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2012年3月17日 (土)

土井利位はどんな雪の日に観察したのか調べ中の途中報告

ライフワークとして土井利位の「雪華図説」「続雪華図説」にまつわることを調べています。

ほとんど刑事をしています。土井利位はどんな雪の日に雪華を観察したのでしょうか。
「雪華図説」「続雪華図説」に日付が書いてある時もあれば、ない時もあります。

観察の拠点は江戸、大阪、京都。彼の時代の気象を今調べている最中です。
その流れで「鷹見泉石日記」と「曲亭馬琴日記」に目を通しています。
曲亭馬琴は「南総里見八犬伝」でおなじみのいわゆる滝沢馬琴のことですね。

この2つの日記が非常~~~~~に面白いのです。
というのは二人とも同時代の江戸に生き、相当共通の知人がいます
(でも、二人が面識があった旨の記述はみあたらず)。

鷹見泉石は蘭学者であり土井利位侯の家老。今でいえば永田町の中枢にいるといってもいいのでしょう。
滝沢馬琴は日本で初めて著述業でほぼ生業を立てることができた人物といわれています。

が、セレブっぷりをみてみると鷹見泉石にはかないません。
鷹見泉石の日記はあくまでも業務日誌のようなものだと思うのですが、大名他への贈答でカステラがたくさん登場します。
鶏卵も砂糖も。いかに当時、それらが貴重で、カステラがモダンで高価だったかがわかります。

滝沢馬琴にはほとんどカステラの贈答はでてきません。
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滝沢馬琴は鈴木牧之ともつながりがあります。
鈴木牧之というのは「北越雪譜」を出版した人で、この中で土井利位の雪華図を転載して紹介している人物。
「北越雪譜」がベストセラーになったことで、土井利位の雪華模様をモードとして広げた貢献者となった人物ですが、
鈴木牧之は、「北越雪譜」の出版にあたって、
滝沢馬琴に力になってくれるよう再三お願いをしていたのです。

というわけで、いろんなネットワークがつながっているなあとか
二人の当時の生活ぶりや江戸の町の様子、
また思った以上に江戸時代がモダンであったことなどを発見しながら、
二人の日記を読んでいます。
詳細はあらためてご紹介しますが、少しだけ感動したことを。

①鷹見泉石と滝沢馬琴が同じ雪のことを書いている!

同じ江戸の町で暮らしていたから、あたりまえなのですがなんだか、
「同じ空の下」というのを感じて興味深くなりました。

例)文政10年(1827年)12月2日の雪について
鷹見泉石は「曇 寒 暮より雪」 『鷹見泉石日記』2巻p153
滝沢馬琴は「曇 夜五時より風 五時半過より雪 終夜無間断」 『曲亭馬琴日記』1巻p248

②滝沢馬琴の方が描写が細かい

鷹見泉石はあくまでも業務日誌でしょうし、滝沢馬琴は書きたいサガなのでしょう。
日記での天気の描写も細かいです。
現代に生きていたら、ブロガーでツイッターもフェイスブックをやっていただろうと思うほど、毎日の日記の量が半端ないです。
それがわかって面白いです。

③雪華図説で日付が記されていた日の雪の様子がわかりました

『雪華図説』に天保3年(1832年)1月3日に5種類の雪華が観察できたことが記されています。
滝沢馬琴のこの日に日記を辿ると、ありました!
「曇 四時過より雪 夜中雪止」 『曲亭馬琴日記』3巻p12
3日の日記の本文では、朝から雪が降りそうな曇り空で、
出かけたら雪が降り出したことが書かれ、
翌日4日の日記では3日の雪は多く積もらずはやく解けたことが書かれています。

※江戸時代の時刻制度の時間の単位は季節によってもかわるのですが、
上記の四時過というのは現在の時刻でいうと朝10時頃でしょうか(違っていたらすみません)

④同じく当時江戸で暮らしていた斉藤月岺の『斉藤月岺日記』も興味深いです。
「雪華図説」で文政13年(1830年)2月18日に10種類の雪華が観察できたことが記されていますが、
『斉藤月岺日記』の2月18日に「夜中 朝より雪 昼前止む」と書かれています。

これを見ると、土井利位たちが朝起きて、早い時間に雪華を観察したことが推測できます。
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こんな風に、土井利位がどんな雪の日に観察したのかが具体的に想像できるようになるのが面白いです。

当時の鷹見泉石、馬琴、斉藤月岺の3人が、
それぞれの身分でそれぞれに江戸の町で暮らしていたのに180年後に
こんな風に日記を照らしあわされるとはまさか想像もしていなかっただろうなと思うと、
不思議な気持ちになります。私もそうかもって。

後世誰かが「私」と今、同じ時代に生きながら私が接点がない人物のブログとをつきあわせて
何かを感じ取るのかもしれないな~って。
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青字は引用箇所です。
注意/カタカナで書かれた助詞をひらがなに直しています。
当時の慣用字を現代のひらがなに直しています。
注意を払っていますが誤字脱字あるかもしれません。
気がつけば随時加筆修正します。

【雪の結晶と土井利位】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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雪の結晶」カテゴリの記事

コメント

これ、玉川奈々福さんが土井侯の雪花デザインと思しきデザインの着物を着てらっしゃる姿なのですが、うっとりですよね。
写真、拡大すると、ますます素敵で、奈々福さんにもお似合いだし、ぜひ見てみてください。
https://twitter.com/nanafuku55/status/232046921219444736?uid=65576780&iid=am-117706969213441592720924196&nid=27+232

奈々福さんの浪曲はものすごーくお勧めで、ぜひemiちゃんともいつかご一緒したいと思ってます。
(どうせならこのお着物をきてる時に聞きに行けたらいいですね)

ポポ手さん。ありがとうございます。さっそく教えていただいたところをクリックしてみたのですが、ツイッターですよね?奈々福さんが雪華着物をお召しになっている写真はでてきませんでした。でも古河に縁があるということを書かれていてびっくりしました。

失礼しました!
ここからなら見れるかと思います。
http://tamamiho55.seesaa.net/

ポポ手さん。パソコンが今週使えない環境になってしまっていただいたコメントのアップもご連絡も遅くなってしまい失礼しました。

この柄のかなりこまやかな雪の結晶は、アメリカのベントレーの撮影の雪の結晶だと思います。
それ以外の雪華、前回教えていただいたお写真のものはみな土井利位候によるものではないかと。
土井利位侯による雪華は江戸時代、浮世絵の浴衣の柄などにも描かれたり、鈴木牧之の「北越雪譜」に引用されたり、紋としてポピュラーになり、江戸の人たちを魅了したようです。
雪の結晶を冬の柄としてではなく、涼を求める夏の浴衣の柄にするあたり、日本人の感性がいいなと思います。

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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