「星のささやき」シリーズ。英語編を2009年2月1日に取り上げましたが、その時未見だった
『The whisper of stars : a Siberian journey 』Stan Grossfeld著(GLOBE PEQUOT PRESS/1988年)
を読むことができました。

A Whisper of Stars
この本はアメリカ人ジャーナリストのスタン・グラスフェルド氏が、シベリアで星のささやきを体験しようと、
まだ制限の多かったソビエト時代(ゴルバチョフ政権時代)にシベリアを訪ね、自らの写真と文で綴った
本のようです。
私の読解力によれば、彼は結局自分自身では星のささやきを聴いていないと思うのですが、
この本で一番興味深いのは
・「星のささやき」がきこえるのは摂氏マイナス56度以下と記述していること
・「星のささやき」の音を英語で擬音化する際、「Shhhhh」と表現していること です。
主に2か所に星のささやき(whisper of stars)がでてきます。
引用部分は青文字、拙訳はオリーブ色でご紹介します。
①p14~15 〔LENINGRAD, February 2〕の項で。
The search for the whisper of stars begins on a cold February night in Leningrad. 星のささやきを探す旅はレニングラードで2月の寒い夜にはじまった。 "It's too warm for the whisper of stars, " says Arkady I, Kudrya, squinting under his fur hat to keep the snow out of his eyes. "The temperature has to be 56. Then when you breathe out you hear 'Shhhhhhhhhh' . That's the whisper of stars. The breath instantly freezes into crystals of ice. Perhaps we will see this in Siberia. It's called habitation fog, and it can be a problem. (以下私による略) 「星のささやきにはあたたかすぎる」とアルカージー・クドゥリャ氏が雪を眼に入れないため毛皮の帽子の下で目を細めながら言った。「気温は56度になる必要がある。その時には息を吐く時、Shhhhhhhhhhという音を聞くことができる。これが星のささやきだ。息はすぐに氷結する。おそらく私たちはシベリアでこれを見られるだろう。それは居住霧と呼ばれる現象で、問題になるのだ。 (以下私による略)。
Kudrya, my Soviet-appointed escort and translator, means minus 56 degrees Celsius(minus 69 degrees Fahrenheit). But in Siberia―where we would spend nearly a month―nobody bothers saying "minus". ソビエト連邦が指定した護衛かつ通訳者のクドゥリャ氏の56度というのは摂氏マイナス56度(華氏マイナス69度)の意味である。私たちが一か月近く過ごしたシベリアでは誰も氷点下の気温に「マイナス」をつけていなかった。
私メモ/私たち日本人は普段、今日はプラス20度だとわざわざ言いません。20度といえばプラスが当たり前だから。同じように冬のシベリアでは氷点下が当たり前だからわざわざ今日はマイナス40度だ、と言わず、「40度だ」となってしまうのですね。 |
②p143~144 〔OMYAKON, March 20〕の項で。
私メモ/ここで出てくる星のささやきは、グランフェルド氏自身の体験ではなく、1986年3月8日にヴァレンチナさん18才とニーナさん25才が体験した話をきいて書きとめたもののようです。 極寒での彼女たちの体験談の中に「星のささやき」がでてきます。 華氏マイナス40度の中でヴァレンチノさんとニーナさんは道に迷います。心臓に持病のあるヴァレンチナさんをニーナさんは背負いながら歩きます。
They were lost, and now they could hear the whisper of stars because the temperathre had dipped to minus 69 degrees F. (私による略) All they could hear was the Shhhh, Shhhhh, Shhhushing of the whisper of stars. The noise got louder as Nina labored harder with her friend's life on her shoulders. 彼女たちは道に迷った。そしてその時、星のささやきを聞いた。なぜなら気温は華氏マイナス69度(摂氏マイナス56度)を下回ったからだ。(私による略)彼女たちはShhhh, Shhhhhと星がささやく音を聞いた。そのノイズは ニーナがヴァレンチナさんを背負うのがつらくなるにつれ、大きくなっていった。
私メモ/このあと、ヴァレンチナさんはニーナさんに、<このままでは2人とも死ぬ。自分を降ろして1人で行くように。あなたには2人の子供がいるのだから。あなたが助けを連れてもう一度戻ってくるまで私は生きているから>と言います。このあとまた、「星のささやき」という言葉が出てくるのですが、ここではグロスフェルド氏は「星のささやき」を自然現象としてではなく、詩的な表現として用いている気がします。
As she trudged through the snow, her thoughts turned to her two children; and now, in the whisper of stars, she saw their faces. A boy and a girl, ages three and four. Shhhhh, Shhhh, Shhhhh.With every breath she saw them in the icy crystals. The whisper of stars guided her safely back to the camp. 彼女は雪の中を重い足取りで歩きながら、2人の子供たちのことを考えた。そして星のささやきの中に、子供たちの顔を見た。3歳の息子と4歳の娘のの顔を。Shhhhh, Shhhh。星のささやき( 自分の吐く息が立てる音)がする。 呼吸のたびに氷結する息のもやの中に子供たちを見た。星のささやきはキャンプへ彼女を無事に導いた。
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Shhhhhh はうるさい時に「シーッ!」という時の音にも使うようですね。
ロシアで「シュルシャーチ」、日本語でサラサラと表現される「星のささやき」。
どの国の人も S系の音を感じるものなのでしょう。
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