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2009年2月28日 (土)

星のささやき---その9.「寒極シベリア」岡田安彦著に発見が

「星のささやき」について、調べている最中のことをほぼリアルタイムで書いているので、
いろいろあちこちにとびます。今回、マニアックになりますが、
今までロシア編で取り上げてきたこととかなりリンクしてわかる資料がみつかりましたので、
私としては大収穫(^。^)v
ご興味のある方、どうぞおつきあいのほどを。
Nekoashiatojpg

掘り出し物の本。
それは、1975年出版の『寒極シベリア』岡田安彦著(世紀社出版株式会社)。

岡田氏は毎日新聞社の記者。1965年に寒極ベルホヤンスクを訪ねた人です。
1966年に「世界でいちばん寒い国-日本人はじめて“寒極”へ行く」岡田安彦著(講談社)を出版。
(この本は拝読していましたが、「星のささやき」はでてこず)。

ですが、『寒極シベリア』ではかなり詳しく知ることができました。
この本、岡田氏の体験を巻頭に書かれていますが、
その後の「寒極」というタイトル以降はロシア語の本、
Полюс Холода(ポーリュス・ホーラダ)』の岡田氏による全訳なのです。
この中に星のささやきがでてきます。

まず、この『Полюс Холода』がどんな本かについて、あとがきから引用します。
(引用部分は青文字)


Polushkholodabook
↑ネットで原書の表紙をみつけました。

本書の「寒極」は、ウェルホヤンスクで気象観測を開始した100周年を記念して、
1972年に水理気象出版所(レニングラード)から刊行された、
ニコライ・ヤコブレビッチ・フィリポビッチ著「寒極」の全訳である。
同書は「ウェルホヤンスク測候所とその歴史」という副題がついている。


『寒極シベリア』から興味深いところを抜粋&私の解説。

p179~

寒極オイミャコンの歴史について、
ヤクートの詩人であるS・ダニロフの詩<オイミャコン>によって知ることは
興味のないことではなかろう。

  ここでは太陽が冷却してしまう。
  涙も一瞬のうちに砕片のようになってしまう。
  呼吸もサラサラと音をたてている。


呼吸もサラサラと音をたて・・
タニロフは「この現象を星のささやき」と呼ぶまでは言及していませんが、
まさに「星のささやき」現象のことを詩にしていますね。
この詩の原文が知りたいです。

セルゲイ・オブルチェフの1926年の調査のことも詳しく書かれています。

p180~

ウェルホヤンスク山脈中部地区の知られざる土地を探査するため、
地理学委員会は1926年探検家S・V・オブルチェフを長とする調査隊を編成した。
(中略)
オイミャコン盆地には調査隊は11月に到着したが、ものすごい極寒であった。
調査隊が前進するまでの、短い休息時間を利用して、オブルチェフは気象分野の調査をすることにした。
気象観測の実施は、調査隊員の国立モスクワ大学教授コンスタンチン・アレクセーウィチ・サリシチェフにまかせられた。
11月10日、温度計の水銀は凍った。
(気温は氷点下39.4度以下となったのである)
そして夕方には”凍った呼吸”またはヤクート人たちが”星のささやき”と呼んでいるサラサラというかすかな音が聞こえた。
これに基づいて、気温は氷点下50度以下との結論が出されたのである。


寒極がベルホヤンスクかオミャコンか、
1926年のオイミャコンの最低気温の算出がどんな方法だったかについても少してがかりが。

p182~

12月の終わりまでに、調査隊はオイミャコン低地の中心地、トムプトルにやっと到達した。
当時トムプトルには、執行委の建物と病院、
そして学校のほかにいくつかのユルタ、2戸の小教会があるだけだった。

ところで、調査隊が管理しているなかに、肝心なアルコール温度計はなかったのである。
そのかわり、手製のガス温度計および銅温度計があったが、どれも不正確なものばかりだった。
そういうわけで、オイミャコンにおける最初の気象学者サリシチェフは、
氷点下39.4度以下の気温を確実にとらえるのに失敗したのであった。
ところが、オブルチェフは”凍った呼吸”のサラサラという音を聞いて、
ウェルホヤンスクを今まで”マローズの王様”としていることに疑念をいだいた。

上記の文章は、星のささやきその3に私自身が訳して知ったこととリンクしていて、参考になりました。
p182~のことあと
を要約しますと、
オブルチェフがベルホヤンスクよりオイミャコンの方が気温が低く、
寒極に違いないと結論。
この問題を研究するために、
ソ連科学アカデミーが1929年にトムプトルに測候所を開設。
それが奏して、1933年、オイミャコンでの最低気温氷点下68.7度の観測成功につながったことがわかります。

p183のセルゲイ・オブルチェフの訳注。

オブルチェフ セルゲイ・ウラジミロウィチ(1891年生まれ)シベリア、中央アジアなどの探検家として有名な
V・A・オブルチェフのニ男。
14歳でジュンガリ・セミパラチンスク地方調査に父と同行。
モスクワ大学卒業後、主としてシベリア北東部の探検調査に従事する。
それまで知られていなかった同地域の地理・地質調査を行なう。
チェルスキー山脈の存在を確認し、
またアンガラ北部のレナ川とエニセイ川中間地帯に、
広大な炭層の存在を発見するなど、大きな業績を残している。


「星のささやき」を追っていたら、
シベリアの探検家オブルチェフ親子に出会ってしまったわけですが、
彼らのことを知るにつれ、インディー・ジョーンズ親子とイメージがだぶります。

(2013.3.27追記)
フィリポビッチ著『Полюс Холода(ポーリュス・ホーラダ)』のロシア語原書を読むことができました。
詳細は星のささやきその15に。

星のささやきシリーズINDEXはこちら

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  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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