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2013年11月28日 (木)

ジョロウグモ(その3)嵐の次の日に感動。

2013年10月31日(クモの画像あり)、
2013年11月10日(クモの画像なし)で
ご紹介した<ジョロウグモの網>のその後です。

クモは見るだけでも鳥肌で苦手だった私が、網のあまりの美しさに虜になり、
観察続けているわけですが、これまでの流れを。

網の色
10月
21日(月)白。携帯ではっきり撮れる。
25日(金)ほぼ透明。細くなっているのか。撮るも写らず。

網の形
10月
21日(月)五線譜状
23日(水)縦糸と横糸が増え、五線譜ではなくなる。

その後、虫がかかったり、落ち葉が張りついたり。
伝染した網タイツのように穴がところどころあいては、
しばらく経つと修復されているの繰り返し。

でした。

25日(月)も落ち葉が網に張りついていて、
相変わらずジョロウグモは網に中央にゴールキーパーのごとく鎮座。

という状態でした。

さて、私の住んでいる地方は11月25日(月)の夜から台風並みの雨と風となりました。

そんな嵐一過の26日(火)の朝。
ジョロウグモはどうなっているでしょうか。

網ごと吹き飛ばされちゃったかな~。
残っていても落ち葉がいっぱい網にくっついて、ぼろぼろかな~と思いきや。

パーフェクトな美しい網がひろがっていました!!
落ち葉の一枚、小さな羽虫の一匹もひっかかっていません

私が見たのは朝の6時45分ぐらいです。
嵐が去って、夜が明けてからそんなに時間は経っていません。
ソッコウで網を修復したのでしょうか。

色…白さが戻っていました。ですので、写りました。

形…横糸にところどころ隙間がある五線譜状。

結論。最初に網を張った10月21日の網の時ほどではないけれど、
色も白くなり、形も整っていたので、かなり一からの修復に近かったのかな~と。

では早速、その様子をアップします。

クモの画像は「続きを読む」をクリックしたら出るようにしました。

それまでは蜘蛛画像はないのでご安心ください。
網がちょっとでもよく見えるようにと画像を大きくアップします。
どうでしょう。網が見えますか。
20131126spider2



20131126spider2plus
参考になればと、網の弧のカーブをざっと赤で示してみます

続きは、クモ画像も出てくる「続きを読む」を。

 

 

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2013年11月21日 (木)

関井一夫さんの万華鏡展が日本橋高島屋で開催されています。

関井一夫さんの万華鏡は
2013年1月9日に雪の結晶モチーフの作品を、
2013年2月21日には桜モチーフの万華鏡etc.をご紹介させていただきましたが、
現在日本橋高島屋で関井一夫さんの万華鏡展がおこなわれています。
30年来の親友と行ってきました。
世の中狭いもので、彼女は美大受験の学校で関井さんの教え子でもあったのです。

万華鏡というと民芸品のカシャカシャまわすもの、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、「工芸品」となった万華鏡の数々を楽しませていただきました。
すべて、オイルタイプの万華鏡です。まわすと、柄がゆっくりと変わります。
色合い、質感、フォルム、その美しさにうっとり。音楽が聞こえてくるようでした。

場内は撮影禁止ですが、ご厚意で撮らせていただき、またその画像をブログでご紹介することも承諾いただきましたので、詳しくレポさせていただきます。
(関井一夫さま、高島屋美術画廊さま、ありがとうございます)

こちらは、竜宮の亀がモチーフになった作品です。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu01

亀の顔もかわいいです
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu02

青い海の底のような世界が広がります。
いろんな色を使わず、オブジェクトは
藍、瑠璃、青、白のブルー系がほとんど。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu03

そうなると単調になるかと思いきや違うんですね。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu05

青系オブジェクトたちが作り出すグラデーションの中に金属がさまざまな図形を描いていくので、
とても表情豊か。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu06

深い海の底のようでもあり、イスラムの寺院の幾何学模様の青いモザイク装飾のようでもあります。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_ryugu07

こちらは、トパーズのようなイエロー系のハーモニーが印象的でした。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_01_2

Kaleidoscope_sekii_kazuo_02

Kaleidoscope_sekii_kazuo_03

こちらは「トロイの木馬」という作品。
黒いボディーは木ではなくて、金属に漆を塗ったのだとか。
真鍮の渋い金色と黒がとてもクールでオブジェとしても素敵。
足の下に車輪がついていて、動くんですよ!
Kaleidoscope_sekii_kazuo_trojan_hor

剣の形や、馬にちなんでUの字の馬蹄形のオブジェクトも使われています。
とてもマニッシュでかっこいい色合いです。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_trojan_h_2

赤系のオブジェクトを入れた華やかバージョンも。

馬蹄形は西洋では幸せのシンボル。
午年にもぴったりですね。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_trojan_h_3

こちらは「アルテミス」という作品です。
美しい女性の姿。
鍛金作家として多くのオブジェ、像を創ってこられた関井さんならではのフォルムですね。

↓アルテミスの外観は撮り忘れたので、親友が撮影した画像をご紹介
Kaleidoscope_sekii_kazuo_artemis05

アルテミスはギリシャ神話の月の女神です。
真鍮の落ち着いた色合い、ひゅるんとした模様・・・
古代的、神秘的ですが、近未来的なテイストも感じませんか。

女性の体が万華鏡となっています。さやから剣を抜くように抜いて覗くと。

宇宙的です。筒が長いせいか、奥行きを感じます。
漆黒の宇宙の果てに華が咲いているような感覚!!
Kaleidoscope_sekii_kazuo_artemis01

万華鏡の筒の内壁に無限に柄が広がるのではなく、
Kaleidoscope_sekii_kazuo_artemis02

こんな風に壁面は黒いままというのもいいですね。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_artemis03

黒いままといっても、宝石の反射のように壁面がほのかに光と色を帯びているのも趣があります。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_artemis04


こちらはワルキューレ。重厚で華やか。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_valkyrie01
シンフォニーが聞こえてきそう。
私はふとボリショイ劇場やオペラ座のきらびやかな内装を連想しました。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_valkyrie02

Kaleidoscope_sekii_kazuo_valkyrie03

Kaleidoscope_sekii_kazuo_valkyrie04

こちらはたしか「オリハルコン」。
透明、乳白色のような半透明etc.のオブジェクトが
きらびやかさとやわらかさを醸し出しています。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_orichalcum


黒猫がモチーフの万華鏡にもしびれました。
首輪の部分がオブジェクトになっているのです。飾っておくだけでもカラフルで楽しいですね。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat01

足元にのぞき穴があります。
猫を抱き上げ、逆さにして覗くと・・・
最初に白と赤のコントラストの柄となりました。
最近、江戸時代の浮世絵に描かれた猫を追っていて、白い毛に赤い首輪の猫の絵をたくさんみていたので、
「浮世絵の猫みたい」と思ってしましました
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat02
↑赤いちりめんの首輪をつけた白猫みたい

カラフルなオブジェクトがいっぱい用いられているので、
少し動かすとこんな風に様変わり。
あら、中央に見えるのは猫?と思った方もいるでしょう。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat03
ニクイですね~。
子猫の顔をかたどったオブジェクトを創って加えていらっしゃるのです。

アップで
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat04_2
まるで花園で子猫がかくれんぼをしているみたい!!

家政婦は見た、のように顔を出す子猫ちゃん。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat05_2

子猫ちゃんがいろんな風に顔を出したり、隠れたり。ずっと廻して眺めていても飽きません。
Kaleidoscope_sekii_kazuo_cat06_2

「---万華鏡--- 関井一夫展」は
日本橋高島屋6階美術彫刻コーナーで11月26日(火)までです(最終日は16時まで)。

私がいろんな万華鏡を見させていただたいている間にもお客様が購入され、ご自宅に持って帰られていきました。
上記にご紹介した万華鏡がすでになくなっている場合もあるかもしれません。
どうぞご了承ください。

関井一夫さん万華鏡INDEXはこちら

2013年11月16日 (土)

2014年の月の満ち欠けカレンダーができあがりました

2013年もあと残すところ1ケ月半。
そろそろ街に2014年のカレンダーや手帳が並び始めていますね。

好評いただいている月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)。
2014年版のミニコラムも担当させていただきました。

今年も壁掛け(B4サイズ)と、卓上とフロッピーサイズ(約9.5センチ×9.5センチ)の3タイプが登場しています。
壁掛けと卓上サイズはそれぞれの日にメモ罫線がついています。

ムーンカレンダーというと黒地(闇)に黄色(月)という配色とイメージされるかもしれませんが、
毎月いろんな配色で描かれています。
たとえば2014年9月は
平日&土曜日が落ち着いたブラウン
日曜&祝日が落ち着いたコーラルピンク
そこに毎日さまざまな形のお月様の黄色が加わります。

おしゃれな配色が素敵でカフェインテリアにもぴったりなのですが、
仏滅、大安などの六曜も記され、
その日が旧暦の何月何日にあたるのかもわかるすぐれものなのです。

こちらはフロッピーサイズ版。
20131116mooncalendar2014
机の上に立てることができるので便利です。

表紙のお月様の絵も愛らしいですね。
ちなみに一日ごとの月の絵には顔はありません。

大きな文房具店他で販売されています。
グリーティングライフさんのオンラインショップ
「papermint」http://papermint.jp/でも購入できます。
左下のサーチ→カレンダーに絞って「月の満ち欠け」で検索ください。

楽天でも取り扱ってくださっているところがあります。
お取扱いはこれからカレンダーシーズンに向けて増えるかと思います。

ぜひ来年もお手元に置いて、ご活用いただけたらうれしいです。

2013年11月14日 (木)

朧月猫の草子、面白いです

国芳の猫を11月7日にご紹介しましたが、
江戸時代の浮世絵師、国芳の作品を追っているのは、
土井利位の描いた雪華を国芳がモチーフで使っているからなのですが、
またまた面白い本をみつけました。

『朧月猫の草子(おぼろづきねこのそうし)』
天保13年頃に出された本です。

私は曲亭馬琴、歌川国芳、鈴木牧之、山東京山は、
「土井利位の雪華普及委員会」のメンバーだったのではと思っています。

もちろんこんな委員会は江戸時代にないし、
彼らも別に普及させようと思ったわけではないと思うのですが、
雪華を町民にまで広めてブームを起こすキーマンになっていると思うのです。

曲亭馬琴---土井利位の『雪華図説』の写しを借りて自らも雪花図を模写する。
歌川国芳---浮世絵に雪華をモチーフとして使う
鈴木牧之---自著『北越雪譜』で土井利位の雪華を紹介。この本はベストセラーとなる。
山東京山---『北越雪譜』の柵定(加筆修正、ディレクションのようなこと)を行う。

さて、話はもとに戻して、
この『朧月猫の草子』は上にあげた国芳(画)と山東京山(作)が組んだ作品です。
この作品には土井利位の雪華は出てきませんでしたが、猫の愛くるしさが愉しめる作品でした。

11月7日のブログで、江戸時代(天保のころ)、
猫の首に、鈴をつけた赤いちりめんなどの布を巻くのが流行ったことを書きましたが、
『朧月猫の草紙』の中にこんな記述がありました。

黒より黒き毛に、雪より白い斑猫(ぶちねこ)、燃えたつ緋縮緬(ひちりめん)の首玉かけしを
美しき娘の抱きたるは、牡丹に蝶のとまりたるがごとし。
p9(初編上巻)

※首玉=首輪

拙訳で。

黒々とした毛と雪より白い毛のぶち模様の身体に
燃えるような赤い縮緬の首輪をつけた猫を
美しい娘が抱いた様子は、牡丹に蝶がとまっているようだ。

江戸時代の浮世絵で猫を抱く美人画はいくつもみかけます。
浮世絵師にとって<美人&赤い首輪の猫>は格好の題材だったのでしょう。

さてこの『朧月猫の草紙』、浮世絵とは違い線画で描かれた猫が秀逸。
線画だからこそ、現代にも通じる漫画や軽いイラスト風。
こんな仕草あるある、と猫好きがうなる仕草の描写が上手いですし、ラブリーな絵もあります。

また、山東京山の文章にも驚かされます。
こんな単語を江戸時代に使っていたの?と驚く単語が出てくるのです。

1)うんこ
2)びちびち
3)にゃんにゃん
4)ごろにゃん

ここのうちのどれでしょう。

答えは全部。

1)
百姓与茂作が話に、肥(こやし)のうんこは芝居、又は、色町のうんこがよく肥にきくなり。
故に値段も高し。これは美味きもの沢山ゆゑなり。
p64(二編上巻)

拙訳で。

百姓の与茂作の話では、こやしのうんこは芝居関係、色町のうんこがいいこやしとなる。
そのために値段も高い。これは彼らがおいしいものをたくさん食べているからである。


2)下痢のことをびちびちというのは火垂るの墓の節子の「びちびちやねん」で知りましたが、
江戸時代にすでに使われていたのですね


美味しきもの沢山食べたる故、びちびちの臭ひ、常にまさりたり p64(二編上巻)

たびたびのびちびちに、「これは腹を損ねたるならん」  p64(二編上巻)

3)
にやんにやん」と鳴く。 p74(二編下巻)

4)大猫が、メス猫のこまになびく様子を、
美しきこまを見て、「ごろにやん」と鳴く声に と書かれています。p81(二編下巻)

この他にもしびれる場面がいっぱい。
p57(二編上巻)では こまという猫が喜ぶ様子を、
こまが顎を掻くに鈴のからからと鳴る音も、金なればすぐれたる響きなり p57 と描写しています。

p89(二編下巻)には子猫のふくがトイレをした後、砂をかける絵が描かれています。
添えられた文章は
「おやおや、ご覧じまし。小さくても足で砂をかけます」

当たり前といえば当たり前ですが、
150年前も猫は砂にうんちやおしっこをする習性だったというのが面白いなあと思います。

いつの時代でも猫は同じような仕草をするし、
いつの時代であっても人間は猫の一瞬一瞬に同じように愛くるしさを感じてしまう。


そんなことが『朧月猫の草紙』から感じ取れます。

引用(青文字)はすべて
『朧月猫の草紙 初・二編』山東京山(さんとうきょうざん)作 歌川国芳画 林美一校訂
(河出書房新社 1985)からです。


さて、この本、図書館で借りて読んだのですが、アマゾンで売ってるかな~と調べていたらなんと
現代語訳つきで新たに発刊されることがわかりました。
しかも初編から7編まで全部網羅。しかも今月の18日に発売。

楽しみです。

おこまの大冒険〜朧月猫の草紙〜

 

2013年11月13日 (水)

宮原知子のショートプログラム、何度もリピートして魅入ってしまいます

NHK杯で「戦場のメリークリスマス」を使ったプログラムを披露。

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2013年11月10日 (日)

ジョロウグモ(その2)網、その後

2013年10月31日のブログでご紹介した五線譜の網をつくるジョロウグモ。
その後をお伝えします。

発見した21日からの流れを。

10月
21日(月)早朝発見。五線譜状の白く輝く網に魅せられました。
22日(火)五線譜網健在。
23日(水)縦糸と横糸が増えていて五線譜ではなくなっていました。
25日(金)糸は白さがなくなりました。細くなったのでしょうか、写メで写らず。
30日(水)虫がかかった後でしょうか。穴が開いていました。でもジョロウグモは修復する気配なく
      網の中央に仁王立ち。

11月
1日(金)何か所か穴が開いていました。
     ジョロウグモは相変わらず穴を放置したまま、中央でゴールキーパーのごとく仁王立ち。
5日(火)穴が修復されていました。けれど網の色は薄く、糸も細く、目で凝らしてやっとわかるくらい。
     写メをしたらかろうじて写りました。
     わかりづらいかもしれませんが、写真の上半分ぐらいに網があります。
20131110spider1_3




8日(金)網は健在。シャボン玉の消えかけのように目にかすかに見えるくらいの網のまんなかに
     ジョロウグモ。霧吹きを網にかけたらシルエットが浮かび上がるかしらと思うのですが
     他人の住宅の植え込みの網なので断念。

ジョロウグモが、今の網をとっぱらって、美しい五線譜網を一からつくりなおすことはないのでしょうか。
となると、次にNEWの網を作るのは1年後。来年の10月が待ち遠しいです。

それにしても、私がまさか、蜘蛛の観察をすることになるとは。
自ら、蜘蛛に近づいていくことがあるとは。蜘蛛の図鑑を手に取ることがあるとは。
人生ウン十年生きていてもまだ知らない現象がいっぱいあるのですね。

五線譜網に出会ったのは早朝だったのですが、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」をなぜか口ずさんで歩いていた時だったのです。
なので、五線譜網は、早朝から動き出す私への「自然からのごほうび」みたいな気持ちになりました。

20131110spider2_2
さて、こちらは植え込みに張られた網。雨上がりだったので水滴が綺麗でした。
ジョロウグモがつくったものではありません。
図鑑によると西洋では「妖精のスカーフ」と呼ばれているとか。

ジョロウグモの網のその後は2013年11月28日のブログに。

2014年のジョロウグモは2014年10月15日のブログに。

ジョロウグモINDEXはこちら

2013年11月 7日 (木)

浮世絵の中の雪華シリーズ(その1)国芳の猫の着物がしびれます

11月2日にもご紹介しましたが、
浮世絵師、歌川国芳(うたがわくによし)の描く猫、大好きです。
けっして、ゆるきゃらのようなラブリーさはなく、
むしろリアルで不細工だったり化け猫チックだったりするのですが、
猫のいろんなしぐさを躍動感を持って描いているところに、真の<猫好き>を感じます。

国芳の2つの魅力「猫への愛情」と「現代人にも通じるナンセンス」さを
併せ持つしびれる作品といえば、まず挙げたいのが「猫のけいこ」天保12年(1841年)頃。
こちらの絵です。
Kuniyoshi_nekonokeiko_

猫が着物を着て浄瑠璃の稽古をしているのですが、右側(師匠)の猫の着物の柄に注目!!!
なんと猫の足跡が模様になっているではありませんか!
2013年11月2日にご紹介した
『ねこと国芳』金子信久著(パイインターナショナル 2012)にも掲載されていますが、
『江戸猫 浮世絵 猫づくし』稲垣進一、悳俊彦著(東京書籍 2010)ではこんな解説が。

イキな師匠に浄瑠璃を習っている男猫たち。
二人の着物の藍色が朱色に映えて美しい。
けいこの二人とそれを見つめるちょっと年配の男猫。
三人の熱中ぶりがなんとも微笑ましいではありませんか。、この絵でも着物の柄が面白い。
師匠は鈴、小判、猫の足跡。弟子の浴衣の柄はフカのヒレ
うしろの男の着物の柄は蛸の脚と猫の好物で見繕っています。


その柄をアップでご覧いただきましょう。私が便宜的に丸数字を振りました。
Kuniyoshi_nekonokeiko_up3__8

①鈴(当時、ちりめんなどの赤い布に鈴を通したものを
 猫の首に巻くのが流行っていたようです。(猫の首輪に関しては11月14日にも) 
 その赤い布にたくさんの鈴をつけたのがこの柄ですね。
20131107kuniyoshi_nezumiyokenoneko2
参考 「鼠よけの猫」(国芳)

②小判。もちろん「猫に小判」の諺からですね。
  小判柄の着物を着ている猫は国芳のほかの作品にも登場します。

③猫の足跡。かわいすぎます!!

④子安貝(私の推測)。
  国芳の「猫のすゞみ」で子安貝の柄の着物を着た猫が描かれているので。
  でも、なぜ猫に子安貝なのでしょう。

⑤魚の骨(私の推測)。魚の骨を3つ並べたものかと。

⑥めざし(私の推測)めざしを6つ放射状に並べたのかなと。

⑦不明。

⑧不明。

しびれませんか~。この発想。

そして、私がさらにしびれるのは、
これらの模様が土井利位(どいとしつら)が描いた雪華(顕微鏡で観察してスケッチした雪の結晶)を
モチーフにしているのではと思うからです。

「え~。六弁だからといって雪の結晶ではなくて、花の咲いた様子をアレンジしたんじゃないの」
「家紋をモチーフにしたのでは」とおっしゃる方もいるかもしれません。
そのことを指摘した研究者や文献を見たことがないので、あくまでも私の推測ですが、根拠は3つ。

【1】この絵の発表年とされる天保12年(1841年)は土井利位の『雪華図説』『続雪華図説』刊行後。
【2】フォルムが土井利位の雪華に酷似している。
【3】国芳が土井利位の雪華を知っていて、実際に浮世絵に描いたことがある。


【1】土井利位の『雪華図説』は天保3年(1832年)、『続雪華図説』は天保11年(1840年)刊行です。

【2】古河歴史博物館の図録『雪の華』の雪華表と照らし合わせてみると。
  ※番号はこの図録での通し番号です。

②の小判や④の子安貝に似ているのが『続雪華図説』のR4
Sdoi_r4n

③の猫の足跡に似ているのが『続雪華図説』のO8
Sdoi_o8n

⑤の魚の骨にそっくりなのが『雪華図説』のB3
Sdoi_b3n

⑥のめざしは『雪華図説』のC1や『続雪華図説』のK4
Sdoi_c1n
Sdoi_k4n



⑧は柄の全貌が見えませんが、特徴は放射状に延びる6本の中心が丸になっていること。
『雪華図説』のD5に同じ特徴があります。
また、国芳はこのD5を自分の作品『清月の月』や『蚕家織子之図』で描いています
Sdoi_d5n

【3】国芳が土井利位の雪華を用いた作品を挙げます。
  (※発表年は掲載されている本やKuniyoshi projectを参考にしました)

◆『美人子ども十二ケ月シリーズ 清月の月』天保6年(1835年)
 ネットで閲覧/kuniyoshi project (ttp://www.kuniyoshiproject.com/)→
 Untitled series of women in the twelve months→Clear Moon in August

 本で閲覧/『国芳』鈴木重三編著(平凡社 1992)

◆『本朝水滸伝剛勇八百人一個 犬山道節忠與
 (ほんちょうすいこでんごうゆうはっぴゃくにんのひとり いぬやまどうせつただとも)』
  天保7年(1836年)頃。
  ネットで閲覧/公的なものは未発見
  本で閲覧/『八犬伝の世界』(監修服部仁/千葉市美術館、愛媛県美術館 2008)

◆『子供遊八行の内 礼(こどもあそびはっこうのうち れい)』天保11年(1840年)
 ネットで閲覧/kuniyoshi project (ttp://www.kuniyoshiproject.com/)→
 Miscellaneous Prints of Children Part I
→Children’s Games for the Eight Dispositions

Rei
 本で閲覧/『ねこと国芳』金子信久著(パイインターナショナル 2012)

◆『雅遊五節句之内 弥生(おさなあそび ごせっくのうち やよい) 』天保11年(1840年)
 ネットで閲覧/
 くもん子ども浮世絵ミュージアムttp://www.kumon-ukiyoe.jp/→雅遊五節句之内 弥生
 kuniyoshi project (ttp://www.kuniyoshiproject.com/)→
 Children’s Games for the Five Festivals
→Yayoi

◆『蚕家織子之図(さんかしょくのず) 第九』天保11年(1840年)

 


 ネットで閲覧/
 
くもん子ども浮世絵ミュージアム(ttp://www.kumon-ukiyoe.jp/)蚕家織子之図 第九〈選別調整〉
 
東京農工大学付属繊維博物館新版VR浮世絵展示室
 (ttp://www.biblio.tuat.ac.jp/vr-museum/ukiyoe.htm)
→浮世絵リストNo.6→蚕家織子之図第九 
 kuniyoshi project(ttp://www.kuniyoshiproject.com/)→Weavers’ Children in the SilkwormHouse

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上記の作品をご覧いただくと、国芳が土井利位の雪華を知っていて自身の作品でモチーフに使ったことが
おわかりいただけるでしょう。

『猫のけいこ』の柄が土井利位の雪華がモチーフになっているというのは
あくまでも私の推測でしかありませんが、
国芳の発想の天衣無縫さが楽しいです。

こちらは2013.2.7のディズニーのダッフィーが着ている
洋服の柄です。雪の結晶がミッキーの形になっています。
Duffy_snow5_3

『猫のけいこ』の猫の足跡(肉球)柄。
Kuniyoshi_nekonokeiko_nekonoashia_2

国芳はディズニーのような遊び心を江戸時代に発揮していたのですね。おそるべし!!

「猫のけいこ」が掲載されている『江戸猫 浮世絵 猫づくし』は、
国芳を中心に国貞の作品なども紹介されています。
『ねこと国芳』と並んで猫好きにおすすめしたい一冊です。
江戸猫 浮世絵 猫づくし


【雪の結晶とアート】INDEXはこちら
雪の結晶全般はこちら

2013年11月 2日 (土)

猫好き必見! 猫好きへのプレゼントに最適。国芳の猫本に国民的キャラクターも!!

江戸時代の浮世絵師、国芳が猫好きで猫を登場させた作品をいくつも発表しています。
猫以外でも金魚が擬人化されたりと、ユニークな作品が多い国芳は私も結構好き。

昨日、『ねこと国芳』という本をみつけました。

ねこと国芳

 



これがマイヒット!!!

重い画集とは違ってコンパクトなA5サイズ。そしておしゃれ。
英語と日本語で書かれ、何より、国芳が猫を描いた浮世絵がいっぱい紹介されているのです。

登場する猫は決して、ゆるキャラのようなラブリーさを狙ってはおらず、
写実的で、どちらかというとリアルすぎて、少しぶきみだったりするのですが、
それがかえって愛らしいです。

どれもいとおしくなる猫ちゃんたちばかりなのですが、私が特に気に入ったのは。

「於竹大日如来の由来(おたけだいにちにょらいのゆらい)」p35
女性の着物の裾の中に猫がもぐっています。

「譬諭草をしへ早引 輪(たとえぐさおしえはやびき わ)」p41
猫が寝ている様子がかわいいです~。

「うろたへた小猫盆画へ屎をたれ(うろたえたこねこ ぼんがへくそをたれ)」p64
板の上に砂で描く「盆画」にちょこんと座って、子猫がうんちをしちゃっている様子が描かれています。

猫といえば砂を掘ってトイレする習性がありますよね。あたりまえかもしれませんが、
江戸時代の猫も、砂→手でホリホリ→トイレの本能があったんだなって感心してしまいます。

最高にしびれたのが
「艶曲揃(えんぎょくぞろい)」p54
本を読む女性の背中に猫が乗っている絵です。
私もよく背中の上に猫がのってくるのを経験しているので、
江戸時代の猫も同じか~習性って面白いな~と思いました。
でもしびれたのはほかにも理由が。
この絵に描かれた猫がなんと、なんと、なんと、あの国民的キャラクターに似ているのです。
それは。


天才バカボンのパパ!!!
この本の著者、金子信久氏もこう書いていらっしゃいます。
国芳の猫としては珍しい顔立ちで、余計な話ではあるが、赤塚不二夫の『天才バカボン』が
連想されてならない。


国芳というと「荷宝蔵壁のむだ書(にたからぐらかべのむだがき)」が衝撃だったわという方も
いらっしゃることでしょう。
チョークで書き殴ったような現代のヘタウマそのものの絵。
中にはニャロメそっくりの動物もいて、びっくりの作品ですよね。


国芳の作品に赤塚不二夫のキャラクターと似ているものが2つもあるということは。
3つの理由を考えてみました。
1 赤塚不二夫が国芳が好きで、知らずに影響を受けた。
2 赤塚不二夫は国芳の生まれ変わりで、前世の記憶が残っていた
3 赤塚不二夫が江戸時代にタイムトリップして国芳として活動した。
  150年後の日本人が「あれ?!」って発見すればいいな~という遊び心で、
  時代の流れを壊さない程度に大好きなキャラクターを盛りこんだ。
  

私は、結構3もありうるな~と思うのです。
少し前に、江戸時代の浮世絵にスカイツリーそっくりのものが描かれている!と話題になりましたよね。
あの作品も実は国芳。国芳は現代からタイムスリップした人だったのかも。

スカイツリーのデザインが発表されたのが2006年。赤塚不二夫が亡くなったのが2008年。
スカイツリーのデザインを知ったあと、江戸時代にワープなんてことがあったら・・・。
ただ、2004年には意識不明のまま植物状態とのことなので、
スカイツリーのデザインを知ることはなかったのかしら。

と、話は脱線しましたが、『ねこと国芳』。
バカボンパパ猫をはじめ、国芳の猫への愛情が伝わる絵の数々が楽しめる本です。

ぜひお手を取ってみてください。
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現在、原宿にある浮世絵太田記念美術館で「笑う浮世絵-戯画と国芳-」が開催されています。
太田記念美術館のサイトでも現在、
国芳の「道外 とうもろこし 石橋の所作事」の絵が紹介されていますが、最高!
歌舞伎の連獅子などで、頭を振る毛振りがありますよね。
それをとうもろこしが、とうもろこしのひげを振る形でおこなっている浮世絵なんです。
笑えます
国芳の猫は11月7日 11月14日

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emi

  • プラネタリウムでのヒーリング番組制作に携わった後、現在は 土井利位侯の「雪華図説」をライフワークとして調べ中の図書館LOVER。月に魅せられ、毎日、月撮り。月の満ち欠けカレンダー(グリーティングライフ社)のコラムも担当。              興味対象:江戸時代の雪月花、ガガーリン他。最近は、鳥にも興味を持ち始め、「花鳥風月」もテリトリーとなっています。   コンタクト:各記事のコメント欄をご利用くださいませ。コメントは私の承認後、ブログ内に反映される仕様にしています。公表を希望されない方はその旨をコメント内に明記くださいますようお願いいたします。
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