雪の結晶番外編/江戸時代の顕微鏡シリーズ(13) (48)(49)
ダイジェスト年表で挙げた(48)、(49)の詳細です。
ネットで原文を読めるところも挙げています。
<本で閲覧できる資料>はみつけにくいものを中心に挙げました。〔挙げていない=本の形態では出版されていない〕ではありません。
青文字=原文。
オレンジ=顕微鏡画像や顕微鏡で観察したスケッチ画がみられるURL。
ただし書きはこちらをご覧ください。
今回の特におすすめ
(48)、(49)いずれも、江戸三大農学者の一人とされる大蔵永常の著書です。
綿の実と麦のおしべめしべなどの顕微鏡図、細かいです。
大蔵永常は(44)で稲のおしべめしべの顕微鏡スケッチを描いてますのであわせてご覧ください。
追記/国立国会図書館の画像掲載許可をいただきましたのでアップしました
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(48)1833年(天保4年)『綿圃要務(めんぼようむ)』大蔵永常著
顕微鏡で綿花を観察。スケッチあり。記述は顕微鏡。
綿の実雌雄蘂(めおしべ/しゆうずゐ)の図説の項で顕微鏡で綿の実を観察したスケッチあり。添えられた言葉を抜粋
○二之図は顕微鏡を以て見るところの図なり。三四五六七みな同じ
ネットで閲覧/【国立国会図書館デジタル化資料】→綿圃要務 2巻→No.10/30
直接のURLは ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2556774/10
↑ 国立国会図書館デジタル化資料より。
右上に(一)花の全図がありその下に(二)以下があるのがおわかりにあると思います。
本で閲覧/日本農書全集 15(農山漁村文化協会)p332、337
○四の図は雌蘂(めしべ)の末先を、第一番の顕微鏡にて見るものなり。
ネットで閲覧/【国立国会図書館デジタル化資料】→綿圃要務 2巻→No.11/30
直接のURLは ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2556774/11
本で閲覧/日本農書全集 15(農山漁村文化協会)p337
----余談(7の図のところのたとえに金平糖が登場)-----
7の図は微細なる黄色の球なり。雌雄蘂(めおしべ)の頭に多く着、また其茎所々にも着く。其形ちは正しく丸くして、無数に至微至細の球の如きもの、周囲に着て金平糖の如し。
ネットで閲覧/【国立国会図書館デジタル化資料】→綿圃要務 2巻→No.12/30
直接のURLは ttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2556774/12
本で閲覧/『日本農書全集 15』(農山漁村文化協会)p339
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(49)1834年(天保5年)『農家心得草(のうかこころえくさ)』大蔵永常著
顕微鏡でムギを観察した花井一好の図を掲載、解説を加える。スケッチあり。記述は顕微鏡。
緑文字は『日本農書全集 68』(農山漁村文化協会)に掲載された現代語訳です。
【麦と稲、雌雄蕊(めをずゐ)の事】の項で
或年八十八夜の頃、稲の穂を取来りて、顕微鏡もて見るに、籾一花(もみは稲の花びら也。すゞ花といふは雄ずゐなり)の内に雌蕊二つあり、雄蕊六つあり。此雄蕊が雌蕊を孕ませて、養ひの陽気を伝へて生育さする也。
ある年の八十八夜のころに稲の穂をとってきて、顕微鏡で覗いてみた。稲の花である頴(えい)の内側には、先端が二つに分かれためしべと、六本のおしべがある。一般に「すず花」といっているのは、おしべのことである。このおしべの花粉がめしべについて受精が起こり、陽気によって成長し、米になる。
ネットで閲覧/【近代デジタルライブラリー】→農家心得草→No.10/41
直接のURLは ttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/839135/10
本で閲覧/『日本農書全集 68』(農山漁村文化協会)p250
麦も同じく二雌蕊・三雄蕊にして、子(み)を生育する事は、稲と少しも替る事なき理なり。是は江戸花井一好(かつよし)顕微鏡にて見極て、記されたれば、其図を爰(ここ)に著して、雌穂・雄穂とてわかれなき事を、農家の心得に記すのみ也。
麦も先端が二つに分かれためしべと、三本のおしべを持ち、実を結ぶ過程は、稲と全く同じである。この点は江戸の花井一好が顕微鏡で観察して図を描いている。雌穂・雄穂の区別はないことを農家の人々に理解してもらうため、その図を引いておく。
ネットで閲覧/【近代デジタルライブラリー】→農家心得草→No.10/41
直接のURLはttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/839135/10
本で閲覧/同書p251
【麦花解剖図説(むぎのはなふわけづせつ)】の項で
○第五の図は、雄蕊一本を採り、顕微鏡にて視るに、蓮の葉二枚を筒巻になし、一枝につきたる如し。 (略)
○第五図 おしべ一本の顕微鏡図。はすの葉二枚を筒状に巻いて、一本の枝先につけたように見える (略)。
○第六の図は、雌蕊にて、白綿のごとくにて、顕微鏡をもつて照らし視れば、禽(とり)などの生毛(うぶげ)のごとくに、細小のえだの集まりたるが如くなり。
○第六図 めしべの図。白い綿のように見える。顕微鏡で見ると、鳥のうぶ毛のように、細かな枝状のものが密生している。
○第十一の図は、麦の殻を顕微鏡にて視るに、多く棘ありて、芒(のぎ)も蝦の鬚(ひげ)のごとくに視る。 (略) 右は荏土花井一好の撰ぶ所なり。
○第十一図 麦殻の顕微鏡図。棘が密生し、芒はえびのひげのように見える。 (略) 以上の図は、江戸の花井一好によるものである。
↑国立国会図書館 近代デジタルライブラリーより
ネットで閲覧/【近代デジタルライブラリー】→農家心得草→No.11/41
直接のURLは ttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/839135/11
本で閲覧/同書p251~254
【江戸時代の顕微鏡シリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら
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