日本三代実録(その7)番外編、連理の木に感じる千年の流れ
5月2日の続きです。といっても今回は天変地異などの現象ではありません。
記載のただし書きは4月12日のブログをご覧ください。
「日本三代実録」は地震や気象現象がこまかに書かれています。その中でたびたび出てきて気になる言葉がありました。
それは「連理(れんり)の木」。
連理の木は、2つの木がくっついて1本の木になってしまったものや、1本の木の幹が枝が2つに分かれたあとまた一つにくっついてしまうものを指すようです。
連理木が吉兆、良いしるしと考えられていたようです。「日本三代実録」の元慶元年7月19日に、備後国の白い鹿、丹波国の白い雉、尾張国の連理木を挙げて「かくの如きよきしるし」と語っています。p763
連理の木がおめでたいから、日本各地から、連理の木をみつけたと中央に報告があり、それが史書といえる「日本三代実録」に記載されていることがおもしろいなと思います。
みつけた箇所を挙げてみます(漏れはあるかもしれません)。 連理の木がみつかった場所のみ記載。青字は引用した文章。
貞観元年(859年)
8月3日 「木理を連ねき」下野国 p61
貞観5年
12月13日 「樹の連理せる一あり」飛騨国 p216
貞観13年
12月5日 肥前国 p554
貞観14年
5月30日 備後国 p570
貞観18年
2月5日 下総国 p685
元慶元年(877年)
2月10日 尾張国 p729
7月19日 天皇の詔の中の言葉を抜粋で
「備後国白き鹿をたてまつり、但馬国白き雉をたてまつり、尾張国木連理せりと言せり。
かくのごとき嘉(よ)き瑞(しるし)は、この薄徳のうごかしいたらしむべきものにもあらず」 p763
9月2日 佐渡国 p765
元慶2年
1月29日 伊賀国 p783
5月4日 陸奥国 p797
元慶3年
3月2日 近江国言しけらく、『木の連理せる、筑夫嶋神社の前に生えき』と。 p837
10月2日 三河国言しけらく、『管八名郡連理の木三つを獲き』と。 p854
閏10月23日伊勢国言しけらく、『木の連理せる、鈴鹿郡の山中に生ぜり』と。 p860
11月27日 石見国言しけらく、『白猿1つと木の連理せる六つとを獲き』と。 p865
12月5日 美濃国 p867
元慶6年
12月13日 下野国 p978
元慶7年
4月23日 尾張国 p989
4月25日 美濃国 p989
元慶8年
3月5日 山城国 p1022
5月11日 山城国 p1032
6月4日 遠江国 p1044
7月3日 上総国 p1048
9月2日 信濃国 p1054
9月25日 伊勢国司言しけらく、『朝明郡に連理の樹一つ生ぜり』と。 p1058
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この中で場所が特定されているのは元慶3年3月2日の、筑夫島嶋神社。琵琶湖に浮かぶ竹生島にある都久布須麻神社のことのようですが、残念ながら今はこの連理の木はないようです。
考えたら貞観~元慶は1100年以上前。
樹齢千年以上でなければ、連理の木があったとしても現代の私たちが目にすることはできないわけですね。
と思うと、千年前ってすごい昔なんだなと実感。当時の人がみつけて「めでたい」と珍重し、もしかしたら鎌倉時代の人も目にしていたかもしれないけれど、その後枯れてなくなり、現代にはもう残っていない木がいっぱいあるということですよね。同じ土地に過ごしていても過去の人たちが見ていて、現代の私たちが見ることができない「景色」がいっぱいあるのですね。
でも、山はすごいですね。「富士山」などの山は千年以上当たり前に存在しているわけで。千年以上、同じ風景が存在する。噴火などで少し様子が変わっていたとしても。
昔の人が和歌に詠んだ、親しんだ山や地形。時を超えて、同じ風景を見て、美しさを共有できるというのも感慨深いし、不思議な気持ちがします。
うまく表現できないですが、今は現存しない「連理の木」に諸行無常を感じました。
もし「日本三代実録」にでてくる伊賀の国の連理の木ってあの山のあれかしら!なんて心あたりがある方はぜひぜひご一報いただけたらと思います。
「日本三代実録」番外編はあともう1回、近日に。
日本三代実録 その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7
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