雪の結晶番外編/江戸時代の顕微鏡シリーズ(6)⑯~⑳まで
ダイジェスト年表で挙げた⑯~⑳の詳細です。
ネットで原文を読めるところも挙げています。
<本で閲覧できる資料>はみつけにくいものを中心に挙げました。〔挙げていない=本の形態では出版されていない〕ではありません。
青文字=原文。
オレンジ=顕微鏡画像や顕微鏡で観察したスケッチ画がみられるURL。
紫=顕微鏡での雪の結晶観察
ただし書きはこちらをご覧ください。
今回の特におすすめ
⑯大黒屋光太夫がロシアでもらった顕微鏡、美しいです。メトロノームのような形の箱に納められていて、まさに工芸品の趣です。
⑱司馬江漢による顕微鏡で雪の結晶観察図。土井利位の雪華図説発表より30年以上前のものです。現存する資料を見る限り、この司馬江漢の雪花図が日本で最初に描かれた雪の結晶観察図といえるでしょう。
土井利位が雪華観察の参考にしたのがマルチネットの著書ですが、司馬江漢も「マルチネット」の名を出しています。
---------------------------------------------------
⑯1794年(寛政6年)『北槎聞略(ほくさぶんりゃく)』桂川甫周(ほしゅう)編
※甫周は通称。名前は国瑞(くにあきら)。桂川甫周は⑭の『紅毛雑話』を著した森島中良の実兄。
大黒屋光太夫らの見聞をもとにしたロシア誌。大黒屋光太夫がロシアでもらった顕微鏡の絵あり。
記述は顕微鏡(むしめがね)、ミテレスコッポ、ミテレスコープ 。
本文十一冊、付録一冊、衣服・器什の図二巻、地図十点のうち衣服・器什の図の中に光太夫がプーシキンからもらった顕微鏡の図が描かれている。
【顕微鏡の絵に添えられた文章】
原文/ミテレスコツポ 顕微鏡(むしめがね) 諳厄利亜(イギリス)の製なり
私メモ/ロシア語で顕微鏡はмикроскоп (ミクロスコープ)。 ミテレスコツポは光太夫の聞き間違いか。
ネットで閲覧/
【早稲田古典籍総合データベース】ttp://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/では
→「北槎聞略付録図」で検索→No.21、22
直接のURLは
ttp://www.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko08/b08_j0021/b08_j0021_21.jpgとttp://www.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko08/b08_j0021/b08_j0021_22.jpg
【国立公文書館デジタルアーカイブ】ttp://www.digital.archives.go.jp/では
→「北槎聞略 器材・装身具等」で検索→フルカラー→右に画像を送っていくと刀、杖の次に顕微鏡が登場。
直接のURLは
ttp://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/DGDetail_0000000659
本で閲覧/『北槎聞略 大黒屋光太夫ロシア漂流記』桂川甫周著(岩波文庫)p348
【『北槎聞略』の本文で顕微鏡がでてくる箇所】
原文/光太夫停留中ねんごろなりしかたがたより餞別の品あり、(略)ムーシン・プーシキンより砂糖二塊、銅版画五張、 ミテレスコープ(顕微鏡なり図あり)一具。(以下略)
本で閲覧/
『北槎聞略 大黒屋光太夫ロシア漂流記』桂川甫周著。岩波文庫(p57 ~58)
ネットで閲覧/上記の岩波版と文章は違いますが
この出発に際して光太夫が逗留中、懇意だつた人々から餞別の品があつたが、それは次のやうなものであつた。(略)ムーシン・プーシキンより砂糖二塊、銅版書五枚、顕微鏡一個、このムーシン・プーシキンといふ人は非常な蒐集家で(以下略)
【国立国会図書館デジタル化資料】ttp://dl.ndl.go.jp/→「北槎聞略 光太夫ロシア見聞記」で検索→53/218
直接のURLはttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1044275/53
参考画像。18世紀終わり~19世紀初頭のカルペパー型顕微鏡。
オークションのクリスティのHPより
『北槎聞略』に出てくる、光太夫がもらった顕微鏡にそっくりです。
直接のURLはttp://www.christies.com/lotfinder/a-culpeper-type-microscope-late-18th-early-19th/5480119/lot/lot_details.aspx?pos=5&intObjectID=5480119&sid=&page=7
---------------------------------------------------
⑰寛政7年1795年『西遊記』橘南谿(たちばな なんけい)著
天明2年(1782年)に京都を出発し、山陽道、九州、四国、京都へ戻る旅の旅行記。
顕微鏡で水、油、塩、酒などを観察。記述は虫目鏡。
原文/虫目鏡の至て細密なるは、纔(わずか)に一滴の水を針の先に付て見るに、清浄水の中に種々異る異形の虫有て、いまだ世界に見ざる所の生類遊行したり。又、潮を見れば、六角なるもの聚(あつま)りたる也。油は丸きものゝあつまりたる也。水は三角なるものゝ聚りたる也。其外、酒、酢などには種々の虫おびたゝしく有て、一たび是を見る時は、酒、酢、水ともに、いづれも飲がたき程に思ふとなり。(略)
此虫目鏡は仏の天眼にもかつべし。又、一滴の清水に種々の生類あるべしとは、誰人も信ぜざる事なれども、現在見れば余儀なし。
ネットで閲覧/
【近代デジタルライブラリー】ttp://kindai.ndl.go.jp/→「東西遊記・北窓瑣談」で検索→207/343
直接のURLはttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971908/207
本で閲覧/『西遊記』巻之九 「奇器」の項p353より。出典『東路記 己巳紀行 西遊記』新日本古典文学大系98 (岩波書店)。
---------------------------------------------------
⑱1796年(寛政8年)『天球全図』司馬江漢著
顕微鏡で雪の結晶と昆虫を観察。スケッチあり。記述は顕微鏡(ムシメガネ)。
3つのスケッチとそこに書かれた文章は。
【蟻図】私メモ/芥子、粟などは⑭⑮で描かれたものと同一か。
原文/小虫ノ二図 顕微鏡(ムシメガネ)ヲ以テ小虫ヲ観ルニ図ノ如シ、 耳目ノ心ト通ジ、筋骨ヲ動シ、或ハ楽ミ或懼(ヲソル)ルノ情、真ニ人ノ異ルコトナシ、感ズベシ
Aは蟻、Bは蚋(ぶよ) Cは茶たて虫、Dは車前子(しゃせんし)の実 Eは胡麻 1は粟 2は芥子 3は紫蘇の実
ネットで閲覧/
【京都大学電子図書館貴重資料画像】 ttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/→ 「司馬江漢銅版画昆虫拡大図」 直接のURLは ttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/kichosearch/src/ippan385.html
本で閲覧/ 『司馬江漢全集 三』口絵&p91
- - - - - - - - - - - -
【ボウフラ図】 私メモ/⑭で描かれたものと同一か。
原文/以顕微鏡観虫類図 蛣蹶(ぼうふり)全身皆鱗(うろこ)ありて魚の如し、腹中(はらのうち)能(よく)透徹(すきとをり)て臓腑を数ふべく、呼吸(いき)して天気を吐納(はきをさめ)するを見る
4は黒ほうふり 5は鬼ほをふり
ネットで閲覧【京都大学電子図書館貴重資料画像】 ttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/→ 「司馬江漢銅版画昆虫拡大図」
直接のURLは ttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/kichosearch/src/ippan385.html
本で閲覧/ 『司馬江漢全集 三』口絵&p91
- - - - - - - - - - - -
【雪花図】
原文/以顕微鏡観雪花図 雪ハ六出ヲナス、或ハ十二又二十四、皆六数ヲナス、蘭書麻尓智業杜(マルチネト)ト云ニ図アリ、 其形チ数品、彼国五十余度ニシテ寒土ナリ、 故ニ日本ニ未タ見ザル雪ノ形チ多シ
---私メモ---
この文章ですと本の名前がマルチネットのように思えますが、マルチネットは著者名。司馬江漢がマルチネットの『格致問答』の雪の結晶図をみたのでしょう。
その雪の結晶図がこちら。
国立国会図書館の許可をいただいてご紹介します。
司馬江漢の雪華図をネットで閲覧/
【京都大学電子図書館貴重資料画像】 ttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/→ 「司馬江漢銅版画雲花図」 (雲は誤植2012.7.5現在)
直接のURLはttp://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/kichosearch/src/ippan383.html
本で閲覧/ )『司馬江漢全集 三』口絵&p93
↑古河歴史博物館で購入したポストカード。右側が司馬江漢の雪華図です。
---------------------------------------------------
⑲1796年(寛政8年)『和蘭天説』司馬江漢著
文章内で顕微鏡(むしめがね)の記述あり。
原文/西洋の人、眼を解き、其天巧を法(のっと)り、眼鏡或は望遠鏡(とおめがね)顕微鏡(むしめがね)の類を製す。
本で閲覧/『司馬江漢全集 三』p73
---------------------------------------------------
⑳1796年(寛政8年)『虫看鑑野辺若草(むしめがねのべのわかくさ』十返舎一九著
タイトルに虫看鑑(むしめがね)が出てくる読み物。 一寸の虫にも五分の魂ということで、小さな虫をクローズアップして擬人化したことをむしめがねにたとえただけ。顕微鏡で覗いたミクロの世界を描いているわけではなし。
【江戸時代の顕微鏡シリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら
« 雪の結晶番外編/江戸時代の顕微鏡シリーズ(5) 〔11〕~〔15〕まで | トップページ | 横浜の地植えのラベンダーでスティックづくり »
「 雪の結晶」カテゴリの記事
- 雪の次の日。生まれて初めて見た光景。降り注ぐ雪しぶき。(2022.01.15)
- こたべのパッケージに雪の結晶発見!(2020.01.26)
- 2020年1月18日の雪で結晶は撮れるか(2020.01.23)
- 榛原(はいばら)の御朱印帳を手に入れました。土井利位侯の雪華がいっぱい(2020.01.12)
- 雪輪はもっとも好きな雪の文様の図案のひとつ(2019.12.29)
« 雪の結晶番外編/江戸時代の顕微鏡シリーズ(5) 〔11〕~〔15〕まで | トップページ | 横浜の地植えのラベンダーでスティックづくり »
コメント