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2013年9月26日 (木)

鷹見泉石日記シリーズ(その6)カステラ以外の贈答スイーツ

『鷹見泉石日記』古河歴史博物館編 全八巻(吉川弘文館)には贈答でカステラが頻繁に登場することを
鷹見泉石日記(その4)でご紹介しました。
今回はカステラ以外のスイーツをご紹介します。

Takami_senseki_by_watanabe_kazan
↑鷹見泉石像(国宝) 渡辺崋山筆

菖蒲餅、朝鮮飴、金平糖、練羊羹、金鍔(きんつば)など出てきますが、
私の目についたのは「五家宝/御家宝(ごかぼう)」「窓の月」でしょうか。

【五家宝】

埼玉県北部から茨城県南部近辺の郷土菓子。
鷹見泉石が家老を勤めた古河藩は茨城県南部、現在古河市あたり。
だからこそご当地グルメの五家宝を贈答に愛用していたのでしょう。
ちなみに鷹見泉石は日記の中で五家宝のことを「五ケ棒」と記しています。

最初に登場するのは天保5年11月15日の日記(見落としがあったら修正します)。
朝倉嫁より五ケ棒一箱 (『鷹見泉石日記』2巻p191~192) と出てきます。
値段は 30本 上が500文 120本 並 が一貫文と記されています。

20130926gokabou
五家宝。私の家ではみんなが好きだったので、
子供の頃から定番のおやつとして食べてきました。
どんな和菓子かというと。
もち米が海苔巻みたいな円柱状になっていて、
まわりにきなこなどがまぶされているものです。
かじると「ぱふっ」と「ねちゃー」が混在する食感。
素朴な甘さが後を引きます。
今ではスーパーにパックされた五家宝などが並んでいて、
手軽にいただけるようになりましたが、
まだ召し上がったことのない方は、
ぜひ、デパートの諸国銘菓などで、昔からの和菓子屋さんが作る五家宝をみつけてみてくださいね。

【窓の月】

「窓の月」は四角い最中のことのようです。
四角い最中の皮の中央にある丸い餡。 その最中をかざすと、
餡の透け具合がまるで窓の向こうの満月のように見えることから「窓の月」となったとか。
幕末の元治元年(1864年)に出された『商売往来絵字引弐編』に「最中の月」が掲載されています。
中に餡を入れる。皮に角があるものを窓の月と呼ぶことが記されています。 ぜひごらんください。
早稲田古典籍総合データベース→商売往来絵字引弐編→no.15
直接のURLはttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko30/bunko30_g0131/bunko30_g0131_p0015.jpg

鷹見泉石日記では天保11年8月25日ほかに登場。

【浦賀の水飴】

私が鷹見泉石日記を読んで初めて知ったのが、浦賀は水飴が有名だったということ。
文政6年2月16日鷹見泉石日記1巻p134に登場します。
雉子橋より、一昨日浦賀水飴一壺御上ケに付、御挨拶手紙にて申上(以下私による略) 。

残念ながら、浦賀で当時の水あめを販売しているところはなさそうですね。
明治36年に書かれた『食道楽』村井弦斎著には浦賀の名物として水飴がでてきます。
第26名物 の章でこんな風に書かれています。

浦賀の水飴は西浦賀田中和泉屋にあり、今は盛に外国に出輸す。

僕はモー少し猶予があれば片瀬へ寄つて龍の口饅頭を買つて鎌倉で力餅を買つて、
浦賀へ廻つて日本一の 水飴を買つて、金沢では藻ヅクを買つて来やうと思つた


近代デジタルライブラリー→食道楽→46/186と47/186
直接のURLは
ttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/886113/46
ttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/886113/47

グーグルブックスでもこの『食道楽』は閲覧できます。

(2015.11.10追記)

Kanageohis1964さんがご自身のブログ「地誌のはざまに」にて、
浦賀水飴に関する興味深い記事を書いていらっしゃいます。
↓こちらです。
「浦賀の水飴について」その1 その2

さまざまな文献を探られて、
江戸時代から昭和に入って衰退したと思われる浦賀水飴のことを詳しく知ることができました。
ありがとうございます!


(2015.11.11追記)
「南総里見八犬伝」でおなじみの馬琴の日記にも浦賀水飴が登場していたことを思い出し
読み返してみました。ビンゴです!
天保時代の日記だけでも数か所以上登場していました!!
江戸の町で取り寄せで入手したり、鎌倉に出かけた人からお土産でもらったようです。
ちなみに「被贈」がもらったということです。

3か所ご紹介します。

(天保5年1月12日の日記より)
西浦賀水飴、曲物入、被贈之。 

(天保5年7月14日)
本町一丁めにて取次候西浦賀水飴、清右衛門へ申付候につき、今日かひ取候よしにて、
今夕、宗伯
(私メモ/馬琴の息子)請取、持参す。 

(嘉永元年5月26日)
市兵衛事、昨夜、鎌倉より帰宅の由にて、浦賀水飴二壺、被贈。 
いずれも『曲亭馬琴日記 4』(中央公論新社 2009)より引用


【越の雪】

銘菓として名高い「越の雪」を鷹見泉石も貰って口にしていたのですね。
弘化3年12月15日の日記に登場します。
小山周軒来、越後長岡大和屋製森橋台と有之越の雪一折貰(『鷹見泉石日記』7巻p337)

大和屋さんのHP(ttp://www.koshinoyuki-yamatoya.co.jp/)を拝見すると
安永7年(1778年)に生まれたお菓子で、
文化6年(1809年)には藩の贈り物用菓子の御用達を命じられたこと、
天保時代には『越乃雪』は藩主や藩士の参勤交代の贈答品として盛んに求められたため、
江戸をはじめ蝦夷地や上方にまで広く知られるようになったことが書かれています。
歴史のあるお菓子なのですね。

兵三郎へ古河越雪一箱という一文が安政3年3月12日の日記に出てきます。(『鷹見泉石日記』8巻p348)
古河でも越の雪のようなお菓子が作られているのでしょうか。

【六の花】

嘉永4年3月8日の日記
むつの花調、百六十四文位
翌3月9日の日記
藤太郎来、六の花一箱貰  (鷹見泉石日記8巻p252~253)他に登場します。
どこのどんなお菓子かわからないのですが、雪の結晶をかたどったお菓子でしょうか。

【ロシアのお菓子】

ロシアのお菓子も登場します。
魯西亜菓子三品被下。嘉永7年2月晦日の日記。(『鷹見泉石日記』8巻p296 )

【その他】

風月堂の名前はたびたび出てきます。

また、お店の名前が明記された記述では
栃木上町木島蜂竜亭の菓子「渡鳥」「鶏蛋糕饅頭」

(弘化4年11月16日17日。『鷹見泉石日記』8巻p82~83)も出てきますが
「蜂竜亭」については調べてもわからずでした。

【鷹見泉石日記シリーズ】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

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コメント

こんにちは。

本日私のブログで浦賀の水飴についての記事を書きましたが、その中でこちらの記事へのリンクを張らせて戴きました。生憎と「鷹見泉石日記」は未読ですが、機会があれば手に取りたいと考えています。

kanageohis1964さま。ブログをご覧くださりありがとうございます。早速「地誌のはざまに」を拝見させていただきました。丁寧にご紹介くださりありがとうございます。

私は鷹見泉石の日記を読むまで浦賀水飴というものを知りませんでした。
興味持ち始めていたので、「地誌のはざまに」でいろんなことがわかりうれしくなりました。
今、PCを修理に出しており、ネットがしづらい状況ですが今週末にはまた環境がととのいます。そのころ、私の記事からも浦賀水飴に関して、「地誌のはざまに」をリンクでご紹介させていただいてよろしいでしょうか。

お返事有り難うございました。ご紹介いただければ大歓迎です。よろしくお願いいたします。

私の方こそよろしくお願いいたします

追記ありがとうございます。

馬琴の日記にもありましたか。天保年間ですと既に還暦を過ぎていたことになりますし、やはり高齢者向けに、ということだったのでしょうね。

Kanageohis1964さま。
そうなんです。馬琴の日記に何回も登場していました。粟水飴や普通に水飴と記した表記も。
じっくりと本文を追っていませんが、馬琴家は本人も息子も孫も闘病で苦しんだ時期がありますので、みんなの滋養にもなっていたのかもしれません。

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  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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