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2010年9月 2日 (木)

中国で雪を「六花」と表現した作品

中国では雪の結晶が六角形であることが紀元前!
にすでに本に書かれ、そのことが400年代からいくつもの書物に転載されています。
そのため、
中国ではかなり昔500年~1200年代(日本で古墳時代~鎌倉時代)にいくつもの詩で
雪の結晶が六角形であることからついた雪の異名「六出」「六出花」「六花」がつかわれているのです。


26日は「六出」、28日は「六出花」という言葉が使われた作品をご紹介しましたが、今日は「六花」をとりあげます。

「六花」は中国語では「liù huā」。「リュウフア」といいます。

 

①唐の時代。 ←平安時代
賈島(かとう/779-843)の詩「寄令狐綯相公」の中で。
自著衣偏暖,誰憂雪六花

②北宋の時代。 ←平安時代。
歐陽修(おうようしゅう/1007-1072)の詩「賀九龍廟祈雪有應」の中で。
朝雲九淵闇,暮霰六花繁。

③北宋の時代。 ←平安時代。
韓琦(かんき/1008-1075)の詩「雪」の中で。
六花来應臘,望歳一開顔。

韓琦の詩「壬辰歳除喜雪」の中で。
祈雪経冬未應人,歳除方喜六花匀。

韓琦の詩「元日雪」の中で。
遥想九天排暁仗,六花吹入萬年觴。

韓琦の詩「喜雪」の中で。
昨夜同雲徹暁陰,雪牀軽襯六花深。

韓琦の詩「望宸閣雪後」 の中で。
重陰初釈六花残 試倚危欄一望看。

韓琦の詩「至節筵間喜雪」の中で。
至節開樽就席前,六花飛舞助賓筵。

⑨南宋の時代。 ←平安後期~鎌倉初期
楼鑰(ろうやく/1137-1213)の詩「謝林景思和韵」の中で。
黄昏門外六花飛 ,困倚胡牀醉不知。

⑩元の時代。 ←鎌倉時代。
盧摯(約1243-約1315)の「〔中呂〕朱履曲」の中で。 
雪中黎正卿招飲,賦此五章,命楊氏歌之。
数盞後兜回吟興,六花飛惹起歌声,東道西鄰富才情。


⑪元の時代。 ←鎌倉~室町初期。
無名氏(作者不詳の意味)の劇『雑劇 漁樵記』第二折の中で。
我則見舞飄飄的六花飛。

⑫明の時代。 ←室町以降。
馮夢龍編著の話「灌園叟 晚逢仙女」の中で。
隆冬天氣,彤雲密布,六花飛舞,上下一色。

 

 

多くの詩人の詩がある中でみつけられたのはこのくらいなので、
雪の結晶=6弁の花であることがどのくらい人々の知識として浸透していたのかはわかりませんが、
「六花」という表現がこんな風に使われていたわけです。

「六花」が日本に伝わって雪の結晶を「むつのはな」と呼ぶことにつながっていったのかも
しれませんが、それはまた次回で。

上記の資料の詳細です↓(青字は引用部分)。

①『賈島集校注』/齊文榜校注 人民文學出版社 2001 p310より
注釈として
雪六花:雪花六瓣,亦稱六出花,六出公。宋之問《奉和春日玩雪應制》:「瓊章定少千人和,銀樹長芳六出花。」
の記載あり。

②『歐陽修全集 第三冊〔中国古典文学基本叢書〕』/李逸安點校 中華書局 2001 
〔巻五十六居士外集 巻六〕p795より抜粋。

③~⑧はいずれも『全宋詩 第六冊』/北京大学古文献研究所編/北京大学出版社 1992より抜粋。
韓琦は雪を題材にして、六出、六花と表現した作品をいくつも発表していますが、③の「雪」が一番有名みたいです。

③は〔全宋詩 巻三二三 韓琦六〕 P4009より。
④は〔全宋詩 巻三二三 韓琦六〕 P4019より。
⑤は〔全宋詩 巻三二五 韓琦八〕 P4037より。
⑥は〔全宋詩 巻三三〇 韓琦十三〕P4067より。
⑦は〔全宋詩 巻三三一 韓琦十四〕P4074より。
⑧は〔全宋詩 巻三三四 韓琦十七〕P4090より。

⑨は『全宋詩 第47冊』/北京大学古文献研究所編 北京大学出版社 p29433より

⑩『全元散曲 : 广選・新注・集評 (上巻)』/吴庚舜, 呂薇芬主编 辽宁人民出版社l  2000 p188より抜粋。
注釈として、六花:雪花の記載あり。

⑪『元曲選 第三冊』/臧晉叔編 中華書局 p864より抜粋。
私メモ:『漁樵記』の正式タイトルは朱太守風雪漁樵記かも。
    第二折は第二場の意味

⑫『醒世恆言 上』/馮夢龍編著 作家出版社 1956 p79より抜粋。
「灌園叟 晚逢仙女」は「醒世恆言の第四巻(全40話の4話め)の作品。

この作品は「花造りの翁」という題で日本語に訳されています。
上記の箇所は
厳しい冬になると、あかい雲が、ぎっしりと敷きつめ、雪がちらつけば、天も地も一色になる。
と訳されています。「六花」=「雪」と訳されているわけですね。
「花造りの翁」は『醒世恆言 〔全訳中国文学大系 第一集第十巻〕』/塩谷温監修 東洋文化協会 1958 p165より抜粋。

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コメント

秋田恵美様

はじめまして。志波まいこと申します。
現在、大学の夏期課題で「六花」という言葉について研究しております。
私は日本国内で使用されている例を挙げながら課題を進めています。
中国の詩の中で使用されているという視点がとても面白く、ぜひ参考にさせていただきたいと思います!

志波まいこさん。はじめまして。
六出についてお調べになっていらしたのですね。
私の方では近日日本語編をアップする予定です。

中国の文献で使われている「六出」「六花」は私が現物を確かめていない資料がもう少しあるのです。こちらも近日、加筆アップする予定です。

今年は酷暑ですが、雪の結晶を思い浮かべながら「六出」という単語を追っていると少しだけ清涼感をかんじられましたよね!
ぜひ課題、うまくいかれますように。

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  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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