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2011年1月27日 (木)

室町時代の貴族の日記『実隆公記』に出てくる雪の結晶の表現「六花」と「雪花」

日本海側の大雪、大変な思いをしている方も多いことと思います。
『北越雪譜』の「初雪」の項で鈴木牧之は、初雪を観て吟詠遊興を楽しむのは暖国の人がすること、
雪国で暮らす人にとっては苦しみが多いと書いています。

雪の結晶が綺麗、なんて言っている場合ではないのでしょう。どうぞ被害があまりでませんように。

さて、室町時代に書かれた「実隆公記(さねたかこうき)」。
のページを追っています。
というのも、この書物に雪の結晶をあらわす「六花」という言葉がでてくることが『雪華図説新考』小林禎作著(p53)に書かれていたからです。

続群書類従完成会から全20巻で刊行されている『実隆公記』を調べるとすぐみつかりました。
第1巻(巻一上)の文明6年1月。 
9日の日記 天晴、六花少落 (p 5)
18日の日記 六花 (p6)

と雪を「六花」と表現して書かれていました。
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私が、なぜ、「六出」「六花」という言葉を追っているのかといいますと、
日本で雪の結晶が六弁の花の形であることがいつから知られていたのか

を知りたいからです。
『実隆公記』。面白いので、ページをめくっていると、新たに発見。それは第4巻(巻二下)のp480。
延徳二年9月26日の日記です。

雪盈地、九月雪凡近代不聞其例之由耆老皆相談、寒嵐又過法、恰如極寒中
と書かれてあるくだりに、
そめかふる梢の雪に秋もなし
という発句があり、また、
六花所々有贈答詩哥(私メモ/哥は歌のこと)という記述もありました。

『実隆公記』は室町時代後期、貴族の三条西実隆(さんじょうにしさねたか)が書いた日記です。居住は京の都。
9月の雪は近代その例を聞いたことがない、と書いてありますが、この日付は旧暦。西暦でいつになるのか調べました。
手がかりは『実隆公記』延徳2年11月3日の日記。今日が冬至と書いてあるのです(p497)

冬至=西暦でいうと毎年12月22日頃。延徳2年11月3日が12月22日として逆算。9月26日は西暦11月14日あたりでしょうか。

そして、重宝なサイトをみつけました。「換暦~暦変換ツール」というサイト(ttp://maechan.net/kanreki/)です。
このサイトで入力すると、延徳2年9月26日は西暦(グレゴリオ暦)11月17日と出ました。

環境省のインターネット自然研究所→四季の自然学習室→初雪前線を辿ると(ttp://www.sizenken.biodic.go.jp/pc/ikimono/thema/10/setsumei/yuki02.html)、
近年、京都の初雪の平均は12月15日、この100年ぐらいでもっとも早かったのが11月4日であることが書かれています。

実隆の時代も11月中旬の雪は珍しかったのでしょう。

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「実隆公記」、非常に面白いです。約60年間日記を続けていて、日々の天気やお勤めのことを書いています。

現代に実隆が生きていたら、ブロガーになっていたことは間違いなし!

(巻一上)
文明8年正月の章では

9日  晴、雪霰時々降
10日 晴、雪時々降
11日 晴、雪時々散 (p135~136)
というように、この日記ではほとんどが、雪散、雪降という書き方(巻一上~巻三上をチェック)で「六出」「六花」がでてくるのは上記のみ。

ただ、雪に関しては、「雪花」とも表現しています。

(巻一上)
文明8年1月28日の日記で 
暁天嵐氣甚雪花

(巻一下)
文明13年2月15日の日記では 
なかはなけ春を時かは雪の花 (p382)

文明15年11月10日の日記では
雪飛耶絮落
という表現があります。 (p473)
絮は草木の綿毛のこと。綿毛のように雪が舞い降りている様子を表現しているのでしょうか。

文明18年7月4日の日記では
詠寄月十如是和哥として和歌が十編記されており、<如是縁>として
雪花のなかめにわきて月をのみめつるもよゝのえにしありけれ (p695)


ただし要注意です。<雪の結晶を六出、六花と表現している>=<雪の結晶が六弁であることを知っている>とは限りません。中国から雪の結晶を「六出」「六花」と表現した漢詩などが伝わっていますが、「言葉」として伝わっただけかもしれないからです。
「雪花」という言葉も、結晶の形が花のようだった、と当時の人が認識していた証拠にはなりません。
というのも、雪が舞い散る様子を花びらが散る様子にだぶらせたり、雪が枝に積もる様子を枝にたくさんの花が咲く様子に見立てただけかもしれないからです。

そうそう、文明17年11月22日(巻一下 p636)の日記では、雪合戦のことかなって思う記述も発見。
雪が続いたあとのこの日、児女等打雪有興と書いてあるのです。子供や女性たちは雪を投げあって遊んだという意味でしょうか。

さて『実隆公記』には彗星や虹などの記述も興味深いです。続きは1月30日に。

【雪の結晶の文化】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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