -- подтвердил геолог. -- Именно там я слушал шепот звезд.
⑤«Шепот звезд» не имеет никакого отношения к небесным светилам.
⑥«Шепотом звезд» называют звуковое явление, наблюдаемое на северо-востоке Сибири и в Якутии.
В ясную морозную ночь, когда температура воздуха падает до 45—50 градусов ниже нуля,
пар от дыхания человека замерзает и превращается в тончайшие ледяные кристаллики.
⑦Осаждаясь инеем, задевая друг друга и ломаясь,
эти кристаллики издают слабое непрерывное шуршание, еле уловимый шелест.
※丸数字は私が原文との対応のために付けたもので、原文にはありません。
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コメント
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私には、いつかemiさんが
星のささやきを聴きに、旅に行くような気がして
なりません。^^
でも遠くまで行かなくても、emiさんになら
もしかして聞こえるような気もします☆
投稿: おんぽたんぽ | 2009年2月14日 (土) 16:36
おんぽたんぽさん。
いつか星のささやきを聴きにいく旅したいです~
マイナス50度の世界ってどんなだろうって。
温暖なところに住んでいて寒さに懲りていないからかもしれませんが。
投稿: emi | 2009年2月14日 (土) 22:01