ラフマニノフは春先の空模様にもぴったり
去年の3月にラフマニノフをテーマにしたコンサートに行きました。
アップしようと思いながら1年以上経ってしまいましたが、
浅田真央の「ピアノ協奏曲第二番ハ短調」を聴くたびに、やっぱりラフマニノフいいな~と思い、
1年ちょっと遅れでアップします。
さて、私にとって冬になると聴きたくなる曲トップ3は。
1 「ピアノ協奏曲第二番ハ短調」ラフマニノフ
2 「樅ノ木」シベリウス
3 「四重人格」ザ・フー
ですが、ラフマニノフは春先(東京ですと2月~3月頭ぐらいまで)もいいな~と思ったきっかけが、
昨年2013年3月10日サントリーホールで行われた上原彩子ピアノリサイタルでした。
3月10日と見て、あの「煙霧」の日!!と気づかれた方は気象マニアかも。
あの日、昼間のコンサートだったので、私はあたたかな春の陽気の中、ホールに入りました。
終演後、外に出たのは夕方。北風にかわっていました。
つまりコンサート中に煙霧があったため、家に戻ってから
ニュースで100年に一度?ともいう煙霧があったことを知ったのでした。
さて、上原さんのピアノ一台、1人だけによるリサイタル。
肘を使って叩くというようなアバンギャルドな手法はなく、正統派の弾き方なのですが、
ピアノに振り下ろす腕の迫力といったら!!
「つまびく」というよりも「叩く」に近い迫力。
ピアノは鍵盤楽器ではなく、打楽器だ
と実感させるコンサートでした。
ピアノは同時に出せる最大の音数が10個なのに、どうしてこんなに重厚なのだろうという音色でした。
プログラムでは、バンクーバー五輪での浅田真央のフリー曲「鐘」も演奏。
ピアノ一台で生み出されるエネルギーにぞくぞくしました。
「13の前奏曲」のメランコリックさ、「ライラック」のリリカルさも素敵でした。
アンコールで「ボカリーズ」が演奏されたのもうれしかったでした。
私の中でラフマニノフ=冬だっがのが、このコンサートで、
春先にラフマニノフを愉しむというのもいな~と感じた理由は、
冬よりも春先の空模様の方が、暗と明がはっきりしていて、またその配合がラフマニノフに近いなと思ったから。
冬の空や空気は「白~薄いグレー」のイメージがあります。
寒波が来てもあまり「暗い雲」がたちこめてという印象がありません。
一方、春先は。
「チャコールグレーのような濃いグレー色の雲」がもくもくと立ちこめる日が多い気がします。
ユーミンは「ベルベット・イースター」で、空が低い、天使が降りてきそうなほどと描写していますよね。
おそらく、ユーミンがイメージしたのは低くたれこめた鉛色のような雲。
そんな濃いグレーの雲の隙間から時折差し込む日差しは、
冬よりも力を増してまぶしく、温かく、コントラストがあります。
鉛色の空。寒さ←→時折の日差しと春のぬくもり。
まだ枯れ木の野山の茶色←→芽吹いた葉や花の色。
陰鬱さ90%←→明るさ10%(春先の天気の悪い時)
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
(色でいうとこんな配合のイメージ)
春先のこの比率がラフマニノフに近いな~と思うのです。
重厚で少し濁ったメランコリックな音楽←→きわめてわかりやすく、甘美で明るいメロディー
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そして、ラフマニノフの曲でこれぞ春!!!
と感じるのが「春の水(Весенние воды)」。
この小曲を知ったのは、かれこれ20年以上前、NHKで放映されたバレエ公演「マイヤ・プリセツカヤと仲間たち」でした。
プリセツカヤをはじめとするロシアのトップダンサーが「海賊」「ドンキホーテ」をはじめとするパ・ド・ドゥetc.披露する中で、
ラフマニノフの「春の水」を使った演目があったのです。
そのダイナミックな曲調と勢いよく走ってくる女性を男性が受け止めてリフトを繰り広げるアクロバティックなバレエの振付がとても印象的でした。
日本で「春の水」といったら「春の小川」。
のどかな小川やせせらぎのイメージですよね。
なぜ春の水がこんなにダイナミックなのと当時疑問に思ったのですが、
ロシアで「春の水」と言えば「小川」ではなくて「氾濫」。
雪が大地を覆い、河が凍る北国では、春になって森を覆っていた雪が解ければ、
まるで湖に木が生えているような眺めになり、河の氷が融けて流れて氾濫となるのですね。
露日辞典に весеннее половодье(ヴィセーニエ・パラヴォージエ/春の氾濫)、
разводье(ラズヴォージエ/春の出水)という言葉があることからも、
春の水 =ダイナミック=ほとばしるエネルギー なのが感じられますね。
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