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2011年12月 4日 (日)

キャラメルボックスの「流星ワゴン」(重松清原作)、父親の息子を想う気持ちにじ~ん

演劇集団キャラメルボックスの「流星ワゴン」を観に行きました。

先日「飛ぶ教室」を観た時にいただいた「流星ワゴン」のチラシの中で、
主宰の成井豊さんが重松清さんの作品の中で一番泣いたのが「流星ワゴン」であると、そして、

この小説のテーマはずばり、「再生」。
今、この国に必要なのは、「もう一度やり直そう」という意思だと思います。
2011年の締めくくりに、私たちキャラメルボックスは「再生」の物語をお届けします。
とメッセージを書かれていて、それに惹かれたからです。

早速原作『流星ワゴン』を読んでみました。
何か所も何か所も泣かされました
電車の中で読んでいる時、涙をこらえるのが大変でした!

主人公は、家庭は崩壊、会社ではリストラ、反目してきた郷里の父親が闘病で死の淵という状況で、
もう死んでもいいかなと思っている38歳の永田一雄。
彼が、交通事故で死んでしまった橋本親子のワゴンに乗るところから物語ははじまります。

車オデッセイで、自分の過去の大切な場面に戻され、その場面を体験しなおすという物語。

一雄の父→一雄。
一雄→息子の広樹。
橋本さん→息子健太。
父親が息子を想う気持ちに胸打たれました。

キャラメルボックスの芝居は、私が原作で少し抵抗があった美代子の場面をうまく扱ってくれていて、
いいなと思った部分をより濃く素敵な作品に仕上げてくれるだろうと期待していました。
その通りでした。

原作を観ていない方はキャラメルボックスから入るのがいいかも。
原作を読んで私と同じように感じた方にもぜひキャラメルボックス版「流星ワゴン」おすすめです。

以下、原作のストーリーのネタバレ含みます。

主人公一雄に「ターミネーター」のサラ・コナーがだぶりました。
普通の女子大生だったのに、「自分は守らなければいけないものがある」
と使命に目覚めてから強い女性となった彼女の姿が。

厳しい現実から逃れたくて、死んでもいいと思っていた一雄だったのに、
再体験しなければいけないのは、今の現実を作ったポイントにもなる過去の場面。
さらにヘビーな出来事に直面させられます。

突きつけられる事実に何もできず自分の無力さを痛感する一雄が、
少しずつ強くなっていく過程が見事に描かれています。

彼を強くしたのは妻美代子との出来事よりも息子広樹との出来事。
過去に戻った場面で、広樹がなぜ受験をしたいと思っていたか
その苦しい胸の内を気づいてあげられずにいたことを知った一雄は、
広樹を守りたい、彼の未来(今の現実)を変えなければと思い、
無力さを何度も痛感させられながらもあきらめず彼の未来を変えようとするのです。
その姿にじーんときました。
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学校でのいじめから逃れるために
受験で私立中学に行くしかないと、追い詰められながら親に言えずにいた広樹。
と同様、橋本さんの息子健太も心に傷を負っています。

義理の父となった橋本さんを嫌いではなかったのに、
意地を張ってなつかないでいたこと。
橋本さんに車の免許を取ってドライブに連れていってほしいという難題をだしたばかりに、
橋本さんとのドライブで自分たちが命を落としたということ。
すべては自分が悪いんだという思いを健太は背負っていたのです。

元気そうにふるまう奥で痛みを抱えた二人の少年たちの姿がせつなかったです。
------------------------------------------
この作品は登場人物に容赦ない展開。

たとえば、橋本さんの息子健太がやっとお母さんを訪ねる気持ちになったのに、
彼が見たのは新しい家庭と築き、新しい子供を授かったお母さんの姿。

「今」を変えようと、ワゴンで戻った過去で奔走した一雄にも・・・。
クライマックスの場面。
サイテー、サイアクであっても今の現実に戻りたいかを健太が一雄に訊きます。

どんなにサイテーサイアクの現実であっても生きたい、死にたくはないと答えが返ってきます。
覚悟を決めた一雄の姿は舞台でもとても頼もしく力強く輝いていました。
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「流星ワゴン」の凄さは、
<一雄が過去の大切な場面に戻って何かを変えたから、
家族はそれから今とは違うハッピーな現実を辿るようになっていました。
ワゴンを降り、現実に戻った一雄はハッピーな家族とあえました>
じゃないこと。

橋本さん親子のワゴンに出会う前と、哀しいかな。現実はほとんど変わっていません。
でも、変わったものがあるとすると
<自分が作り出してきたこの厳しい現実を生きよう>
<広樹を救いたい、家族を再生したい>という一雄の「心持ち」。
大切なのは「環境」ではなく「自分の意志」なのですね。

だからこそ、この作品は一層、2011年の今を生きる私たちへのエールになるのかなと思いました。
重松さんや成井さんが伝えたい【再生】は過去に戻ってやりなおすことではなくて、
今この現実を受け入れ、ここから覚悟を持って進むこと。
そうすれば現実を違う方向へ動かすことも、新たに作り出すこともできる、ということかしらと。
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原作では一雄の妻、美代子の登場シーンが「渡辺淳一」チックで少しびっくり。

だからこそ、キャラメルボックスがどういう舞台にするのかしらという興味もありました。
美代子の場面の扱い方もうまかったですし、「読者」を登場させる構成も面白かったです。
少しハードな原作を扱いながら、キラキラした音楽と、
くすくすっと笑ってしまう場面、
はちきれんばかりの役者さんのエネルギーで弾ける舞台となっていました。
何度も何度も泣かされました。

一雄の父親チュウさんの、<息子と同い年になって朋輩(友達)になりたい>
という思いが叶えられている様子は本当に幸せそうでうれしくなりました。

橋本さん親子の姿にも惹かれました。
役者の西川浩幸さんは、貫禄がない、不器用な、でも一生懸命父親になろうとする橋本さん役にぴったり。
血がつながっていなくても親子になれるというこの二人のハッピーエンドにも心あらわれました。


ところで、男親が息子と一緒にしたいことの憧れって、肩車、キャッチボール、一緒に酒を飲むとかかしら。
「流星ワゴン」では息子と同い年に戻って友達になりたい、とチュウさんは思っていてそれが叶ったわけですが、

私たちの実生活では、女親と娘って普通に「友達」になっていますよね。
娘と一緒に台所に立つ、一緒に出かけてショッピングやグルメを楽しむ。
同じカバンをかわりばんこに使うetc.
当たり前にしている母娘って多いな~なんて思いました。

流星ワゴン (講談社文庫)

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コメント

この日記の直接の感想にはならないかも知れませんが、

【再生】今この現実を受け入れ、ここから覚悟を持って進むこと。

本当にその通りだなと思いました。

今年の春、父の東京行きでemiさんに、大変お世話になった時の事なのですが、何事もなく無事に帰ってきて、とお話しましたが、ちょっと実際は違っていたのです。

東京ではなく、こちらで起こった出来事ですが、人が線路に入ってきて、一時父達が乗っていた帰りの電車が止まりました。 でも幸い事故にはならずに済んだのです。

父達の帰りが遅く、その理由を聞かされた時、きっとemiさんや色んな人達の優しさが守ってくれたんだろうなとしみじみ思いました☆

まだ震災直後で、沢山の人が不安定だった時期(私もでしたが)で、何が起こってもおかしくはないと心を構えずにはいられなかった私に、

丁寧に丁寧にemiさんがメールを下さって、私の心を柔らかい羽根で撫でてなだめて下さいました。 あの時は心配させてはいけないと、本当の事は書きませんでしたが、emiさんの優しさが守ってくれたのだと、心から感謝しております☆

今年も、本当にお世話になりました。(まだ終わっていませんが^^)またemiさんが教えて下さったクリスマスの曲、笑店でもぜひ紹介させて下さいませ!!!

長くて、スミマセン。。。もし感想として
不適切であれば、アップされなくても構いませんので(^_-)

おんぽたんぽさん。お父様が東京にいらした時にそんなことがあったのですね。帰りが遅くなられた時、心配されたことでしょう。そして私に心配かけまいとそのことを伏せていらしたのですね。

あの時はペットボトルの飲料不足や節電や計画停電などで駅のエスカレーターがとまったりと大変な時でしたよね。

それでも大切な方の法要のためにいらっしゃったのでしたよね。そのお父様のお心こそが「守護」だったのだと思います。

音楽気に入ってくださってうれしいです。名曲たちですよね! ぜひおんぽたんぽさんからも発信していただけたらうれしいです(*^。^*)

今日、帰宅の電車が遅れました。実は線路に人が立ち入ったから、とのこと。このタイミングにびくりしました。私が乗る電車の1本前の電車だったようです。事故にはならず安全確認で数分遅れですみました。

私が父の記事を書いた昨日、emiさんにも、父と似たような出来事があったのですね。。。本当に凄いタイミング。。。何事も無く、無事に済んで本当に良かったです☆
何かが守って下さったのかな。。。

震災直後に関係なく、大変な思いをされてる方は、今もいらっしゃるだろうし、特に冬は日照時間が少なかったりと、心も雲りがち。

だからこそ、emiさんが紹介して下さった様な音楽など、心に光を灯すことが大切な時期だと思ってます☆ いつもありがとうございます。

おんぽたんぽさん。そうですよね。電車のこと、すごいタイミング。私の方は幸い帰宅が遅れて「家政婦のミタ」をあまりみられなかった(新しいDVDレコーダーの操作を覚えておらず録画できないので(^_^.))ぐらいですみました。

日照時間の少ない、また雪の多いところに住んでいらっしゃる方達は、寒いこともつらいけれど、「暗い」ことが憂鬱になるとおっしゃっていらっしゃいますよね。
ちょっとでも心が、きらきらっとできる音楽をご紹介できたら本当にうれしいです。

ところで、私がこのところたて続けにみたキャラメルボックスの「飛ぶ教室」「流星ワゴン」。両方ともピアニストの巨勢典子さんの音楽も一部使われていたのです。よかったでした(*^。^*)

巨勢さんのHP、拝見してきました☆
「飛ぶ教室」観に行かれた様ですね。

昨日、隣の市で大平貴之さんが来られて:ttp://www.kibou-hall.sakata.yamagata.jp/
プラネタリウムのコンサートがあったのですが、ちょっと風邪をひいていて行きませんでした。

文化会館の天井に、星空を写すので
本物のプラネタリウムとは、また違っていたかも知れませんが。。。

でもいつか、emiさんが選ばれた音楽が流れるプラネタリウムには行くぞ!
新たに決意しました。^^

大平さんが隣の市にいらしていたのですね。四角い公共施設の天井に星空だと、プラネタリウムのような完成された宇宙空間にはならないかもしれませんが、その分、普段知ってるあの空間が星空に!という楽しみが味わえますね。次の機会にいけるといいですね。

私もいつかおんぽたんぽさんに作品をみていただけるようがんばりますね!

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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