古事記の面白さに目覚めました!
5月22日の続きです。
『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』があまりに面白くて、原文を読んでみたくなりました。
本を手に取ると。よくわかるのです。難しい小説が映画版を見たあとは読みやすい、あの感覚に似ています。
五月女さんのピックアップの仕方がうまい!とあらためて感じました。
原文を読んで面白かったところをご紹介します。
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3通りの文章があります。漢字だけの原文。古文体で書かれたもの。現代語訳。
『古事記 全訳注』上巻 次田真幸(講談社学術文庫)からの引用はパープル(資料名A)。
『古事記注釈』西郷信綱(ちくま学芸文庫)からの引用は緑(資料名B)。
『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』からの引用は青文字。
1)おのごろじま
伊邪那岐命(いざなきのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が天の沼矛をぐるぐるさせてつくった島、
淤能碁呂島(おのごろしま)はおのずから凝って生じた島の意味とのこと(資料B 第一巻 p139 )
2)22日のブログで取り上げた「私の体はだいたい良くできていますがなんだか足りない穴があるようです」「なんと私の体にはちょうど余って飛び出してる部分があるんだけど」のくだり。
「吾身者、成成不二成合一處一處在」「我身者、成成而成餘處一處在」 (資料B 第一巻 p141)
資料Bでは解説で、肉体的なものいいは神話世界の特徴と書かれています。
また柱をめぐってイザナキとイザナミが声をかけあって婚姻するくだりに関して、この御柱は陽物の象徴であることが語られています。(P147)
3)ゲロ、小便、大便から生まれた神様。
22日のブログで、イザナミのゲロ、小便、大便から神様が生まれるくだりをご紹介しましたが、資料Aからそのくだりを。
たぐりに成りし神の名は、金山毘古(かねやまびこの)神、次に金山毘売(かねやまびめ)の神。次に屎(くそ)に成りし神の名は、波邇夜須毘古(はにやすびこの)神、次に波邇夜須毘売(はやすびめの)神、次に尿(ゆまり)に成りし神の名は、弥都波能売(みつはのめの)神、次に和久産巣日(わくむすひの)神。
現代語訳/その時の嘔吐から成った神の名は、カナヤマビコノ神とカナヤマビメノ神。次に糞から成った神の名は、ハニヤスビコノ神とハニヤスビメノ神である。次に尿から成った神の名は、ミツハノメノ神とワクムスヒノ神である。 (資料A p51~)
※たぐり=嘔吐。
4)イザナミの愛憎。
22日のブログでも紹介したイザナミイザナキの「こんなことをなさるならあなたの国の人々を一日に1000人ずつ殺してやりますわ」「それなら私は一日に1500人の子供を生ませることにしよう」のやりとりの原文を。
「愛我那勢命、爲レ如レ此者、汝国之人草、一日絞二殺千頭一。」「愛我那邇妹命、汝爲レ然者、吾一日立二千五百産屋一」 (資料B 第一巻 p258)
「愛(うつく)しき我(あ)がなせの命(みこと)かくせば、汝(いまし)の国の人草(ひとくさ)、一日(ひとひ)に千頭(ちかしら)絞(くび)り殺さむ」「愛しき我が汝妹(なにも)の命、汝然せば、吾(あれ)一日に千五百(ちいほ)の産屋(うぶや)立てむ」
現代語訳/「いとしいわが夫の君がこんなことをなさるなら、私はあなたの国の人々を、一日に千人絞め殺しましょう」「いとしいわが妻の命(みこと)よ、あなたがそうするなら、私は一日の千五百の産屋を建てるだろう」 (資料A p61)
5)天照大神に勝ったスサノオが暴れる場面。
22日のブログでも紹介したこの場面の原文を。
離二天照大御神之営田之阿一、埋二其溝一、亦其於下聞二看大嘗一之殿上、屎麻里散。 (資料B 第二巻 p 106)
勝(かち)さびに天照大御神の営田(つくだ)の畔を離ち、その溝を埋め、またその大嘗(おほにへ)聞こしめす殿に屎(くそ)まり散らしき。
現代語訳/勝ちに乗じて天照大御神の耕作する田の畔を壊し、田に水を引く溝を埋め、また大御神が新嘗祭の新穀を召し上がる神殿に、屎をひり散らして穢(けが)した。 (資料A p87)
天照大御神がスサノオのご乱行をかばう言い訳、可笑しいです。
「屎如(な)すは、酔ひて吐き散らすとこと、我がなせの命(みこと)かくしつらめ。また田の畔を離ち溝埋むるは、地をあたらしとこそ、我がなせの命かくしつらめ」
現代語訳/「あの屎のように見えるのは、酒に酔ってへどを吐き散らそうとして、わが弟君はあのようなことをしたのであろう。 また田の畔を壊したり、溝を埋めたりするのは、土地をもったいないと思って、我が弟君はあのようなことをしたのであろう」 (資料A p87~89)
6)おまるは由緒正しい言葉。
トイレにいけない小さな子が用を足す「おまる」。「おまる」という言葉は古事記の時代からある由緒ある言葉が元だったのですね! 上記の5)の文章に「屎まり」ってありますよね。資料B 第二巻 p116に 「まる」は大小便をすることと注釈があります。「まる」から古事記の「屎まり」の表現がうまれ、また現代の「おまる」につながっているのです。
7)若手女優武井咲の名の読み方が「えみ」なのも由緒正しかった!
なぜ「咲」と書いて「えみ」と読ませるのかと疑問だったのですが。古事記のアマノウズメがストリップをして他の神様が盛り上がるという有名な場面を読んでびっくりしました。
爲二神懸一而、掛二出胸乳一、裳緒忍三垂於二蕃登一也。爾高天原動而、八万神共咲。 (資料B 第二巻 p127)
神懸りして、胸乳をかき出て、裳緒(もひも)をほとにおし垂れき。ここに高天原動(とよ)みて、八百万の神共に咲(わら)ひき。
現代語訳/神がかりして、胸乳をかき出し裳の紐を陰部までおし下げた。すると、高天原が鳴りとどろくばかりに、八百万の神々がどっといっせいに笑った。 (資料A p88~91)
このくだりで「咲」と書いて笑(わら)うと読ませています。
資料B 第二巻 p161の注釈で、咲は笑の異体字、と書かれています。
笑うといえば微笑み(ほほえみ)の「えみ」。なので咲=笑=えみと読ませられるのですね。
8)いなばの白兎がワニに言ったおっちょこちょいの一言。
数を数えるからとだまして、ワニの背をぴょんぴょん渡った白うさぎ。せめて、陸に渡ってから、「おまえをだました」と言えばいいものを陸に渡りきる前に言ったものだから、手酷い怪我を負ってしまいます。
その原文を。
今将レ下レ地時、吾云、汝者我見レ欺言竟、卽伏二最端一和邇、捕レ我悉剥二我衣服一。 (資料B 第三巻 p14)
今地に下りむとする時に、吾云はく『汝は我に欺かえつ』と言ひ竟(をは)る即(すなは)ち、再橋に伏せる和邇(わに)、我を捕へてことごとに我が衣服を剥ぎき。
現代語訳/今や地上に下りようとするとき、私が『お前は私にだまされたのだよ』と言い終わるやいなや、一番端に伏していたワニが私を捕えて、私の着物をすっかり剥ぎ取りました。 (資料A p109~111)
ううーん。おっちょこちょいというか自業自得ですね
9)古事記の言葉のひびきはエキゾチック。
現代の日本語とは少し違う語感が気持ちいいです。ハワイの言葉といわれても納得してしまうようなエキゾチックさもあります。いくつかピックアップ。
黄泉比良坂(よもつひらさか)。
奴那登母母由良爾(ぬなとももゆらに/ヌナトは玉の音。モユラは玉がふれあって鳴るさま/資料B 第二巻 p53、58)。
天之真名井(あまのまない/高天原にあるとされた神聖な泉/資料A p84)。
多紀理毘売命(たきりびめのみこと)。
櫛名田比売(くしなだひめ)。
須世理毘売(すせりひめ)。
内者富良富良、外者須夫須夫(内はほらほら外はすぶすぶ)。
天知迦流美豆比売(あめちかるみづひめ)。
天之御舎(あまのみあらか/神聖な宮殿/資料A p169)。
番能邇邇芸命(ほのににぎのみこと/「ほのににぎ」は稲穂の豊かに実る意/資料A p172)。
木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)。
火遠理命(ほをりのみこと)。
日子穂穂手見命(ひこほほでのみこと)。
塩盈珠・塩乾珠(しおみつたま・しおふるたま)。
鵜葺草葺不合命(うかやふきあへずのみこと)。
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ところで、古事記にはいくつも地名がでてきますよね。
淡海の多賀、気多、出雲、伊予…。自分の住んでいるところが出てくる方々、ウラヤマシイ!
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