中国で雪の結晶を「六出」と表現した資料一覧
中国では雪の結晶を「六出」と呼ぶ言い方があります。
これは、雪の結晶が六弁の花びらの形をしていることから生まれた表現ですが、
なんとこの言葉は紀元前にすでにあったそうです
つまり、中国人は紀元前に雪の結晶が六角形であることを知っていたのですね。
2010年8月23日、26日に書いたものが自分でも読みづらかったため、もう一度まとめなおしてみました。
以下にご紹介するものは「一覧」として誰かが本に記載したものからの転載ではありません。
私が刑事(デカ)のように図書館やネットの海を歩いたり泳いだりして調べてまとめたものです。
精度は心がけていりますが、今後修正加筆の可能性もあります。無断転載はご遠慮ください。
①西暦(時代)②書物(作品)名③著者・撰者④文面の該当箇所の抜粋⑤記載されている文献名
⑥私自身の手控え。資料情報
引用部分は青文字 。中国の簡略体で記されているものは私が日本の漢字を添えているものもあり。
Ⅰ
①紀元前140~131年頃②韓詩外伝③韓嬰
④凡草木花多五出雪花獨六出雪
⑤ 現存する『韓詩外伝』にはこの一文はみつけられず。
以下、Ⅵ藝文類聚、Ⅷ初学記、ⅩⅡ太平御覧、ⅩⅥ埤雅に韓詩外伝にこの一文があることの記載あり。
Ⅱ
①488年(南朝宋)②宋書③沈約撰
④<巻二十九 志第十九 符瑞 下>韓詩曰として、草木花多五出,花雪獨六出。
⑤『宋書』第三冊/沈約撰/中華書局 1974年 p873
Ⅲ
①513-581年←庾信の生年没年から推定(梁~隋)②詩「郊行値雪」③庾信(ゆしん)
④風雲倶惨惨、原野共風雲 雪花開六出 冰珠映九光
とも さんさん ぼうぼう
風雲 倶に惨惨 原野 共に茫茫
りくしゅつ ひょうしゅ は
雪花 六出を開き 氷珠 九光に映ゆ
雪の花が六つの花弁を開き、氷の珠が九光の灯さながらに照り映える。
「六出」は、雪の六角形の結晶をさす。
⑤『庾信』 (中国の詩人4)/興膳宏/集英社 1983年 p169~p170
Ⅳ
①507-583年←徐陵の生年没年から推定(南北朝)②詩「詠雪」③徐陵(じょりょう)撰
④三晨喜盈尺,六出舞崇花。
⑤『徐陵集校箋』第一冊(中國古典文學基本叢書)/徐陵撰;許逸民校箋/中華書局 2008年 p131
Ⅴ
①569~582年←張正見の生年没年から推定(陳)②詩「應衡陽王教詠雪詩」③張正見
④九冬飄遠雪,六出表豐年
⑤原典はみつけられず。『初学記』にこの詩の記載あり。Ⅸ参照。
Ⅵ
①624年(唐)②『藝文類聚( 艺文类聚)』③歐陽詢(欧阳询)撰
④<巻第二 天部下 雪>韓詩外傳曰凡草木花多五出雪花獨六出雪花曰霙雪雲曰同雲
⑤『藝文類聚』上/欧陽詢撰/上海古籍出版社 1982年 p23
Ⅶ
①624年(唐)②『藝文類聚(艺文类聚)』③歐陽詢(欧阳询)撰
④<巻第二 天部下 雪>の【詩】の項で
陳徐陵詠雪詩曰瓊林玄圃葉桂樹日南華豈若天庭瑞輕雪帶風斜三晨喜盈尺六出舞崇花
⑤『藝文類聚』上/欧陽詢撰/上海古籍出版社 1982年 p24
Ⅷ
①728年(唐)②初学記③徐堅他編著
④<第二巻 天部下 雪二>韓詩外傳曰凡草木花多五出雪花獨六出
⑤『初学記』第一冊/徐堅等著/中華書局 1962年 p27
Ⅸ
① 728 年(唐)②初学記③徐堅他編著
④第二巻 天部下 雪二>の [ 詩 ] の項で
又應衡陽王教詠雪詩九冬飄遠雪六出表豐年
⑤『初学記』第一冊/徐堅等著/中華書局 1962年 p30
Ⅹ
① 779~831 年←元稹の生年没年から推定(唐)②詩「賦得春雪映早梅(赋得春雪映早梅)
③元稹(元禾真)
④飛舞先春雪,因依上番梅。一枝方漸秀,六出已同開
(飞舞先春雪,因依上番梅。一枝方渐秀,六出已同开)
⑤『増訂注釈全唐詩(增订注释全唐诗)』第3冊/主编陈贻焮/文化藝術出版社 2001年 p142
ⅩⅠ
① 821~887年(唐)②詩「対雪(对雪)」③高駢(こうびん/高骈)
④六出飛花入戸時,坐看青竹变琼枝(六出飞花入户时,坐看青竹变琼枝)
⑤『増訂注釈全唐詩(增订注释全唐诗)』第4冊/陳貼燃(陈贻焮)主編/文化藝術出版社
2001年 p349
ⅩⅡ
① 983年(宋初期)②『太平御覧 (たいへいぎょらん)』③李昉他奉勅撰
④<巻第十二 天部十二 雪>韓詩外傳曰凡草木花多五出雪花獨六出
⑤『太平御覧』第一巻/李昉 [ほか]奉勅撰/大化書局 1977年 p58
ⅩⅢ
① 954 ~1001年←王禹偁の生年没年から推定(北宋初期)②詩「賀雪表」③王禹偁(おううしょう)
④ 靡神不舉,有感則通遂令六出之祥,大副三農之望
(靡神不举,有感则通,遂令六出之祥,大副三农之望)
⑤『小畜集』第五巻(四部叢刊:集部)』/王禹偁撰/商務印書館
⑥東大赤門総合研究棟6階 漢籍コーナー 漢籍E:2:5・175 4801578578
ⅩⅣ
① 1008~1075年←韓琦の生年没年から推定(北宋)②詩「冬至前一日雪」③韓琦(かんき)
④<全宋詩 巻三二五 韓琦八>羣陰明数極,六出見花多。
⑤『全宋詩』第六冊/北京大学古文献研究所編/北京大学出版社 1992年 p4036
⑥慶応日吉 4階西閲覧室 KD@928.5@Qu4@1-6 30190007125
ⅩⅤ
① 1008~1075年←韓琦の生年没年から推定(北宋)②詩「壬子十一月二十九日雪方洽」
③韓琦(かんき)
④<全宋詩 巻三三四 韓琦十七>近臘猶慳六出繁,忽驚盈尺及民寛
⑤『全宋詩』第六冊/北京大学古文献研究所編/北京大学出版社 1992年 p4095
⑥慶応日吉 4階西閲覧室 KD@928.5@Qu4@1-6 30190007125
ⅩⅥ① 1042~1102年←陸佃の生年没年から推定(北宋)②『埤雅』③陸佃撰
④<巻十九 釋天の雪>韓詩外傳云雪華日霙凡草木華多五出雪華獨六出
⑤『埤雅』第二巻(百部叢書集成:五雅全書)/陸佃撰/藝文印書館 1967年 p10
⑥東大赤門総合研究棟6階 漢籍コーナー 漢籍 E:1:6:38-1775-6 4816998951
ⅩⅦ
1042~1102年←陸佃(北宋)②『埤雅』③陸佃撰
④<巻十九 釋天 雹>雪六出而成華,雹三出而成實
⑤『埤雅』第二巻(百部叢書集成:五雅全書)/陸佃撰/藝文印書館 1967年 p11
⑥東大赤門総合研究棟6階 漢籍コーナー 漢籍 E:1:6:38-1775-6 4816998951
ⅩⅧ
① 1270年(南宋)②『朱子語類』③朱熹撰(朱熹の没後弟子が編纂)
④<巻二 理氣下 天地 下>雪花所以必六出者、蓋只是霰下、被猛風拍開、故成六出
⑤『朱子全書』第14冊/朱熹撰/上海古籍出版社 2002年 p141
⑥慶應日吉 4階西閲覧室 KD@125.4@Zh1@17-14 30101029730
中国サイト ttp://www.6jc.cn/guji/Article/7542_7608.html
ttp://www.6jc.cn/guji/Article/7542_7608.html
ⅩⅨ
① 1270 年(南宋)②『朱子語類』③朱熹撰(朱熹(1130-1200)の没後弟子が編纂)
④<巻六十五 易一 綱領上之上 數>如水數六,雪花便六出。と如水數六,雪片也六出の二か所記載。
⑤『朱子全書』/朱熹撰/上海古籍出版社 p2164
ⅩⅩ
①1270年(南宋)②『朱子語類』③朱熹撰(朱熹(1130-1200)の没後弟子が編纂)
④雪花所以必六出者、蓋只是霰下、被猛風拍開、故成六出の【訳】として
雪の花が必ず六角形であるのは、おそらく霰が降るときに、
強風にたたかれて、それで六角形になるのであろう。
と記載。
【注】として雪花 雪の結晶を花に例えた言い方。
『韓詩外伝』に「凡草木花多五出、雪花獨六出。雪花曰霙」とあるように、
古くから雪の結晶が六角形であることが知られていた。
朱熹は雪の結晶が六角であることを天地自然の定数の代表として取り上げている。と記載。
その後、巻六十五の
「問理與數。曰、有是理,便有是氣。有是氣、便有是數、蓋數乃是分界限處。
又曰、天一地二、天三地四、天五地六、天七地八、天九地十、是自然如此、走不得。如水數六、雪花便六出、不是安排做底」
「氣便是數。有是理、便有是氣。有是氣、便有是數、物物皆然。如水數六、雪片也六出、這又不是去做將出來、他是自恁地」
という六出に関する部分の紹介あり。
⑤『朱子語類訳注(巻1~3)』/溝口雄三・小島毅監修;垣内景子・恩田裕正編/汲古書院 2007年 p180~181
⑥横浜市立図書館
ⅩⅩⅠ
① 1279~1360年←鐘嗣成の生年没年から推定(元)②詩「四景 雪」③鐘嗣成(钟嗣成)
④是誰家剪下瓊花瓣,飛六出遍長安
⑤『全元散曲 : 广選・新注・集評』(上巻)/吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000年 p844
⑥東大文3 W4G5:Wu 4811128141
ⅩⅩⅡ
①不明(元)②詩「越調 天净沙 冬」③朱庭玉(生年没年不明)
④門前六出狂飛,樽前萬事休提,爲問東君信息
⑤『全元散曲 : 广選・新注・集評』(上巻)/吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000年 p1125
⑥東大文3 W4G5:Wu 4811128141
ⅩⅩⅢ
①不明(元)②詩「怨雪」③唐毅夫(生年没年不明)
④不呈六出祥,豈應三白瑞
⑤『全元散曲 : 广選・新注・集評』(上巻)/吴庚舜、呂薇芬主編/辽宁人民出版社 2000 年 p1115
⑥東大文3 W4G5:Wu 4811128141
ⅩⅩⅣ
①1596年(明)②『本草綱目』③李時珍撰
④<水部 水之一天水類十三種 臘雪>
時珍曰︰按劉熙《釋名》云︰雪,洗也。洗除瘴癘蟲蝗也。凡花五出,雪花六出,陰之成數也。
<水部 水之一天水類十三種 雹>
雪六出而成花,雹三出而成實。
⑤『本草綱目』/李時珍撰/1596年
※この資料の詳細は2011年1月10日の記事を
ⅩⅩⅤ
①1567~1624年←謝肇淛の生年没年から推定(明)②『五雜組』③謝肇淛
④<巻之二 天部二>
至後雪花五出、此相沿之言。然余每冬春之交、取雪花視之、皆六出。
※『五雑組』は国立国会図書館デジタル化資料でネット閲覧可能。
国立国会図書館デジタル化資料(ttp://dl.ndl.go.jp/)で『五雑組 16巻 1 明』を検索。
67/88が該当ページ。
直接のURLはttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2580822/67
ⅩⅩⅥ
①1664年(清初期)②『物理小識』③方以智
④雪花六出者。圜一圜六同體相依。直輳卽離。平輳卽合此亦空中旋氣使肬也。
⑤『物理小識』巻二
※『物理小識』は早稲田大学古典籍データベースでネット閲覧可能。
古典籍データベース(ttp://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/)で『物理小識』を検索。
2冊目のNo.8が該当ページです。
ⅩⅩⅦ
①1727~1814年←趙翼の生年没年から推定(清)②詩「大雪戲作」③趙翼(ちょうよく)
④凝寒所成固其理,何以片片六出俱。
⑤『甌北詩鈔』(趙翼全集4)/(清)趙翼撰 ; 曹光甫校點 鳳凰出版社/2009 p136
※『甌北詩鈔』は早稲田大学図書館古典籍データベースでネット閲覧可能。
古典籍データベース(ttp://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/)で『甌北詩鈔』を検索。
3冊目のNo60、61が該当ページです。
【雪の結晶の文化】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら
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