フィギュアスケートNHK杯(その2)
10日ほど経ってしまいましたが、フィギュアスケートNHK杯その2です。
【女子シングルフリー】
浅田真央/すこやかで甘くて上品で夢があって、「愛の夢」は浅田真央にぴったりの音楽。
演技後、満足そうになんどもうなづくやわらかな表情が印象的でした。
あくのない、質のいいジャンプやスピン、スケーティング。だからこそ「うっとり」と愛の夢を魅せることができるのですね。
心地いい風になびく花嫁の白いヴェールのような、地上の生々しさから離れた夢見心地の世界。
あれだけ滑り切っても、息もあがらない、生々しい肉体を感じさせないというところにも、彼女だからこそ演じられる世界を感じます。
最後の挙げた足に手を添えるスピンも綺麗でした。
ダブルアクセルも高くてきれい。でも哀しいかな。
他の選手だったら「見事なダブルアクセル!」となるのに、
なまじっかトリプルアクセルが飛べるために、
「なんだ、ダブルだったのか」と私たちが少しがっかりしてしまうところがあった気がします。
できる技術であればこそ挑戦したくなると思うのですが、彼女自身ではなく、
観客の私たちが、トリプルアクセルが飛べたかどうかに一喜一憂しなくていいように、
封印を決めてしまうのも手なのかも。
浅田真央にさらに望むとしたら、上体の動きでしょうか。
めりはりが少なくいスリムな体型のせいもあって、どうしても上体が硬くみえてしまいます。
上半身を前に曲げたりそらしたり、手をシンメトリーではなく波打つように動かすとか、大きな動きがもっとあってもいいような。
レオノワ/スピンや、最後の渾身のステップが素晴らしかったです。
鈴木明子/最初のジャンプのあと、着地の姿勢をしばらく保ったままつぎにすべりが続くのがいいですね。
ジャンプのミスはありましたが、やはり最後のステップが圧巻。乗っているのが感じられました。
途中のスピンの前のフライングの部分もこまやかに凝っているのを感じました。
ジャンプ前の助走の時、少し動きが無防備になってしまうところがあるのが少し気になります。
ショートのような会心の演技とはなりませんでしたが、ショートの貯金もあったうえでの優勝、よかったです。
会場は反応が少し違ったのでしょうか。
自分が優勝を獲得してしまっていいのかという戸惑いを素直に言葉に出していたのも印象的でした。
【男子シングルショート】
高橋大輔/なんといっても高橋大輔が凄かったでしたね。
足の裏についているのは堅い刃じゃなくて、肉球じゃないかと思えるほど、やわらかい跳躍と着地。
脚も腕も指先も上半身も波打つようにうごめく。
トリプルアクセルもシュッと素早く、着地の時にすでにポーズが決まっていて。
しなやかでなまめかしい、でも、太鼓のリズムと呼応する力強さとダイナミックさもあるのが素晴らしいですね。
キャメルスピンの前で、片足を上げて抱えるような振付のところ、
ストレートラインステップの途中でピッと止まって、少ししなりがあるところ、いいですね。
なによりも指先。絶えず美しいフォルムで指が開いてそっているのも素敵。
それが枝の梢のようにみえて、高橋大輔自身が不思議な南国の樹木のようにみえました。
ちょっとした演技と演技の間で首を縦ノリでリズムを取っているところも好きです。
どこを切り取っても美しい名プログラム、名演技でした。
小塚崇彦/猫のしなやかさを持つ高橋大輔とはタイプが違い、硬質な魅力を今シーズンも出していますね。
ステップの前の足を開いてピッと止まる動作他、音楽をこまやかに表現していて、
去年よりさらに「引き出し」をを増やしたことを感じさせました。
70年代のSFやサスペンス映画風の音楽とその頃の映画でみた近未来風なコスチュームのような世界がぴったり合っていて、
スピンの時も効果的でした。
【ペアフリー】
川口悠子ペア/「月の光」すばらしいです。曲調とぴったり。
スロートリプルの前、川口悠子が持ち上げられながら、空中で足を歩くように動かすところが効いていますね。
演技全体、スピード感があってましたし、二人の息もあっていました。
【EX】
浅田真央/ジュピター。衣装のせいもあるけれど天女のよう。
大きく、肩甲骨のあたりから動かす腕、上体、足etc.ゆっくりとした動きでたっぷりとみせる振付が荒川静香っぽいプログラムと思いました。
このEXでは、愛の夢の、肉体を感じさせない軽やかさや「可憐さ」とは違う力強さや重さや「神々しさ」を感じます。
ゆっくり足を挙げてスパイラルをした後も、しばらく片足のままというところが好きです。
ジャンプもそのあとの流もとてもきれい。
洗練されていて祈りの想いがこもった演技に心打たれました。
高橋大輔/毎年選曲といい振付といい名プログラムを作り上げていますが、今シーズンもいいですね!
ピアノの調べ、いい曲です。肌を愛撫するようにすべらせる指のような、
やわらかなタッチで奏でられる調べの繰り返しが。
力を入れないですーっと滑るところとか、風になびいて滑るところとか、
右足だけで滑りながら左足をクイクイとするところとか、
バレエをはじめ、他の地上でおこなうダンスではできない、
氷上のフィギュアスケートだからこそ可能な表現がいっぱい。
滑り出しや途中の、指を顔や耳元に持ってくるしぐさがもとても素敵。
以前坂東玉三郎の舞台を観に行った時、「イヤリングを外す」そんな簡単なしぐさをなまめかしく優美に魅せていて、
玉三郎さん凄い!と思ったのですが高橋大輔はそれに通じるものがあります。
「はんなり」がディテールに宿っていました。
ジャンプ他、スピード感と力強さがありますが、全体通してゆったりはんなり。
高橋大輔の男性的な面と中性的ななまめかしさを活かすプログラム。
このプログラムも殿堂入りですね。女子スケーターが滑ってもぴったりだと思います。
いっそ、ショートプログラムは女子全員このプログラムを課題曲にしてくれてもいいのに。
というくらい素晴らしい作品でした。
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