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2010年8月26日 (木)

中国の文献に出てくる「六出」の表現

2010年8月23日のブログでご紹介した通り、中国では紀元前140年ごろに、すでに雪の結晶が六出、すなわち6弁の花状であることが韓嬰によって『韓詩外伝』に書かれたようです。
この『韓詩外伝』中の「凡草木花多五出雪花獨六出」という言葉が、中国で様々な書物に記載されているため、詩などに「六出」という言葉がみられます。

今回は調べてみつけた「六出」の表現をご紹介します。


調べ方は
Ⅰ 大漢和辞典、漢語大詞典などの辞書を見る
Ⅱ 中国のサイトを見る(たくさんでてきます。一部間違いもありました)
Ⅲ Ⅰ、Ⅱでみつけた書物を図書館で見て、実際に記載されているかを確かめる。
Ⅳ 目当ての詩を調べるために手に取った本のページをめくって偶然みつけたらメモ。

の方法を取りました。

まず、「六出」と言う言葉。日本語では「りくしゅつ」と読みますが、中国語では「liùchū」。「リュウチュウ」と発音します。

時代を追って挙げてみましょう(青字は書物から引用部分。詩も文章も関連の場所だけ抜粋)。

①南北朝時代。  ←wobbly古墳時代
庾信(ゆしん/513-581)の詩「郊行値雪」の中で。
雪花開六出 冰珠映九光

②南北朝時代。  ←wobbly古墳時代 

徐陵じょりょう/507-583)の詩「詠雪」の中で。
三農喜盈尺,六出舞崇花

③唐の時代。   ←wobbly奈良時代初期

『初学記』第二巻 天部下 雪二の【詩】の項で
又應衡陽王教詠雪詩,九冬飄遠雪,六出表豐年の記載あり。

④唐の時代。  ←wobbly平安時代

元稹げんしん/779-831)の詩「賦得春雪映早梅」の中で。
飛舞先春雪,因依上番梅。一枝方漸秀,六出已同開。

⑤唐の時代。  ←wobbly平安時代

高駢こうびん/821-887)の詩「対雪」の中で。
六出飛花入戸時,坐看青竹变琼枝

⑥北宋初期。  ←wobbly平安時代

王禹偁 おううしょう/954~1001)の「賀雪表」の中で。
遂令六出之祥,大副三農之望

⑦北宋の時代。 ←wobbly平安時代。
韓琦(かんき/1008-1075)の詩「冬至前一日雪」の中で。
羣陰明数極,六出見花多。

⑧北宋の時代。 ←wobbly平安時代。
韓琦(かんき/1008-1075)の詩「壬子十一月二十九日雪方洽」の中で。
近臘猶慳六出繁,忽驚盈尺及民寛。

⑨北宋の時代。 ←wobbly平安末期or鎌倉初期
『埤雅』 (撰の陸佃の生年没年は1042~1102年なのでこの間の時期に成立)
巻十九 釋天 雹の項で

六出而成華,雹三出而成實の記載あり。

⑩南宋の時代。1270年。 ←wobbly鎌倉時代

『朱子語類』朱熹撰(朱熹(1130-1200)の没後弟子が編纂)

巻二 理氣下 天地下の項で。

雪花所以必六出者、蓋只是霰下、被猛風拍開、故成六出。

巻六十五 易一 綱領上之上 數の項で

如水數六,雪花便六出
如水數六,雪片也六出の記載あり。

⑪元の時代。 ←wobbly鎌倉末期or室町初期

鐘嗣成(約1279-1360 )の詩「四景 雪」の中で。
是誰家剪下瓊花瓣,飛六出遍長安。

⑫元の時代。 ←wobbly鎌倉末期or室町初期

朱庭玉(生年没年不明)の詩「越調 天净沙 冬」の中で。
門前六出狂飛,樽前萬事休提,爲問東君信息

⑬元の時代。 ←wobbly鎌倉末期or室町初期

唐毅夫(生年没年不明)の詩「怨雪」の中で。
不呈六出祥,豈應三白瑞

・上記の作品がどのくらい有名なのかわかりませんが、中国では雪の結晶が六弁の花であることを詠った詩がずいぶん昔からあることがわかりますね。
・もちろん、みつけられなかっただけで、雪の表現に「六出」という言葉を使った作品は上記以外にもあるのかもしれません。

※私の方で、一部、中国語で簡体字で書かれているところをなじみの漢字に入力しなおしています。

上記の資料の詳細編です↓(青字は引用部分)

①庾信の詩「郊行値雪」。

『庾信 〔中国の詩人 4〕』/興膳宏著/集英社 1983 のp169に読み下し文、日本語解説あり。抜粋で。

風雲倶惨惨、原野共茫茫。雪花開六出、冰珠映九光。
風雲 倶(とも)に惨惨(さんさん) 原野 共に茫茫(ぼうぼう)
雪花 六出(りくしゅつ)を開き 氷珠(ひょうしゅ) 
九光に映(は)ゆ

この詩の解説文から以下抜粋。
風と雲はともに暗く、原と野はともに果てしない。雪の花が六つの花弁を開き、氷の珠が九光の灯さながらに照り映える。「六出」は、雪の六角形の結晶をさす。

②徐陵の詩「詠雪」は
『徐陵集校箋  第一冊〔中國古典文學基本叢書〕』/徐陵撰/中華書局  2008 p131より抜粋。
注釈として、
六出:《初学記》巻二引《韓詩外傳》:「凡草木花多五出,雪花獨六出。」の記載あり。

③『初学記』にでてくる【應衡陽王教詠雪詩】九冬飄遠雪,六出表豐年の詩は、
陳の張正見によるもののようです。

④元稹の詩「賦得春雪映早梅」は
『增订注释全唐诗 第3冊』/主编陈贻焮/文化藝術出版社 p142より抜粋。
注釈として、
六出;雪花,結晶呈六出花瓣形の記載あり。

⑤高駢の詩「対雪」は
『增订注释全唐诗 第4冊』/主编陈贻焮/文化藝術出版社 p349より抜粋。
注釈として、
六出:雪花的結晶為六角形,称六出の記載あり。

⑥王禹偁の「賀雪表」は
『小畜集 第五巻〔四部叢刊;集部〕』 /王禹偁撰/商務印書館より抜粋。

⑦韓琦の「冬至前一日雪」は
『全宋詩 第六冊』/北京大学古文献研究所編/北京大学出版社 1992
〔全宋詩 巻三二五 韓琦八〕p4036より抜粋。

⑧韓琦の「壬子十一月二十九日雪方洽」は
『全宋詩 第六冊』/北京大学古文献研究所編/北京大学出版社 1992
〔全宋詩 巻三三四 韓琦十七〕p4095より抜粋。

⑩『朱子語類』巻二は
『朱子全書 第14冊』/上海古籍出版社より抜粋。

『朱子語類訳注(巻1~3)』/汲古書院 2007 p180~181にこの部分の日本語訳、解説があります。


雪花所以必六出者、蓋只是霰下、被猛風拍開、故成六出の【訳】はこう書かれています。
雪の花が必ず六角形であるのは、おそらく霰が降るときに、強風にたたかれて、それで六角形になるのであろう。
【注】はこう書かれています。

雪花 雪の結晶を花に例えた言い方。『韓詩外伝』に「凡草木花多五出、雪花獨六出。雪花曰霙」とあるように、古くから雪の結晶が六角形であることが知られていた。朱熹は雪の結晶が六角であることを天地自然の定数の代表として取り上げている。
その後巻六十五の六出の記載が紹介されています。

⑪鐘嗣成の「四景 雪」は
『全元散曲 : 广選・新注・集評 (上巻)』/
吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000 p844より抜粋。
注釈として 
六出:雪花六出,即六個瓣,因此雪花的別称為六出の記載あり。

⑫朱庭玉の「越調 天净沙 冬」は
『全元散曲 : 广選・新注・集評 (上巻)』/
吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000 p1125より抜粋。
注釈として 

六出:即雪花。花開六瓣的叫六出。雪花是六角形的結晶,所以称六出。《韓説詩伝》:"凡草木花多五出,雪花独六出。”の記載あり。

⑬唐毅夫の詩「怨雪」は
『全元散曲 : 广選・新注・集評 (上巻)』/
吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000 p1115より抜粋。
注釈として 
六出:雪花,因其結晶為六角形の記載あり。

【雪の結晶の文化】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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emi (秋田恵美)

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。
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