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2012年8月26日 (日)

雪の結晶を観察した人たち(その11)---マルチネットの『格致問答』の概要&ネットで閲覧できるところ

マルチネットの『格致問答』は
土井利位の『雪華図説』や顕微鏡による雪の結晶観察の功績を語る上で、欠かせない書物。
『格致問答』について詳しく書かれているのは『江戸時代の蘭画と蘭書』磯崎康彦著(ゆまに書房)です。
この本を中心にいくつかの資料とつけあわせ、自分なりにまとめたものを以下記します。

『格致問答(かくちもんどう)』の概要

【原題】『Katechismus der natuur(カテキスムス デル ナトゥール)』
【著者】オランダの教育学者、Johannes Florentius Martinet(ヨハンネス・フロウレンチウス・マルチネット)

【発行】オランダで1778年初版。
     ※その後、加筆修正された改版、簡略版が何度か出版される。
【内容】問答形式で自然科学について著した子供向け教科書。
    全4巻。雪の章と雪の結晶顕微鏡図は第1巻。

日本では

【タイトル表記】『格致問答(かくちもんどう)』
カテキスムス/カテキズム=問答。natuur=自然。格致とは格物致知(かくぶつちち)からきた言葉で、事物の道理、本質を追求するという意味。ですので、問答形式の自然科学の本『Katechismus der natuur』を『格致問答』 と名付けたのは的確でしょう。

【著者表記 】Martinetの表記はさまざまです。
麻尓智業杜・マルチ子ト
 (by司馬江漢 1796年『天球全図』より)江戸時代の顕微鏡シリーズ⑱参照
マルチ子ット
 (by 山村才助『訂正増譯采覧異言. 巻1 』より。↓下記注A参照。
瑪兒低涅多
 (by鷹見泉石 1832年刊『雪華図説』より) 江戸時代の顕微鏡シリーズ(45)参照
馬兒抵涅杜・マルチ子ット
 (by 宇田川榕庵『植学啓原』より) 江戸時代の顕微鏡シリーズ(近日)参照

【日本で格致問答を目に通した主な人物】
朽木昌綱(丹波福知山藩主)
大槻玄沢
小野蘭山
司馬江漢
山村才助
猪俣昌之
土井利位(古河藩主)
鷹見泉石 (古河藩家老)
宇田川榕庵

【雪の結晶の顕微鏡スケッチに注目したのは】
蘭学者や大名など、『各地問答』を目にした人は少なくないはず。けれども、記録に残る限り雪の結晶を顕微鏡で観察したのは上に挙げた中では小野蘭山、司馬江漢、土井利位。

小野蘭山⇒スケッチ図は発見されておらず
司馬江漢⇒雪の結晶顕微鏡スケッチ9種描く
土井利位⇒雪の結晶顕微鏡スケッチ183種描く


20年以上に及ぶライフワークとなった土井利位が群を抜いています。
しかも『雪華図説』には、マルチネットの『格致問答』の中から
雪の効能、雪の結晶顕微鏡図12図(書き写し)の引用もあります。
※雪の効能に関しては猪俣昌之が訳したものも目に通したようです。


『格致問答』をみた人すべてが、「雪の結晶ってきれい。僕も観察してスケッチしよう!」とはならなかったのです。
土井利位の好事家ぶり、稀有さを察していただけると思います。


ちなみに植物学者、宇田川榕庵は『格致問答』の4巻の花粉の顕微鏡図を自著『植学啓原』で紹介しています。
彼は雪の結晶よりも花粉、植物のおしべめしべ、細胞の顕微鏡観察に関心を持ったのですね。

『格致問答』をネットで閲覧できるところ

【静岡県立図書館デジタルライブラリー】
ttp://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/library/→右側の葵文庫→左側の検索窓で『Katechismus der natuur』を入力&検索→青字のタイトルをクリック。
画像か添付ファイルのどちらでご覧になるか選択となります。

土井利位と鷹見泉石が参考にして、『雪華図説』に紹介した雪の結晶顕微鏡図12種は 第1巻AN155001のNo.91/246です。

土井利位たちが、この本をみたんだ!と思うとなんだか彼らの「原点」に近づけたようでうれしくなります
----------------------------------------
(注A)
ネットで閲覧/国立国会図書館デジタル化資料→「訂正増譯采覧異言. 巻1」→26/43右側。

格致問答 和蘭「マルチ子ット」撰
直接のURLは ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2575530/26
---------------------------------------
ネットでマルチネットの格致問答について概況がわかるところ

○国立国会図書館の貴重書展のページ内で
直接のURLは
ttp://www.ndl.go.jp/exhibit/50/html/catalog/c090.html
Snowflake_maltinet12sekka2

マルチネットの『格致問答』内の雪の結晶図。(国立国会図書館)

○茨城県・古河歴史博物館のページ内で
直接のURLはttp://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/rekihaku/sekka2009/3-1.htm

追記/国立国会図書館の画像掲載許可をいただきました

【雪の結晶を観察した人たちシリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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