2010年12月グランプリファイナル
フィギュアスケートのグランプリシリーズについて。
【ショート&フリー】
高橋大輔/ぐっときました。
氷に愛されている、氷を愛している、観客が見守るリンクで滑ることを
愛している、そんな雰囲気が体全体から伝わってきます。
何より「ため」がうまい!音楽にのって、
やわらかくしなやかに踊って舞って、そしてフッと緩急をつけて
体を動かす。音楽に乗る心地良さがこちらにも伝わってきます。
フリーではムーンウォークみたいに後ろに滑っていくのが、
手をもがき、焦がれるような雰囲気を出して
音楽ともぴったり。
「音」という女性と身体を絡めてダンスする。
そんな天賦の才能を感じます。
鈴木明子/フリーも素晴らしかった。
一つのミスはあっても素晴らしくて思わずテレビをみながら拍手。
スラブっぽい雰囲気を作り出すステップ。
片足の足の甲をぴっと挙げるポーズとか。
高橋大輔と鈴木明子は踊る歓びが体の中から溢れでている、リズムが体の奥から生まれていると感じます。
頭が棒にならずに、リズムをくっくっと刻んでいるようにみえます。
村上佳菜子/快挙ですね。
高橋大輔と鈴木明子がぐぐっとくる演技なら、
村上加奈子はぞくぞくっとくる演技。
はちきれんばかりの若さ。
恐ろしいほどの重圧をはねかえす強さはどこから生まれるものなのでしょうか。
彼女も天性の踊る魂を持っていますね。飛距離のある豪快なジャンプも見事。
特に印象的だったのがスピンとスパイラルの最後。
持った足を下ろす時に手ぶらになった手がそのままスムーズに感情表現といいますか
曲調に乗った演技となっていているのです。
隙がないプログラムであると同時に彼女のこまやかな表現力を感じます。
ステップも剣さばきをしているような、非常に男性的。
最後のスピンはこの大会のどの選手のどの場面よりもぞくぞくしました。
足を持ち上げ2段階ぐらいで高く上へと挙げるのですがその上げ方が非常にアグレッシブ。
まるで剣がシャキーンと伸びるように。
優雅とは違う鋭いものを作り出していました。
コストナー/彼女も大好きな選手。
大柄だけれど水彩画のようなスケーター。
フリーの「牧神の午後」は少し幻想的でふわっとした雰囲気がぴったり。
序盤でゆっくりとした動作で手を伸ばし足を挙げるところ他、
コストナーのスタイル、持ち味を生かしたプログラム。
クラシックバレエのように優雅。
風をリンクいっぱいに感じさせました。
アリッサ・シズニー/応援していた一人だったので素晴らしい出来がうれしかったです。
スパイラルの足の挙げ方、レイバックスピンの背のそらし方、Y字スピンでの腰から伸びる足のポジション。
彼女だけしか見せられない、はっとする「ポジションの美しさ」を持っている選手。
ただ、少しぐぐっとくるものは少なかったです。
それは技術とか表現力とかではなくて、振付なのかなと。
浅田真央もそうですが、音にのせて抽象的な体の動かし方をするよりも、もがく苦悩、とか喜ぶとか
感情のパントマイムをうまく盛り込んだプログラムの方が乗れる気がするのです。
高橋大輔、鈴木明子、村上佳菜子にはいい意味でのナルシストを感じます。
リンクで滑っているけれど、その眼には別の世界が映っている。
だからこそ私たちは白いリンクとスケーターを見ているだけで、
見えない何かに引き込まれその世界を追体験できるのでしょう。
そんな引き込み力を感じます。
【EX】
高橋大輔/EXは毎回素晴らしいけれど、アメリを使ったこのEXも名プログラムですね。
出だしの壁のパントマイムのような動きからもう独特の世界へ引き込みます。
激しくてやわらかくて。
ピアノの早い指の動きのメロディーにあわせて、少し首をのけぞらせてくるくるまわるツイズル、
流れるような調べです~~~~と滑るとか、シュルシュルッと素早く廻ってふわっと舞い降りる浮遊感とか、
スケートでなければ表現できない魅力が満載。
村上佳菜子/16歳にしてこの音のとらえ方、素晴らしいですね。
すごく難しい技、というわけではないいわゆるつなぎの部分。
たとえば何度も膝をうちならすように進んでいく場面とか、
体にリズムが刻まれていないと形にならないものが、見事に踊りになっています。
音に心と体が乗りまくっているのがわかります。
ファッションモデルもそうですよね。
「歩く」という誰もがおこなっている行為なのにそれを美しく非日常のように
魅せる「ウォーキング」。
難しくないように見える場面だからこそ村上佳菜子の才能が光ってみえました。
小塚崇彦/彼のEXも素晴らしいですね。
癖がなくまだ伸びるであろう、誰もが好感を感じるスケーティング。
端正で冬の朝の空気みたいに少し硬質で、観ているこちらが居住まいを正しくしたくなるような。
へんにガチャガチャ路線をめざさず、端正なスケーティングをさらに磨いてほしいです。
織田信成/軽やかさが和製フレッド・アステアのようで素敵。
アリッサ・シズニー/うっとり。
出だしのゆっくりとなめらかにすべるところ。
まるで幻想的な雲の中を進むようです。
そして円を描きながら少しかがんで顔の前にもってきた両手を左右に広げるところ、
下に広がる美し景色にみとれるみたいなイメージ。
キーラ・コルビもそうですが、手の甲の動きが、
ディズニーのアニメにでてくるプリンセスのような優美さがあります。
Y字に足を挙げるビールマンも本当に美しいですね。スピンの軸のぶれなさもすごいです。
EXのアンコール前の笑顔がなんと輝いていたことか。
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