雪輪(その6)雪輪をあしらった浮世絵(3) 菱川師宣(ひしかわもろのぶ)
雪輪をあしらった浮世絵(2)の続きです。
時代はさかのぼります。生年1618年頃~没年1694年。
江戸時代初頭に活動し、浮世絵の租と言われる菱川師宣の作品をいくつかをご紹介します。
(美術館へのリンクが切れましたら、トップページからお訪ねください)
(所蔵館は主なところを挙げました)低唱の後/菱川師宣
17世紀後半(1680年頃)
メトロポリタン美術館(ttp://www.metmuseum.org/)
↓ほか所蔵。
閲覧できるサイト
メトロポリタン美術館所蔵のものはこちら。
作品タイトルは「Two Lovers」。
ボストン美術館所蔵のものはこちら。
作品タイトルは「A Young Man Dallying with a Courtesan(女とたわむれる若衆)」。
慶応義塾大学浮世絵コレクションではttp://project.lib.keio.ac.jp/dg_kul/ukiyoe_hist_detail.php?id=00201
着色された作品画像と絵の解説あり。春画十二図一組のうちの第二図にあたる作品と書かれています。
私メモ/左側の男性の胸元に雪輪が。
「でも、5弁なので花なのでは」と思われるかもしれませんが、
中央に「雪」と書かれているので、明らかに雪のつもりで描いたのでしょう。
なぜ6弁ではなく5弁なのか。
中国では古くから雪の結晶が六出であることが知られていました(詳細はこちら)が、
どうやら冬至の後の雪の結晶は5弁(五出)と思われていたようなのです。
というのも、『五雑組』(1616年/日本では和刻本が1661年に出版)に下記のような記述があるからです。
冬至のあとの雪の花は五角形だというのは、昔からいっていることである。
しかし、私が毎年冬から春にかけての頃に、雪片をとってしらべてみると、みな六角形である
(『五雑組』謝肇淛著 岩城秀夫訳注/東洋文庫1996より引用)
中国で、冬至後の雪の結晶は5弁(五出)という考え方があったことがうかがえます。
日本にも伝わっていて、それで、師宣も雪輪を5弁で描いたのかもしれません。あくまで私の推測です。男女化粧の図/菱川師宣
江戸時代 17世紀
東京国立博物館所蔵
画像提供:東京国立博物館(ttp://www.tnm.jp/)
閲覧できるサイト
東京国立博物館の直接のURLはttp://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/E0029926
私メモ/作品の左下の人物の着物がリング状の雪輪にみえます。和国百女(わこくひゃくじょ)/菱川師宣
江戸時代 1695年(没後に刊行)
メトロポリタン美術館ほか所蔵↓
閲覧できるサイト
メトロポリタン美術館の所蔵のものはこちら。
作品タイトルは「One Hundred Japanese Women」。
国立国会図書館デジタル化資料ではttp://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541159
私メモ/『和国百女』では下記のページにも雪輪らしきものが登場します。
国立国会デジタル化資料の
6/35左ページ。頬杖つく女性。
7/35右ページの女性。
12/35右ページ端の女性。雪輪の中に桜のような形が。美しいです。
18/35左ページの女性。
19/35左ページの女性。
菱川師宣の浮世絵は着色されていない、筆一本のものが多いです。
色がないからこそ、筆のタッチが目立つわけですが、線に勢いがあり、
1本の線も太いところ細いところの強弱があり、非常にリズミカル。
曲線のカーブもなめらかです。
特に、最初にご紹介した「低唱の後」は着物の裾、左上の猫脚のようなもの、絵の縁の輪郭、やわらかな曲線が印象的です。
鳥居派の蚯蚓描き(みみずがき)ほどの強調にはいたらないかもしれませんが、漫画家の筆のタッチに通じるものを感じます。
<江戸時代の手塚治虫>かも、と思いました。は『雪華図説新考』小林禎作著に掲載されています。
雪華図説/雪華図説新考―正・続「復刻版」
(2014.3.12追記)
堀口茉純 文・絵の『UKIYOE17』(中経出版2013)では16人の浮世絵師を年代順に紹介しています。
(17の残りの一人は絵師ではなくプロデューサー的存在の蔦屋重三郎です)
的確で人となりがとてもわかりやすかったので要約してご紹介します。
青字は引用部分。
菱川師宣(絵師1番目に登場p16~27)
アラフォーで花開いた遅咲き。元祖、浮世絵師。師宣の描くちょっとHな浮世絵に、お江戸男子歓喜!!
常に流行の最先端をとらえ、見るひとをウキウキさせる世界=浮世を描く。
いつしか人は、師宣のことを”浮世絵師”とよぶようになっていった。
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