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2010年4月11日 (日)

ブルーウィロー(その2)---ウィローパターンの伝説

ブルーウィロー(Blue willow)。
白い地に青で描かれることが多いのでこう呼ばれますが、
正しくはウィローパターン(willow pattern)といわれています。
青だけではなく、赤で描かれたもの、黒で描かれたもの、緑で描かれたものなどをネットで見ることができます。

さて、この中国的な絵柄には物語があるのです。

いろんなサイトを巡ると、ストーリーの細部は何パターンかありそうです。
このブログでは、イギリスのビクトリア&アルバート美術館とBBC。
この2つのサイトで紹介されている話を素にして、拙訳でご紹介します。

 

 

 


【ウィローパターンの伝説】

昔、裕福な高官が楼閣に住んでいました。
彼にはクーン・セ(Koong-Se)という美しい娘がいました。
クーン・セはある日、父の秘書を勤めるチャン(Chang)と恋に落ちます。
高官は二人の愛を認めず、反対していました。
彼はチャンを解雇し、恋人達を引き離すために、
屋敷のまわりに高いフェンスをめぐらせました。

クーン・セが許されたのはフェンスでさえぎられた水辺までの庭の中を歩くことだけ。
高官は娘を有力な公爵タ・ジンと結婚させようと企てました。
準備は進み、タ・ジンは花嫁を獲得するため、
宝石箱をプレゼントとして携えて、舟でクーン・セの屋敷にやってきました。

一方、チャンは思いをあきらめることはありませんでした。
クーン・セの婚礼の前夜、
召使に変装したあやしい人影が誰にも気づかれずに館に忍び込みました。
チャンでした。
恋人たちは逃げ出して、警報が鳴りました。

二人は走ります。
クーン・セが最初に橋を渡り、
続いては宝石箱を持ったチャン、
その後ろをムチを手にした父親が追いかけます。

二人はついに無事、離れ小島に逃げおおせることができました。
そして、幸せに暮らしました。

しかし、ある日、タ・ジンは二人の隠れ家のありかを人づてで聞きつけます。
今なお復讐に燃えていた
タ・ジンは彼らの元へ兵士を送りました。
兵士はクーン・セとチャンを捕らえ、死にいたらしめました。

天界の神は二人の愛に心を動かし、クーン・セとチャンを鳩の姿に変えます。
空の上で、つがいの鳩は永遠の愛のキスを交わすのでした。

 

 

 

【物語が描かれている強み】
ドラマが一枚の皿の中に描かれているのが素敵だと思いませんか。
(画像はクリックすると大きくなります)
20200917_bluewillow
高官と娘クーン・セが暮らしていたのが右側に描かれた楼閣。
まわりにはたわわに実がなってる木々(りんごともオレンジともいわれています)。
楼閣の左側の小さい建物がクーン・セが閉じこもって過ごしたところのようです。
中央でなびいているのが
ウィロー(柳)パターンという呼び名の元となった柳の木。
手前には、ここまでクーン・セが歩くことが許されたというフェンスがあります。

左手の橋の上には3人の姿。
一番左(先頭)はクーン・セ。
持っているのは糸巻きで貞淑をあらわすともいわれています。
2番目は宝石箱を持ったチャン。
3番目がムチを手にしたクーン・セの父親の高官です。

橋の奥には二人が逃げる舟がみえますね。

左上にはクーン・セとチャンがおだやかな愛の日々を暮らした小島。
そして中央には鳥の姿となって永遠の愛を交わす二人。
お皿を時計まわりに回ってここで物語が終わります。



物語を知って、お皿を眺めると飽きないんです。
まるで、一人読み聞かせ。
右側の楼閣からはじまって、
描かれているアイテムを辿りながら、

二人の物語を頭の中でなぞったりします。


柄を覚えることができるのもいいですね。
実は鳥が描かれていない柄もあるのですが、
あれ、鳥がいない、って気づきました。
ただの柄だったら、
いろんなモチーフが描かれすぎていて覚えられないはずなのに、
物語があるおかげで、
楼閣があってフェンスがあって
柳がなびいていて・・・
と描かれているアイテムを覚えることができるのです。

【登場人物の中国名は】
クーン・セとチャン。中国が舞台であるからには
中国語でどう書くのか知りたいところですよね。
中国で発行されている『装飾』2007年8月号
「19世纪英国“柳树纹样”剖析」という記事の中で、
クーン・セは「孔西」。チャンは「昌」
タ・ジンは「拓晋」と表記されています。
(ネットに残るキャッシュ参照)

「新波博客」というサイト内で
柳樹圖案 Willow Patternについて書かれているページ(
ttp://blog.sina.com.cn/s/blog_4783c8e80100ginr.html)では
クーン・セは「孔瑟」、チャンはおなじく「昌」となっています。

メモ
参照したサイト

・「Victoria and Albert Musem」。
 collectionsの中の「The Story of the Willow Pattern」
(ttp://www.vam.ac.uk/collections/ceramics/audio/willow/index.html)
「Show transcript」をクリック。

・イギリスの「BBC」内のページ
「The Blue Willow Pattern Plate」
(ttp://www.bbc.co.uk/dna/h2g2/A10658289)。

伝説はこちらのサイトにも。
(日本)
・「SIR JAPAN」の「オールドノリタケとウィローパターン(1)」 
(ttp://www.sir-japan.com/column/c2-070416.html)
・「Antiques-web」の「ウィローパターンの伝説」
(ttp://www.antiques-web.com/magazine/m30.html)
(海外)
・「World Collectors Net」の
 「The Willow Pattern」
 (ttp://www.worldcollectorsnet.com/magazine/issue32/iss32p5.html)
・「World Collectors Net」の
 「Minton The Willow Pattern Story」
 (ttp://www.worldcollectorsnet.com/minton/willow.html)
・「thepotteries.org」の
 「The Willow Pattern Story」(ttp://www.thepotteries.org/patterns/willow.html)

※クーン・セはKoong-see、Koong-Sheなどの表記もみられます。

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色 うっとり」カテゴリの記事

コメント

一枚のお皿の中にこのような物語があったんですね。全然知りませんでした。emiさん、すごい!
つがいの鳥がカップルの象徴って、もしかすると西洋的な考え方かもしれません。(はっきり確認していませんが^^;)
中国では二匹の蝶が、この世で結ばれずに死んだ恋人同士を表し、磁器の絵付けなどにも使われます。
紋様のいわれって調べ出すと楽しいですよね♪

シーカンさん。一枚のお皿の中に物語、魅力がありますよね。
「中国では二匹の蝶が、この世で結ばれずに死んだ恋人同士を表し、磁器の絵付けなどにも使われます。」
このこと詳しく知りたいです。今、梁山泊などのお話も調べています。
あと、比翼の連理他、亡くなったあと鳥に姿を変えて仲睦まじく、という発想も中国にはありますよね。もうちょっと時間をかけて確かめていきたいなって思っています。
シーカンさんは文様のいわれを調べられたことがあるのですね。
中国の「美」って素敵ですね。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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