2013年世界フィギュア観ました
2013年3月の世界フィギュアについて、あくまでも一ファンの感想です。
ショート&フリーで特に心に刻まれた演技トップ3は
男子はデニス・テン(カザフスタン)。
女子は村上佳菜子(日本)、ジ・ジュンリ(中国)です。
その次に浅田真央とコストナー。
◆デニス・テン
こんな素晴らしい選手に成長しているとは!!
ショート。シーズンを締めくくる大舞台で能力を150%発揮できたと言えるのでは。
どこの国の選手であれ、神がかった演技ができたことにスケーター自身が感動するような、
そんな興奮の瞬間に立ちあえるのはうれしいことです。
フリー。ショートが会心の出来で上位に着いてしまうと、
<表彰台を意識し、フリーは気負って失敗>ということもありがちなのに、
まったくそんな浮つきも硬さも感じられませんでした。
キレのよさ、スタミナもあっぱれ。堂々のフリー1位。素晴らしい出来でした。
◆無良崇人
ショート。4回転が1回転になったりしたところは残念ですが、その後それに引きずられて乱れることも、
また挽回しようと気負いすぎることっもなく、やるべきことをきちんとこなすところに
メンタルの強さと今まで自分がやってきたことへの自信を感じました。
大きく堂々とした演技好きです。
◆羽生 結弦
故障を抱えながらも意地をみせましたね。
世界の最終グループで滑ることも、表彰台もあたりまえというポジションを確固たるものにしましたね。
◆高橋大輔
ジャンプの失敗などがありましたが、何度も演技を見直したくなるのは高橋大輔。
特にショートの「月光」が好きです。
トリプルアクセルのあと、手をひらっとはばたかせるのが綺麗。
疾走感、熱情溢れるステップ、やわらかさ。
音の激しさと細やかさと高橋大輔の動きが細部にわたってとぴったり合っていて、
それがとても心地いい名プログラム。
◆村上佳菜子
ショートもフリーも素晴らしかったですが、このフリー、とくに村上佳菜子の持ち味がいきていますね。
最初からずっと曲の世界に入り込んだ真剣な表情。
だからこそ最後のジャンプを決めた後、解放感に溢れたような表情が印象的。
またすぐに引き締まった表情でラストスパート。
そして観客の方を向いて演技が続きフィニッシュで、こちらを振り向く。
その時のはちきれんばかりの喜びの表情がいいですね。
アスリートとして生命のすべてをほとばしらせる素晴らしい演技。
◆ジ・ジュンリ
飛距離のあるトリプルトリプルほかすべてがフレッシュで可憐で素敵。
スピンのポジションも美しいですし、癖のないジャンプ、音楽にあわせて表情豊かに手を動かす、
それだけでうっとりとさせる魅力があります。
これからが楽しみ。
キスアンドクライで隣に座るコーチは、中国男子スケーターとして活躍した李成江なのもうれしいです。
◆コストナー
鼻血のアクシデントがもったいなかったですが、フリーの「ボレロ」はコストナーの魅力がつまった名プログラムですね。
長い手足、すらりとした体つきからでしょうか、スピード感があるのにゆったりとした印象のコストナー。
ジャンプも重みを感じさせず浮遊感すらあります。
長い手足だからこそ、同じポジションをしても独特の雰囲気を作り出すので、
モダンダンスのようなテイストがぴったり。
同じメロディーを繰り返しながら、
どんどん高まってゆくボレロの曲と振付が素晴らしかったです。
◆鈴木明子
ショートの「キルビル」、フリーの「オー」どちらも素敵なプログラム。
◆キムヨナ
フリー。ブランクを感じさせないひきしまった身体と滑り。
後半になっても息があがる様子がなく、スタミナが落ちないのは見事ですね。
難度を落としているといわれますが、他の選手がジャンプのミスがある中で、
ほぼノーミスというのは見栄えにつながります。
トリプルトリプルを決められる技術力、精神力。
強いですね。
鮮やかな色ではなく、墨色の渋いコスチュームも素敵。
でも218点には驚きました。
◆浅田真央
今シーズンは実に楽しそうに滑るショートも、フリーの「白鳥の湖」もEXも魅力的なプログラム。
ショートは、手足の動かし方が小粋でとても新鮮な印象。
こんな風に体を動かすと楽しいんだと真似をしたくなります。
フリーの「白鳥の湖」は意外!という振付はなく、端正な王道のプログラム。
だけど、バレエの「白鳥の湖」の32回転を想わせるステップや優雅な手のはばたきなどなど、
「バレエ」要素をたっぷりとフィギュアに取り入れながらも、
バレエでは不可能な「滑る」というスケートならではの魅力がいっぱい。
白鳥が水上を優雅に泳ぐ様子、バレエですと爪先立ちで移動するパ・ド・ブレ・クーリュなどを使わなければできないけれど、
スケートだと本当にスイーと片足ひとかきで氷上を移動できるのがいいところですよね。
フィギュアスケートだから表現できる白鳥、浅田真央だからこそ表現できる白鳥がありました。
中盤のエッジで円を描きながら、両腕を肩甲骨のあたりから動かすところが好きです。
本当に白鳥が翼をはばたいているみたいにみえます。
結果に関しては
浅田真央フリー134.37点。
技術点65.96点(内訳基礎点62.30点+GOE 3.66点 )
演技構成点68.41点
キムヨナフリー148.34点。
技術点74.73点(内訳基礎点58.22点+GOE16.51点)
演技構成点73.61点
今の採点ルールは難しいですね。
技術の要素としては浅田真央の方が難しいものを入れていたが、
その出来栄えをジャッジするGOE(加点)が伸びず、
キムヨナは難度は落としたプログラムを滑ったものの、
加点が16点以上つき、演技構成点でも5点以上差をつけて148点台に。
ちなみに今回女子フリーでGOEがいいのは、コストナー10.59点。 ジ・ジュンリ 8.81点。
芸術要素のある競技の採点は複雑。
バンクーバーの前から少し疑問でした。
浅田真央がトリプルアクセルを入れなくてもキムヨナと十分競った戦いになる実力だと思っていました。
でも実際にはあの頃からトリプルアクセルを入れほぼノーミスの浅田真央<転倒したキムヨナぐらいの「格付け」ができているような気がします。
予想より点を出してもらえない選手はリスク覚悟でより高難度の要素を詰め込むしかありません。
精神的、肉体的にプレッシャーを課してその先に待っているのは
1)高難度の技を成功させて勝った
2)高難度の技を成功させたのに点が伸びず負けた
3)高難度の技を失敗したり、プレッシャーから自爆して負けた
2)高難度の技を成功して負けた選手VSミスがあったけど逃げ切った選手があった場合、
次の対決で、高難度の技に取り組んでも負けた選手は、より強くプレッシャーを感じるでしょうし、
逃げ切った選手は、少しミスがあっても勝てると精神的なアドバンテージを得られるでしょう。
佐野稔氏は、ソチで浅田真央がキムヨナに勝つためにはトリプルアクセルをショートで1回、
フリーで2回入れて決めたら勝てるというようなことをテレビでおっしゃっていましたが・・・。
トリプルアクセルを決められなかったら勝てない、
こんな風に思いこむことがさらに「格付け」を促すような気がします。
格付けを変えられるかわからないけれど、
浅田真央はまだトリプルの他にできることもあると思うのです。
ビールマンスピン、ステップ他、癖がなく柔軟性を活かした難度の高い、
質の高い滑りをしていますが、もっとその一つ一つの美しさを究められる。
たとえば、アメリカの長洲未来、ロシアのリプニツカヤ。
この2人は他のスケーターと同じ動きをしながらも、
足の甲、手の指先etc.他の選手にない美しさを出しているポジションがあります。
難度や点に反映しなくてもいいから浅田真央が、どの一瞬一瞬も他のどんな選手よりも美しいポジションを作り出して、
願わくば、ビールマンスピンやイナバウアーのように、浅田真央の名前がついた技を創りだしてくれたら。
私自身はソチの優勝よりもそれを望みます。
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記録より記憶。アスリートが輝くのは、自分を極限に追いこんで、渾身の力を振り絞る時。
幅わずか4ミリほどのブレードで氷の上に立つというだけではなく、ギリギリのところに志を立てて挑む時。
そんな時に火打石をカンカン叩き合わせて火花が飛び散るような、
そんな輝きが全身から発せられるのだと思います。
キスアンドクライでの歓びや悔しさが価値あるものになるのだと思います。
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