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2011年5月22日 (日)

『五月女ケイ子の レッツ!! 古事記』最高です

五月女ケイ子のレッツ!!古事記

とってもしびれる本に出会いました。
それは『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』。

しりあがり寿さんの絵が好きな人は好きであろう五月女ケイ子さんの少しレトロな絵による古事記の漫画です。

この本を読むと
1)古事記の世界がよくわかります
2)古事記の原文を読みたくなります
3)少なくとも5人の人にこの本を見せたくなります。
4)こんなぶっとんだ神話のある日本に生まれたことがうれしくなります。

でも、けっして大人は電車の中で読まない方が。漫画を電車の中で読んで時々にやにやしてる変な人と思われちゃうでしょう。(実体験より)。高尚な?古事記を読んでいるなんて思ってもらえないですからね~。

古事記についてどのくらいご存知ですか。
私の場合、子供の頃、ダイジェスト版を読みました。高校時代の古文の授業でスサノオとヤマタノオロチの対決のくだりをや勉強しました。
その他、天照大御神が天の岩戸に隠れた、イザナキイザナナミ、いなばの白兎他、要所要所をなんとなく知っていたわけで、きちんと「作品」として読破したことはありませんでした。

この『レッツ古事記』を読んで、「happy02えー、こんなにぶっとんでえぐくってシュールで奇想天外な話だったっけ!!」と驚いてしまいました。
現代のどんなストーリーテーラーもかなわないはず。

この本、5時間ぐらいあれば読み終えるでしょう。それで古事記の要所要所がわかってしまうのですから漫画の力って偉大ですね。
すべてのページが面白いのですが、とくに私が気に入ったところ、衝撃を感じたところをご紹介。青字は『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』からの引用部分です。

1)イザナキとイザナミが国を造る場面。

天の沼矛をぐるぐるしてオノコロ島を造った後に二人はこんな話をします。イザナミ(女性)
「私の体はだいたい良くできていますがなんだか足りない穴があるようです」。イザナキ「なんと私の体にはちょうど余って飛び出してる部分があるんだけど」
そこで二人はHをして国を造ったのです。
びっくりしました。こんな展開だったとは。子供のころ読んだ古事記は露骨には書かれていなくてオブラートにつつまれていたのでしょう。
ちなみにこのくだりは『古事記 全訳注』上 次田真幸(講談社文庫)p40では
「吾が身は成り成りて成り合わざる処一処(ひとところ)あり」「我が身は成り成りて、成り余れる処一処あり。かれ、この吾が身の成り余れる処をもちて、汝が身の成り合はざる処にさし塞ぎて、国土を生み成さむとおもふ」とあります。

男女の営みは豊穣の象徴で神聖でありおめでたいものと古代はおおらかに考えられていたといわれますよね。今でも男根や女陰を表す形のご神体がまつられている神社があったり、交わりを表す動作を行うことで豊穣祈願をする予祝行事があったり。
日本は(日本だけではないかもしれませんが)おおらかに受け止められてきたんだなというのをこのくだりを読んで感じました。

2)イザナミの執念。

イザナミは、
ゲロ、小便、大便からも神様を産んだんですよ。この発想すごいですね。

3)愛憎劇。

たくさんの子供を産んだあと亡くなったイザナミは黄泉の国にいきます。妻のことを忘れられないイザナキは黄泉の国を訪ね、イザナミと再会します。イザナミは地上に戻れることになるのですが「待っている間、けっして姿をみないでください」とイザナキに約束させます。けれど待ちきれずにイザナキがイザナミの姿を覗くと・・・。
イザナミは自分の醜い姿を見られ、怒ってイザナキを攻撃します。逃げて黄泉の国の入り口まで戻ってきたイザナキは地上に出たあと入り口を岩で塞ぎ、イザナミを地上に出れないようにします。
そこで有名な会話が繰り広げられます。イザナミが
「こんなことをなさるならあなたの国の人々を一日に1000人ずつ殺してやりますわ」といい、イザナキが「それなら私は一日に1500人の子供を生ませることにしよう」と答える場面です。

今までも知っていたセリフです。
<人類の繁栄は、イザナミの呪いのように人はたくさん死ぬけれど、イザナキがそれ以上に人が生まれることを約束したから>
それを象徴するための記述だと思って読んでいました。

ですが今回、『レッツ古事記』を読んで、イザナミはイザナキのことが本当に好きだったんだと、せつなくなりました。
イザナミが愛するイザナキを攻撃したのは愛憎のせいなんですよね。好きでもない人に自分の醜い姿をみられてもなんともおもわない。だけど愛するイザナキだからこそ、醜い姿をみられたことも、それで驚かれたことも、待っていてという約束を破られたことも怒りとなる。そして何より、もう一度一緒に暮らせると思った幸せをイザナキ自身が台無しにしたことが許せなかったのでしょうね。

この二人の会話は、『レッツ古事記』でとくにページを割いて描いているわけではないし、『古事記』の原文だってさらっと描かれている場面です。でもイザナミの気持ちを思って、ドラマを感じてしまいました。

ところで、このくだりはギリシャ神話のオルフェウスと似ていますね。愛する妻エウリュディケを失ったオルフェウスは冥界に行き、エウリュディケを連れて帰ろうとします。冥界の王ハーデスに、地上に出るまで振り返ってエウリュディケを見てはいけないといわれたのに掟を破って振り返ってしまい。愛する妻は吸い込まれるように黄泉の国に引き戻されて消えたという話でしたよね。

4)勝ったスサノオが暴れる。

この本は五月女ケイ子さんの絵のタッチ、古事記のとりあげ方が素晴らしいのですが、欄外にあるコメントも最高なんです。P38には天照大御神との勝負に勝ったスサノオが暴れる場面がありますが。そのご乱行ぶりは結構お下劣。

田の畔を壊し、溝を埋め、食堂でウンコをまき散らし。

この場面の欄外に、五月女さんはスサノオが勝ったのに暴れる理由はわからなかった。けれどもある時、「阪神ファン」を見てその心理と同じと気づいたことが書かれています。

阪神タイガースが優勝すると勝ち誇って道頓堀川に飛び込む熱烈ファンの姿をみて、スサノオの気持ちがわかった、と。

このあと、天照大御神が弟スサノオのご乱行をかばう言葉もめちゃくちゃで傑作です。
「あれは一見ウンコに見えるけれど酒に酔ってへどを吐き散らしただけなのですよ」

5)オオクニヌシと因幡の白ウサギ。

オオナムジ他いろんな呼び方を持つオオクニヌシノミコトは、略してオオちゃんとして登場します。文系男子のイメージでと眼鏡をかけて登場するオオちゃんの可愛いこと。ぜひ、お確かめください。

白うさぎ。わにをだましたために怪我をし、オオちゃんのお兄さんたちにだまされて傷だらけの体で塩水を浴び、さらに傷が悪化したおまぬけぶりも笑えます。 なさけなくてかわいいです。

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紹介したい場面はまだまだあります。面白そう!と思われた方はぜひ現物でお楽しみください。
私は『レッツ古事記』を読んで、原文にチャレンジしたくなり、『古事記』の原文を読み始めました。続きはこちらに。

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emi (秋田恵美)

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。
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