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2012年8月30日 (木)

雪の結晶番外編/江戸時代の顕微鏡シリーズ(14) (50)~(52)

ダイジェスト年表で挙げた(50)~(52)の詳細です。

ネットで原文を読めるところも挙げています。
<本で閲覧できる資料>はみつけにくいものを中心に挙げました。〔挙げていない=本の形態では出版されていない〕ではありません。

青文字=原文。
オレンジ=顕微鏡画像や顕微鏡で観察したスケッチ画がみられるURL。

ただし書きはこちらをご覧ください。

今回の特におすすめ

3資料とも雪の結晶雪華図が掲載されています。
(50)の『北越雪譜』の雪華図は土井利位の『雪華図説』を写したもの。
(52)の高木春山が描いた雪華は淡い墨色の丸の中に白くふわっと描かれていてとてもリリカルです。

追記/ネットで(50)『北越雪譜』を閲覧できるところをみつけました。
新潟県立図書館・新潟県立文書館の「越後佐渡デジタルライブラリー」です。
また、このブログに雪華が表紙に描かれた『北越雪譜』のいくつかの画像の掲載許可も新潟県立文書館からいただきましたのでご紹介します。
追記/(52)高木春山の『本草図説』に関して、西尾市岩瀬文庫から画像掲載許可をいただきましたのでご紹介します。
いずれも画像の転載、二次使用はご遠慮ください。
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(50)1837年(天保8年)『北越雪譜』鈴木牧之編撰、京山人百樹刪定

北越雪譜 (岩波文庫 黄 226-1)

050microscope_hokuetsuseppu_chi
↑明治期に出された版。
 土井利位の描いた雪華が表紙を彩っています。(新潟県立文書館所蔵)


顕微鏡の記述が出てくるのは2か所。
土井利位の『雪華図説』から雪華35種を謄写して掲載。
顕微鏡で観察した雪蛆(せつじょ)のスケッチを掲載。
 記述は験微鏡(むしめがね)



【雪の形】の項を詳しく見てみましょう。
験微鏡(むしめがね)に照らし視れば、天造の細工したる雪の形状(かたち)奇々妙々なる事下に図するが如し。 と記述し、土井利位の雪華を35種謄写しています。その雪華がこちら。

↓新潟県立文書館所蔵。『北越雪譜 初編 天』より。
鮮明な画像はぜひ「越後佐渡デジタルライブラリー」でご覧ください。

050microscope_hokuetsuseppu_ten_s_2
↑雪華右脇の言葉は

験微鏡(むしめがね)を以て雪状を審(つまびらか)に視たる図
此図ハ雪花図説の高撰中に在る所五十五品の内を謄写す
是則(すなわち)江戸の雪也
万里をへだてたる紅毛(おらんだ)の雪もこれに同じき物ある事高撰中に詳也
以て天の无量なるを知るべし


050microscope_hokuetsuseppu_ten_s_3
ネットで閲覧/
○【新潟県立図書館・新潟県立文書館】→越後佐渡デジタルライブラリー→「北越雪譜 初編 天」→No.9/33

○雪華35種は【歴史公文書探究サイトぶん蔵】で閲覧可能(2012.8.30現在)
「ぶん蔵 北越雪譜(1)」で検索してみてください。
見開き1枚。牧之が謄写した土井利位雪華をご覧いただけます。忠実に写しているのがおわかりいただけると思います。
本で閲覧/『北越雪譜』鈴木牧之編撰 京山人百樹柵定 岡田武松 校訂(岩波文庫)初編 巻之上 p19~21
-----私メモ----
『雪華図説』では雪華を描くのに顕微鏡を使ったことが明記されてはいませんが、この北越雪譜の文章を読むと、雪華図説を見た人たちは「顕微鏡で観察したもの」と認識していたことがわかりますね。

【雪中の虫】の項で 雪蛆(せつじょ)について述べ、
「験微鏡にて視たる所をこゝに図して物産家の説を俟つ」と雪蛆の絵を紹介しています。

↓新潟県立文書館所蔵。『北越雪譜 初編 天』より。

050microscope_hokuetsuseppu_ten_s_3

ネットで閲覧/【新潟県立図書館・新潟県立文書館】→越後佐渡デジタルライブラリー→「北越雪譜 初編 天」→No.25/33
本で閲覧/同書p47~49

-----私メモ----
この雪蛆の図は、滝沢馬琴が牧之に渡辺崋山に蘭製めがね(顕微鏡)で描かせたらどうかと申し出たことが書簡に遺されています(詳細は(32)-2をご覧ください)


越後佐渡デジタルライブラリーで閲覧できる新潟県立文書館所蔵『北越雪譜』、
  本当に美しいです。
  上記でご紹介した表紙の次のページ(見返し)にも
  土井利位の雪華(水色)がちりばめられていてとてもアート!になっています。
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(51)1840年(天保11年)『続雪華図説』土井利位著
顕微鏡で雪の結晶を観察。スケッチあり。
続雪華図説の中にも顕微鏡という言葉はでてきません。観察について土井利位が述べているのはこの言葉。


往歳余著雪花図説。而後奉 命鎮阪城四年矣、為京尹一年 矣。雖則衹役中、旧癖不除、毎雪 天、輙採視之
(現代語訳)先年私は「雪華図説」を著した。 その後幕命によって大阪城に在ること四年、 京都に一年を過ごした。この役職中にも昔の癖が改まらず、 雪の降るたび採取しては観察した
『雪華図説考』小林禎作著p24~25より

続雪華図説をネットで閲覧/古河歴史博物館のHPで閲覧可能。(2012.8.30現在)
直接のURLは
ttp://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/rekihaku/sekka2009/2-2-1.htm
上記の箇所はNo.3/17(左側)

ここでも雪をとって、視たと述べるだけで、「顕微鏡をつかって」という言葉がありませんね。 どうも土井利位は、雪の結晶を観察したということを書いても、「何を使って」というのをいつも省いている気がします。===============================================================


(52)1832~1852年(天保3年~嘉永4年)頃か。
『本草図説(ほんぞうずせつ)』高木春山(しゅんざん)著
顕微鏡で雪の結晶と赤ボウフラを観察。スケッチあり。記述は眼鏡、顕微鏡

いずれも、西尾市岩瀬文庫から画像掲載許可をいただきましたのでご紹介します。転載、二次使用はご遠慮ください。

-  -  -  -  - - - - - -
雪の結晶が18種、線画ではなく、色つきで描かれています。とてもリリカルです。
052microscope_honzozusetsu_snow
(西尾市岩瀬文庫所蔵 『本草図説』高木春山より)

絵に添えられた言葉は

昨日の臘雪を写し御覧入候    第二 眼鏡を以て図する十八形

ネットで閲覧/未発見
本で閲覧/ 『高木春山 本草図説 動物』 荒俣宏 奥本大三郎監修(リブロポート)p92
もしくは 『本草図説』岩瀬文庫7巻

※ 高木春山の雪花図に関しては、山田功氏の論文
『高木春山作成『本草図説』に残された雪花図について』にて閲覧可能(ただしモノクロ)。
この論文をネットで閲覧/サイニー(ttp://ci.nii.ac.jp/)→高木春山作成『本草図説』に残された雪華図について
直接のURLは
ttp://ci.nii.ac.jp/naid/110007491338
本で閲覧/雑誌「物理教育」2006-12-13

ユスリカの幼虫のあかぼうふら。
052microscope_honzozusetsu_akabou_3
絵に添えられた文章は
赤孑孑 以顕微鏡寫眞
書き下してみますと、 
顕微鏡ヲ以テ眞ヲ写ス 

顕微鏡でスケッチしたその姿は、SF映画に出てくる謎の生物のような不気味さもありかっこいいです

(西尾市岩瀬文庫所蔵 『本草図説』高木春山より)

ネットで閲覧/未発見
本で閲覧/ 『高木春山 本草図説 動物』 荒俣宏 奥本大三郎監修(リブロポート)p
88
もしくは 『本草図説』岩瀬文庫7巻

ぼうふらを顕微鏡で見た姿は⑭『紅毛雑話』にも。
顕微鏡を手にした人がまず覗きたくなるものなのでしょう。そしてその姿に驚嘆したことがわかりますね。

『本草図説』の年代を 1832~1852年と推定したのは山田功氏の論文を参照しました。

(52)-2 1840年(天保11年)頃か。没年より推定。
『蟲譜』吉田高憲著
顕微鏡で観察との明記はないが、セミジラミの精密なスケッチがを見ると
顕微鏡を使用したのではないかと推測されます。
セミジラミをネットで閲覧/国立国会図書館デジタル化資料→虫譜→44/49
直接のURLはttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2537382/44

【江戸時代の顕微鏡シリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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