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2009年9月22日 (火)

「真夏のオリオン」を観ました

朝晩、涼しくなり、ずいぶん秋めいてきましたね。
この時期、一番楽しみなのが、目覚めの「オリオン」です。

朝4時40分ごろ、南東の空にオリオンとシリウスがみえます。
毎年、この時期にオリオン座のことについて書いていますが「初秋の早朝のオリオン」は「冬のオリオン」より好きかも。

私がこの夏、最初にオリオン座を見たのは、真夏、8月13日のぺルセウス座流星群の時。
夜明け前の東南東の空に眺めました。

「真夏のオリオン」は、超早起きか夜更かしの人の特典。
夜通し鳴いている蝉の声をBGMに冬の代表的な星座を仰ぐのはオツなものです。
さて「真夏のオリオン」といえば、少し前のことですが
篠原哲雄監督の映画「真夏のオリオン」を観にいきました。
(以下ネタバレあります)

第二次世界大戦終戦前夜の日本の潜水艦vsアメリカの潜水艦のお話。

「静」の映画です。
海面下、潜水艦という密室を舞台。
敵(相手の潜水艦)の存在を、レーダー他で感知しながら、自らの気配をできるかぎり押し殺す。
息をひそめて感覚を研ぎ澄ます、そんな静かで熱い緊迫感にあふれた映画でした。

映画では、「真夏のオリオン」は吉兆のしるしという設定で登場します。
冬の星座の代名詞であるオリオン座が、夏に海上から見えるのは夜明け前のほんのわずかな時間だけ。
そのため船乗りの間では真夏に輝くオリオンは吉兆なのだと。
            
「リスペクト」という言葉が全編に渡って感じられる映画でした。

艦長は部下をリスペクト・・・
倉本艦長(玉木宏)は任務の合間に負傷した部下を見舞います。
一番若い兵にハーモニカを渡したり、関心を持って話かけます。
部下とのやりとりも荒い命令口調ではなく「ですます」調。

いのちをリスペクト・・・
艦長は、死ぬために闘うのではなくて、生きるために闘え、
と魚雷ごと相手の潜水艦に突っ込もうとする特攻兵を制します。

部下が艦長をリスペクト・・・
航海長(吹越満)、水雷長(益岡徹)は艦長より年上なのに、
艦長をきちんと仰ぎ、指示を受ける様子がすがすがしかったです。

敵をリスペクト・・・
倉本艦長とスチュワート艦長との攻防。
互いに洞察力に長けて、相手の能力をリスペクトしていることが伝わってきます。

だからこそ、<リスペクトが窮地を生み出す>という皮肉な展開になっていくのです。
たとえば、亡くなった水雷員の遺体を海中に流す時、水雷員をリスペクト(敬う)する気持ちがあるからこそ、
遺体をぞんざいに扱わず、乱れた服の胸元を直してあげます。
その配慮があだに。スチュワート艦長が倉本艦長をリスペクト(侮らない)しているからこそ、
遺体の整えられた胸元をみて、
倉本艦長のおこなったフェイクに気づいてしまうのです。
     
クライマックス。
海上で両艦長が対峙する場面も圧巻。
夜明け前の海の上に輝く「真夏のオリオン」が効果的に使われています。
「彼らも音楽を愛し、星に希望を託す人間なんだ」。
互いを讃える想いが、<敬礼を交わす>だけで伝わってきました。

声高に戦争を反対するわけでもない。
戦争=空襲でもない。
静かに緊迫が続く映画なのがよかったです。
倉本艦長も、香川照之がやりそうな「ありがち」な熱血な人物像じゃなくて、
やさ男風の玉木宏が演じたのもよかったです。
戦争とは、普通の青年があんな大役を担う状況になるんだ、とかえってリアリティを感じました。

パンプレットの冒頭に
『眼下の敵』の二人の艦長の間の友情のようなものを描けたら
と書いてありました。
私は『眼下の敵』は未観なのですが、まさに、二人の艦長の間に友情を感じました。

第一次世界大戦中のサッカーのエピソードを思い出しました。
イギリス兵とドイツ兵がクリスマス休戦中に、ふとしたことから互いにサッカーをはじめた。
すると、休戦が解けた後、一緒にサッカーを楽しんだ敵兵を思い出して、相手を殺すことを躊躇したという。

サッカー。真夏のオリオン。
敵も同じことに美や喜びを見出し、一喜一憂する同じ人間なんだ。
と気づく心が、世の中を小さなところから変えていくのでしょう。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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